子どもたちは負担を感じているのに…変わらない日本の“ランドセル文化”、背景には祖父母からの“入学祝い”も?
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 小学1〜3年生のうち、実に9割の児童がランドセルを重いと感じ、3人に1人が肩の痛みなど心身への影響を感じているー。

 フットマーク株式会社が1200名を対象にしたアンケート調査を実施したところ、そんな現実が浮かび上がってきたという。このデータを元に、大正大学の白土健教授とたかの整形外科院長の高野勇人医師は身体の痛み、通学を憂鬱に感じるなどの状態を「ランドセル症候群」と表現している。

【映像】小学生3人に1人が「ランドセル症候群」

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 同社によれば、ランドセル本体の平均的な重量は1〜1.6kg程度だが、荷物を含めれば約4kgに達するという。これは低学年であれば、米小児科学会の“背負う荷物の重さは体重の10~20%を超えないこと”とする基準を上回る重さだ。

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 千葉工業大学の福嶋尚子准教授(教育行政学)は「ランドセルそのものは各メーカーの努力で軽量化が図られているところもあるので、やはり“中身”が重くなっているということが大きいのではないか。お子さんの身体の理由もあるかもしれないが、やはりあまり荷物を持ち帰らずに済む学校・学級であれば登下校の負担は少ないと思う」と指摘する。

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 一般社団法人教科書協会によれば、この約15年で教科書の総ページ数は約1.7倍と増加しており、タブレット端末、副教材なども加わるため、対策を求める声も根強かった。こうしたことから文部科学省は2018年、学校に教科書などを置いておく“置き勉”を認める通知を出してはいるが、あくまでも現場の判断に委ねられている現状もある。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「日本の公教育は文部科学省が“こうしろ”と言えばそのとおりになるわけではなく、権限が強い教育委員会と学校長が言わなければ、現場の先生たちも実際には動かないということを知っておかなければならない。つまりリスクを取りたくない学校長であれば、なかなか改革が進まない。私も子どもたちにソフトボールを教えたりしているが、ランドセルを背負っているだけでなく、両手が荷物で塞がっている子もいる。その上に傘をささなければならない日は悲劇だ。ぶつくさ言いながらも、健気に帰っていくわけだ。その意味では、いくらランドセルを小さく軽くしても変わらない。例えばタブレット端末で言えば、放課後も学童や塾に行くことが多いので、家に持ち帰ったところで、使う時間なんてない。むしろ夜7時以降は使えない設定になっていることもある。これは学校や教員の怠慢以外の何でもないと思う」と憤る。

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 “置き勉”の問題について福嶋准教授は「あくまでも事務連絡として文部科学省から伝えられているだけなので、子どもたちの発達や登校にかかる時間などを考慮して、各々で判断してくださいという、あまり強制力がないものになっている。統計があるわけではないが、半々まで進んでいればいいところかなというのが実感値だ。そこは先生方に“こんなに持ち帰る必要ないよね”ということを考えてほしいなと思っている」とコメント。

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 また、日本特有のランドセル文化についても、「制服と違って、“ランドセルでなければいけない”と決めている学校はほとんどないはずだが、不思議なことに新入生の保護者会の時には“ランドセルにはこういうものを入れてきてください”など、“ランドセルありき”の説明がなされるので、保護者としても“用意しなければいけない”と思ってしまう。また、保護者としては身体の負担を考えて軽いカバンがいいよねと思っているのかもしれないが、実は半分近くは祖父母が入学祝いに買っている、という統計もある。そういう文化のようなこともあって、なかなか抜けられない状況にあるのだと思う」との見方を示した。

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 8歳の娘を育てている元フィギュアスケート世界女王の安藤美姫は「A4が入るタイプだと、サイズも大きい。玄関まで娘のランドセルを持っていくときには重いと感じこともある。学校までは徒歩で20分かかるので、1年生の頃は付き添っていたし、途中から持ってあげたりもしていた。学校からも、タブレット端末や教科によっては教科書を置いておいていいと言われているし、特に荷物が多くなる日がある場合は事前に“お迎えに来て下さい”といったお知らせも来る」とコメント。

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 さらに「背負ってみるとすごくフィットするし、日本のものは長持ちするので、私は海外の貧しい子どもたちに寄付するというプロジェクトに関わっていたこともあるから、ランドセルを悪者にはしたくはない。外が危ないということで、昔のように元気に遊ぶ機会が減って、子どもたちの体力が低下しているということもあるのではないか」と話した。

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 これに対し、慶應義塾大学の夏野剛・特別招聘教授は「登山用のものの方がよほど機能的だ。“二宮金次郎症候群”なんじゃないか。何かを背負って勉学に励むという、日本的な何かがあるのではないか」と苦笑していた。(『ABEMA Prime』より)

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