「負担軽減、働き方改革が先ではないか」教員免許の更新制度、“発展的解消”で現場は良くなるの?
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 文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は16日、教員免許の更新制度の“発展的解消”の検討を盛り込んだ取りまとめを提出した。

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 制度の始まりは2007年に遡る。不適格な教員を排除する目的もあり、国会での審議がスタート。2009年4月に導入されたものの、多忙な中、10年ごとに更新には30時間以上の講習を受講する必要があり、約3万円の更新費も“自腹”であることが課題になっていた。

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 また、文科省が制度導入前に全国の教育委員会に通知した文書には「免許更新制の趣旨は、教員として必要な知識技能が確実に保持されるよう、必要な刷新を行うものであり、不適格教員を排除することを直接の目的とするものではないこと」とされており、目的や成果が不明確だという問題もあった。

■「負担軽減、働き方改革が先ではないか」

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 16日の『ABEMA Prime』に出演した小籔千豊は「“変な先生が多い時代になった”とマスコミもワーワー取り上げ、世間が盛り上がった結果、作れということになったのではないか。それが地に足を着けて考えた制度ではなかったから、不備もあって破綻したということだと思う。いい先生だけにいてほしいという思い、勉強して知識を身に着けてほしいという思いはわかる。でも、お巡りさんだって不適格な人はいる。先生だけをあげつらって、3万円出せ、というのも違うと思う」と指摘する。

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 文部科学大臣を務めた経験もある自民党の柴山昌彦衆議院議員は「やはり当初は“不適格教員を排除する”という目的を想定していたと思うが、運転免許の更新などのように“必要な技能をアップデート”するという目的に軸足が置かれて、不適格教員の排除とは切り離されたところで運用されてきた。だから“教員の学びの機会の拡大”としては一定の効果があったとは思うが、ちょっと矛盾が出てきていたのは事実だと思う」と説明する。

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 「また、教員の働き方改革が非常に大きなテーマとなってくる中で、夏休みなどに集中的に講習を受けなければならないのが非常な負担になっていたり、そのカリキュラムもICTを活用とした学び方など必要な知識技能が必修になっていなかったりと、時代に遅れているような部分もあった。さらに言えば、10年ごとの更新で、本当に必要な知識技能がアップデートできるのかという疑問も出てきた。ただし“単純廃止”ではなくて、より良い制度ができないかということで“発展的解消”という分かりにくい言葉を使ったのだと思う」。

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 両親が高校の教諭だというテレビ朝日田中萌アナウンサーは「家に帰ってきてからテストの採点や翌日の授業準備をしたり、土日も部活で出て行く親の姿を幼い頃から見ていた。今でも私が休みで帰省すると、“生徒たちを見なければいけないから“と言って出ていくことがある。その割に手当は少なく、生徒のことを第一に考えている”という気持ちで成り立っている、“やりがい搾取”のような仕事なのかなと感じていた」と明かす。

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 大学院で教員免許を取得したという笑下村塾代表で時事YouTuberのたかまつななも、「学ぼうという意志のある先生は多いが、そのための時間も取れないくらい疲弊している。休憩時間がないのも当たり前という感じで、1日5分あったらいいという先生もいるし、トイレに行けずに膀胱炎になるというのが“職業病”みたいになっている状況もある。現場の問題の根幹である働き方を見直さないと何も解決しないと思う」と指摘。「今、中学校の先生の約6割が“過労死ライン”を超えて働いているというデータもあるし、残業代が出ない制度設計になっていることについて現役の先生が起こした訴訟では、裁判長が“政治の場で議論されることを望む”というようなことを述べている。いったいいつ、どのように解決されるのだろうか」と切り込んだ。

 柴山議員は「まず残業代の問題について言えば、教師の仕事の特性に注目して今の制度があり、超過特別手当、つまり調整額が決められていた。ところが、それが実態に合わなくなってきているんじゃないかという問題だ。また、労働基準法などが適用される私立学校と公立学校はどこが違うんだといった議論も含め、ずっと行われている。また、働き方改革をどういう方法で進めるべきかということも合わせて議論していく。実際、精神疾患の方もすごく増えているし、すごく心労があると思う。何をすることによって負担軽減ができるのか、そういう議論が必要だと思う」と答えた。

■「学校の役割も変わってきている」

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 一方、ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「僕らが子どもの頃は偏差値で並べられるような、受験のための学校みたいな部分があった。その反省から出てきたのが“ゆとり教育”や“生きる力”みたいなことだと思うが、それは家庭環境の影響を非常に受ける領域でもある。つまりボランティア活動やスポーツの経験などが問われるようになった結果、新たに落ちこぼれる子が出てきてしまった。仮に能力が低かったとしても生きられるような社会を作らなきゃいけないんじゃないかと思う」と問題的。

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 柴山議員は「それがまさに答えのない、“Society 5.0”と言われる超高度化社会だ。例えば試験で出された難しい問題を、個人の力で解いていく力から、いろんな課題をチームで解決していくための力を育てていかなければいけない。そのためには均一な人材をいっぱい育成するんじゃなくて、個別最適化した学びによって、特性に合わせた多様な人材を育てていかなければいけない。そのためにはICTをうまくフル活用して教員の負担を減らしていく。また、教員に全てを任せるというのはおかしいので、民間から外部人材を投入する。あるいは地域のコミュニティに開かれたコミュニティスペースを作る。そういったこともしっかりと進めていかなければならない。加えて、家庭のあり方に踏み込むと非常にアレルギーが出てくるが、親のあり方をどのように導いていくかと。学校に全ての負担を寄せてしまうとことが本当にいいことなのか、核家族化の中、そういうこともしっかりと考えていかなければいけない」と答えた。

 これに対し佐々木氏は「日本の場合、あらゆる分野で自助と公助はあっても、共助が抜け落ちている。何らかの共同体の力を借りていくということもやらないといけないと思うが難しい」、たかまつも「ただ議論だけをして、“魅力ある現場だ”と伝えていこうとしても、採用倍率が下がり、質も低下していく。外部人材も含め、予算をつけなくて、どうやって集めるのか」と重ねて質問。

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 制度アナリストの宇佐美典也氏は「やはり一部の政治家が頭の中だけで考えた、固定観念に基づいた基準で教員を排除するんだという認識が間違っていたと思う。それは明らかになったと思う。YouTubeなど、教育を受ける手段が広がる中、学校の役割も変わってきていると思う。親として学校に期待するのは、学業というよりは、いろいろな人に対応していく、という部分だ。教員への講習も、そういう知識を更新するためには大切だと思う。かつて、家庭での教育が難しい人たちを集めて学校で教育を行うことで格差が是正されたということもある」と指摘。

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 柴山議員は「学校の先生に求められる役割というのは変わってきていると思う。例えばコーディネーターとしての役割に秀でている人、ICTを使って、個別最適の教育ができる人、あるいは特定の教科で伸びる子に教えられるような人。そういうことも踏まえ、研修や免許のあり方、外部人材のあり方を考えていくのかが非常に大きなテーマになってくると思う」とコメント。

 その上で、「かつては忙しさに見合うやりがいというものが先生方を支える大きな原動力になっていたと思う。『二十四の瞳』などを読んでみると分かるとおり、やっぱり生徒たちが先生の熱意にきちんと応えてくれる。それから一定の社会的な地位と尊敬の眼差しがしっかりと注がれている。ところが今は“モンスターペアレント”などによって教師がいじめられてしまう、そして校務によって忙殺をされてしまう時代だ。自分たちがやりたかったことは本当は何だったのかと、志を持った人たちがやる気がくじかれてしまい、採用試験の倍率もどんどん下がってしまっている。そういう実態を改善することが、最初に来なくてはいけないとは思う。そして、とにかく志だけでやっていけるような、そんな生やさしい商売じゃないよということで、教育予算はもっともっとしっかり確保しなければならない」と改めて強調した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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