「75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は10年以上変わっていない。悪者にせず、まずは代替案の提示を」“免許返納”へ向けた説得について認知症の専門医
ダイヤモンド☆ユカイの体験談
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 大阪府狭山市で17日、スーパーの近くで乗用車が歩行者をはね、男性1人が死亡、女性2人がけがをする事故が起きた。過失運転致傷の疑いで逮捕された89歳の容疑者が「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」と話していることから、事故の原因は“運転ミス”だったとみられている。容疑者は数年前から知人に対し、「免許の返納をしないといけない」と話していたという。

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 今回の事故について会見で問われた松野官房長官は「運転に不安を覚える高齢運転者に対しては、警察において免許証の自主返納制度の周知を行っているところだ。自主返納しやすい環境整備に努めているところだ」とコメントしている。

 高齢者の免許返納についてネット上では「強制的にさせることはできないの?」との声もある一方、「車が必要な地域だと家族も説得できないのかな」といった意見もある。

 年に200人超の高齢者に免許返納を促しているという八千代病院・愛知県認知症疾患医療センター長の川畑信也氏は「非常に誤解されていると思う。こういう事故が起こると必ずマスコミがすごく取り上げるので強い印象を受けるけれども、警察庁のデータによれば75歳以上のドライバーによる死亡事故の件数は2007年以降、毎年450件前後でほとんど増えていない。逆に言えば75歳以上のドライバー全員から免許を取り上げても、年間3000人くらい亡くなっている方のうち、400人ぐらいしか減らないわけだ。そこを誤解して、“高齢の方の運転は危ない”というイメージを作り、悪者になってしてしまっている」と指摘。

「75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故件数は10年以上変わっていない。悪者にせず、まずは代替案の提示を」“免許返納”へ向けた説得について認知症の専門医
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 その上で、免許更新時の認知機能検査について川畑医師は「認知症ではない人で点数が悪い人もいれば、軽い認知症の人ならパスしてしまう。そしてアルツハイマーの人は引っかかっても、レビー小体型認知症や血管性認知症といった病型の認知症の初期の方も記憶力の低下が少ないのでパスしてしまう。つまり認知症の患者さんを全てフォローできるわけではない。我々のところは認知症疾患医療センターなので、患者さんが来られて認知症との診断が付けば免許返納を促すし、そうでなくても“高齢なので危ないですよ”と最初はソフトに言っていく。

 “手続き記憶”といって、体が覚えている記憶は衰えにくいので、年を取っても運転そのものは若い頃と同じぐらいできてしまう。ただ、高齢になってくると反射を含めた運動機能や判断力、視力が低下してくるので事故を起こすことになる。そういう話をして、それでもうまくいかなければ、人を傷つけるかもしれないという強めの説得をする。ただ、高齢になると自分の能力低下に対する認識が落ちてくるので、ご家族や周囲の人がそのような話をしても、上手く運転ができていないのに“なんでやめないといけないんだ”という話になることもあると思う。だからといってカギを取り上げたり、騙して車を売ってしまったりするのはあまりいい方法ではないと思う。まずはなぜ運転を続けることが必要なのかを同定し、どうすれば運転をせずに生活できるのかの代替案を提示していけば、かなりの確率で免許を返納してくれる。騙して車を売ったり、あるいはカギを取り上げるのはあまりいい手ではない。取り上げたり騙したりするのは最後の手であるべきだ」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
 

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