日本も北京五輪を外交的ボイコットすべき?「総理が開会式に出席すれば、中国のPRに使われることになる」菅野志桜里弁護士
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 開幕まであと2カ月半に迫り、“テスト大会“も開催されている北京オリンピック。そんな中、中国の人権問題を重視してきたアメリカ、イギリスでは選手だけを派遣し、政府代表の式典への出席をしないという“外交的ボイコット”に関する議論が盛り上がりを見せている。

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 このことについて問われた岸田総理大臣は「それぞれの国においてそれぞれの立場があり、考えがあると思う。日本は日本の立場で物事を考えていきたいと思っている」と、立場を明確にはしていない。

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 22日の『ABEMA Prime』に出演したANN中国総局の北里純一記者は「中国外務省は“選手たちが主役の舞台であって、政治問題化はオリンピックの精神に反する”と反発を続けている。北京市民にも話を聞いてみると、激しい反発というよりはシラけた反応が多い印象だ。確かに大会に併せて首脳間の会談がセッティングされることがあるので、それが行われないことはマイナスだ。しかし東京大会にも多くの首脳が参加しなかったし、実害は少ない。

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 とはいえ、各国が連携してボイコットしたという事実が歴史に刻まれてしまうことは中国としても避けたいはずだ。これからどこまで妥協を引き出していけるのか、ということになってくるかもしれないが、“予防線”を張っているとも思う。例えば中国共産党系の環球時報というメディアは“アメリカと、その同盟国の少数の指導者が来ないからといって、中国のメンツが傷つくことはない”という社説を出している。こういう見方が支配的になっていくのであれば、何か妥協的なものを引き出していくのは難しいのではないか」と話す。

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 衆議院議員在職中は「人権外交を超党派で考える議員連盟」の共同代表も務めていた菅野志桜里弁護士は「ボイコットにもグラデーションがあって、モスクワ大会の時にはソ連のアフガニンスタン侵攻に対して日本やアメリカなど、多数の国がボイコットした。これに対し、ソ連は4年後のロサンゼルス大会でボイコットして報復した。ソチ大会でも、外交的ボイコットの一部という形でリーダーは参加しないということになった。今回、現実に外交的ボイコットという選択肢がある中で日本の総理が開会式に出席したということになれば、中国はそれを“日本は中国の政治体制を是認した”というPRに使っていくだろうし、世界が日本を見る目にも影響を与えることになる。まがりなりにも民主主義や自由を擁護しようという国々は、その連携を可視化しながらも選手はちゃんと送る、というバランス感覚ではないか」と話す。

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 「結局は開催国の発揚みたいなものに使われていくわけだし、そもそもオリンピックに政治のリーダーが集まり、“この時だけは休戦して国際平和を象徴しよう”、ということ自体が難しくなってきている気がする。また、東京大会を見ていても、運営者側のダイバーシティなどはグズグズで、オリンピック憲章にある人間の尊厳、多様性、平和を見せるような運営はできなかった。ただ、選手たちのLGBTQのカミングアウトは東京大会が一番多かったみたいだし、人権や平和についてもいろんなジェスチャーでサインを出していた。つまり選手たちが繰り広げることで十分に役割を果たしてしまうのではないかと思った」。

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 また、ジャーナリストの堀潤氏は「市民と経済人の温度感は全く違うと感じている。企業活動において中国はなくてはならない市場だし、企業関係者の皆さんとの合意形成を図っていかないと、私たちの意思決定がきかないところで人権侵害に加担する仕組みが進んでいくこともある。ただし企業には政府もお願いするしかないので、経済人こそ積極的に声をあげてほしい」、リディラバ代表の安部敏樹氏も「政治が冷え込んでも経済での結びつきが強ければ“問題をあまり大きくしない方がいい”という考えが双方に出てくるわけだ。リスクヘッジの観点からも、併せて議論されるべきところだ」と指摘する。

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 ともに議連の共同代表を務めていた自民党の中谷元衆議院議員が今月、国際的な人権問題を担当する首相補佐官に就任している。菅野弁護士は「ビジネスの話でいうと、去年ぐらいから中国のサプライチェーンの問題が出てきている。ウイグルの問題に関与している疑いがあるという日本の企業が世界の論文で名指しをされているが、そこに対して企業側が“ちゃんとやっている”とか、“こういう調査結果だ”と言い切れてないことがビジネスのリスクになってきている。私は企業には情報開示の責任、政府にはそこをちゃんとサポートする義務があるという、ビジネスと人権に対する法律をちゃんと作るべきだと思う。加えて、国による制裁に関する“日本版マグニツキー法”の話と、去年から宙ぶらりんになっている”これはダメだよ”ということをちゃんと打ち出す国会決議、この3つぐらいが宿題として残っていると思う。

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 今回、中谷さんが政府に入られたし、私は議員を辞めたが、事務方としてサポートしていけたらと思っている。やっぱり“逃げ得”は許さないようにしたいという思いはある。例えば私たちはちゃんとサプライチェーンから切り離してやろうとしているのに、日本だけが中国との取引をずっと続けるのかと。この1年、誰かに抜けられちゃってチェーンが途切れちゃうと意味ない、ちゃんとここは繋がってくださいよという世界からのプレッシャーが強くなってきたのを肌で感じているし、もう少しすると、公の立場にある人から発言が出てくるかもしれないと感じている」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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