こみ上げる思いが、どんどんと目元を潤ませていった。女流による早指し団体戦「第2回女流ABEMAトーナメント」の本戦トーナメント準決勝・第1試合、チーム里見とチーム西山の対戦が11月20日に放送され、チーム西山の山口恵梨子女流二段は1勝2敗ながら、仲間を鼓舞する戦いぶりでチームの決勝進出に貢献した。作戦会議室では、持参のグッズで応援しつつ、必死に戦う仲間の様子に涙の連続。勝利の後にも「ボロボロになりました。ガチ泣きでした」と笑いながら振り返った。
自分の対局前には顔が強張り、仲間の勇姿を見れば泣き顔に。淡々と指すイメージが強い将棋の世界の裏で、女流棋士たちの心理状態が大きく振れている様子が、ファンは山口女流二段を通して知ることになった。この試合の自身初戦となった清水市代女流七段との対戦では、序盤からペースを握られると、反撃らしい反撃をすることもできず完敗した。それでも気を取り直し第4局で再戦となると、対局前から泣き出す寸前まで気持ちを高めた。大事な一局は、最終盤まで両者に詰みが生じていそうなほど二転三転の接戦。この勝負を競り勝つと、仲間の顔を見た後にようやく笑みがこぼれた。
続く第5局では、勢いに乗って相手のリーダー里見香奈女流四冠に挑むと、終盤で突き放されたものの、金星級の勝利まであと少しまで迫る大健闘。これには見守っていた西山朋佳女流三冠、上田初美女流四段も士気を高めた。
他の2人に先んじて3局を終えていた山口女流二段ができることは、仲間を信じて応援するだけだった。第6局を上田女流四段が落とし、スコア2-4とカド番に追い詰められたが、第7局で西山女流三冠が勝利。迎えた第8局を上田女流四段に託し、最終局に西山女流三冠を残すことになると、ここでも山口女流二段の目には涙が。監督の藤井猛九段も思わず「山口さん、なんで泣くの?」と驚いたが、「(上田)初美ちゃんが悔いなくやってほしいから…」と、仲間の健闘を祈るばかりに涙腺がまた緩んだ。
上田女流四段が勝利し、迎えた運命の最終・第9局。もう山口女流二段の目は、涙でいっぱいだ。西山女流三冠と里見女流四冠、女流棋界の2トップが繰り広げる大熱戦は多くのファンの感動を呼んだが、この名局を西山女流三冠が制した瞬間、上田女流四段が「いやー、すごい。すごい将棋だった!」と興奮する中、山口女流二段は無言。しばらくしてようやく「やばい…ガチ泣きしてきた…すごい」と語るのが精一杯だった。
試合後、各選手からのコメントを聞いた後、山口女流二段は「最終局もそうですし、上田さんの8局目も素晴らしかったですし、ずっと涙が止まりません。ボロボロになりました。ガチ泣きでした」と、目を晴らし続けた。これにはファンも「涙腺よ」「マジ泣き」「こっちも泣きそうや」と、共感する声が殺到。残すところは決勝のみ。ここまで来たら、最後は栄冠を勝ち取って、思う存分うれし涙を流すだけだ。
(ABEMA/将棋チャンネルより)