2021年プロレスリング・ノアの東京最後のビッグマッチとなった11月28日、国立代々木競技場第二体育館大会は来年1月1日の日本武道館・元日決戦に向けて大きなうねりを見せた。
【映像】KENTA「1月1日 参戦するよってこと」電撃参戦を表明
まず第2試合終了後に場内が暗転し、ビジョンにはノアの原点・ディファ有明の跡地を訪れる男の後ろ姿と懐かしい声が…。2014年春にWWEと契約するためにノアを退団したKENTAだ。まだWWE在籍中、日本に帰ってきた時にディファ有明に立ち寄り、合宿所に明かりが灯って後輩たちがいることがわかりつつも、まだアメリカで実績を残せていない状況で顔を出すのが嫌で引き返したことを告白したKENTA。
そして「進化して、当時にはないものが今あると思うし、当時のものもしっかり残しながら、進化してきた」と言い放つと「散々いろんなことを話してきたけど、結局、俺が何を言いたかったかというと、1月1日参戦するってこと」と、元日決戦への参戦を表明した。
2018年9月1日の日本武道館で丸藤正道の20周年記念試合の相手を務めたが、その時はWWE所属のヒデオ・イタミとしての参戦であり、純粋なKENTAとしてのノア・マットは2014年5月17日の後楽園ホール以来。かつて反体制の無慈悲軍団NO MERCYのリーダーとしてノアを活性化させ、2013年1月から1年間にわたってGHCヘビー級王者としてカリスマ的な人気を誇ったKENTAが7年8カ月ぶりに帰ってくるのだ。
そして元日決戦の主役を決めるGHCヘビー級王者・中嶋勝彦とGHCナショナル王者・拳王のダブルタイトルマッチ。この試合は11月13日の横浜武道館で望月成晃からGHCナショナル王座を奪取した拳王が「俺の夢、日本武道館のメインに立つためにはGHCヘビーのベルトも必要だ」とGHCヘビー級王者・中嶋に迫り、これに「時代を動かすのは俺と拳王…俺らしかいねぇよな。文句はねぇ、やろうぜ!」と中嶋が即答して実現の運びになったものだ。
金剛の同門対決だが、一発入れば終わってしまうような打撃戦から始まった戦いは、一瞬も目が離せないヒリヒリとしたものになった。25分直前、拳王がエプロンの中嶋を師匠・新崎人生のオリジナル技・曼陀羅捻りに捕らえてから戦いはさらにヒートアップ。拳王はコーナーポストの上から場外でダウンする中嶋の腹部にPFS(プロフェッショナル・フットスタンプ)! これを中嶋が凌ぐと、30分から35分の5分間は凄まじいミドルキックの応酬が繰り広げられた。
35分過ぎには拳王が背中と腹部にPFSを投下したが、それでも粘った中嶋は必殺ヴァーティカル・スパイク! 拳王が雪崩式ドラゴン・スープレックスを爆発させれば、中嶋は雪崩式ダイヤモンドボム! 拳王が胴締めスリーパーで落としにかかれば、それを強引に担ぎ上げた中嶋がダイヤモンドボム! 何度も勝負がつきそうな場面が生まれるが、そのたびにカウント2で返す両雄に、観客は床を踏み鳴らす重低音ストンピング攻撃だ。
そして「残り試合時間30秒!」のコールと同時に中嶋が師匠・佐々木健介譲りのラリアット! 2発目を叩き込んだところで60分時間切れのゴングが鳴って、中嶋はGHCヘビー級2度目の防衛、拳王はGHCナショナル初防衛となった。
この激闘の余韻冷めやらぬうちにさらなるドラマが待っていた。中嶋がマイクを持って「拳王…」と語りかけた瞬間、場内が暗転。テーマ曲とともに潮崎豪が姿を現したのである。
潮崎は2月12日の日本武道館で武藤敬司に敗れてGHCヘビー級王座から陥落、3月14日の博多大会を最後に「失ったGHCを取り返して、俺の腰に巻くために体を万全にして戻ってきます」と欠場、右上腕二頭筋腱脱臼の手術に踏み切って治療に専念していたが「アイアム・ノアが帰ってきたぞ! 次の名古屋(12月5日)から完全復帰します」と力強く宣言すると「中嶋、お前にそのベルトは似合わない」と元日でのGHCヘビー級挑戦を表明。中嶋は「潮崎、やってやるよ。時代を動かしているのは、この俺だ。潮崎…俺がノアだ!」と返答した。それは現在進行形のノアのトップとしての矜持である。
これで元日のメインは決まった。新年の主役になるのは時代を動かす「俺がノア」なのか? 復活した「アイアム・ノア」なのか!? そしてまたしても主役の座をものにできなかった拳王の巻き返しは…。2022年元日からノアの航路を左右する大勝負が繰り広げられる。
文/小佐野景浩