「小川淳也君たちと集団指導的な体制を」「立憲民主党よ、開き直れ」政治学者・山口二郎氏が泉健太新代表に期待感
山口二郎氏が語る立憲民主党
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 4人の候補が争った立憲民主党の代表選。1回目の投票では全員が過半数に届かず、2位となった逢坂誠二氏との決選投票を制したのは、泉健太氏だった。

 選出後、「47歳の新しい船長に就任をした」として、何よりも党の再生が最優先との認識を示した泉氏に、党内からは、「我々は我々なりに頑張ったが、なかなか政権をとるまではいかなかった。アクティブに、野党第1党として存在感を発揮してほしいと思う」(安住国会対策委員長)、「一丸となって新しい歩みを進めてくれると期待している」(福山幹事長)など、期待の声が上がっている。

【映像】山口二郎氏による解説

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 泉新代表について、「これまでのような“枝野さんの個人商店”、“ベンチャー企業”から“組織政党”へと脱皮していくためには、若干“真ん中っぽい”イメージのある泉さんが代表になるのが良かったと思う。一緒に代表選に出た小川淳也君などと一緒に、集団指導的な体制を作っていくしかない」と話すのは、政治学者で法政大学法学部教授の山口二郎氏だ。

 「泉さんとは、私も旧民主党時代から勉強会でしょっちゅう会って議論をしてきたが、非常に真面目だし、優秀だ。若くて、明るいのもいい。割と中道というイメージがあるが、“コンクリートから人へ”“子どものための投資”といった政策を大事にしてきた人なので、自民党に対抗する野党の軸を立てられる政治家だと信用している。安倍さんや菅さんの時代には、“権力の私物化はけしからん”“嘘をつくな、国会でちゃんと説明しろ”といった追及が多いのは仕方なかった。しかし、今の相手は岸田さんだ。ちゃんとした日本語を話す人だから、対話はできると思う。だから国会の議論も今までとはちょっと違ったものになると思うし、そこで立憲民主党としての持ち味を発揮してほしい」。

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 その一方、代表選前に番組で泉氏が「批判ばかりではなく国民のために働こう!自民党よりも地域を歩き、声を聞き、人のために貢献する。それが我々だ!」と述べていたことについては、「“国民のために働く”というのは、あまりにも当たり前で面白くない。国民にもいろんな人がいるわけで、どういう人を念頭に置いて手を差し伸べていくのか、そこを具体化しなくてはいけないと思う。

 例えば自民党政権の政策で置き去りになっていた非正規労働者、働く女性、中学生以下の子どもを育てている30〜40代の親たちに対する、政策的なアプローチを明確にした方がいい。立憲民主党というのは、何をやっても文句を言われてしまうので、信念を持って新しい立憲民主の政策的な基軸はこれだと開き直って打ち出していく。選挙協力についても参議院選挙については一人区で野党を束ねていくんだという確信というか、信念を示してほしいと思う」とした。

■「選挙協力自体に効果があったことははっきりしている」

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  また、きのうの会見で泉氏が記者たちに問われたのは、やはり日本共産党との共闘の問題だった。泉氏は共産党との閣外協力合意については「現時点で存在しない」との認識を示した。

 ただ、衆院選では「立憲共産党」と揶揄されるなど、共産党との“野党共闘”に否定的な意見も根強く、支持母体だった連合も反対の立場を崩しておらず、新体制では関係の見直しを図るべきだとの声もある。

 政権与党の自民党・茂木幹事長は結果を受け「これから国会で活発な議論を交わすことができることを楽しみにしている。今回の代表選を拝見していても、共産党との閣外協力については慎重だが、選挙協力は積極的にやると言っていて、国民から見ても分かりにくかったのではないかと思う。ぜひ、この点については明確にしてほしい」とコメント、また、共産党の志位委員長は「政権協力の合意は個人と個人が結んだものではない。これは公党間の合意だ。我が党としては、これを誠実に順守していきたいと思うし、立憲民主党さんにもぜひ、そういう立場で対応してもらいたいと考えている」と話している。

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 山口氏は「選挙協力自体に効果があったことははっきりしている。それによって小選挙区での当選者は増えたが、比例で伸び悩んだのが敗因だ。選挙の戦術と、より大きな政権交代のための戦略の関係づけが上手くいっていかなかった。だから反対派からの攻撃を浴び、枝野さんもエクスキューズに終始するという印象を与えてしまった。加えて、いわゆる“閣外協力”についても枝野さんは批判を受け、後ろ向きの言い訳に終始してしまった印象があったと思う」と指摘。

 その上で、「まずは、この共産党との選挙協力をどう評価するのか。その上で、いかに来年の参議院選挙の戦略を立てるか。それが新代表の大きな課題だ。実際に戦ってみると、選挙協力の難しさ、つまり中央では“一緒にやろう”と合意をしても、選挙の現場を支えている支持者、党員、労働組合の人たちのエネルギーを引き出すことができるかどうかは別問題だということが分かったわけだ。参院選は衆院選とは違って、“直ちに政権を選ぶ”という選挙ではなく、ある意味で“政権与党にお灸を据える”選挙だ。ただ、32ある1人区については一本化しないと勝負にならないので、今回よりも緩い選挙協力の枠組みを作る話し合いをしていくべきだ」とした。

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 一方、源流を同じくする野党でありながら、連携に難色を示す国民民主党への対応はどうなるのだろうか。

 山口氏は「特に原発みたいな大きな政策テーマで言えば、かなり対立があるので、そう簡単には一緒になれないだろうと思う。ただ、立憲と国民が分かれている理由は政策というよりも人間関係だと思う。“あいつは嫌だ、許せない”みたいなレベルでの要因もかなり大きい。しかし国民民主党の中でも古川元久さんや岸本周平さんなどの衆院議員は、いわゆる民間大労組出身の参院議員などとはちょっと発想が違って、泉さんは政策的にも近く、一緒にやれると思う」との見方を示し、

 「いわゆる“希望の党騒動”で野党が大きく分裂し、それから4年かけて、衆議院で100人レベルの野党第1党が一応できたわけだ。これを足掛かりにしないといけない。またバラバラになったのでは、55年体制どころか、本当に自民党一強体制になってしまう。衆院選で野党共闘がエネルギーを持てなかった一つの理由は、他党との交渉で違いを認めた上で共通の目標を設定する議論がなかったことだと思う。その過程では、遠慮なしに持論を述べて、多少の摩擦や対立はあってもいい。それは党内や他の野党に対してもそうだし、連合との関係でもそうだ。地位が人をつくるし、政治家も立場に就けば変わってくる。泉さんはよく勉強していて、今の立憲民主党が置かれた状況も含め、非常に物事の分かる人だ」と、旧国民民主党で幹部を務めた経験も持つ泉氏に期待感を見せた。

■昔大学で暴れた人たちが「生きているうちに政権交代をもう一回起こして…」

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 他方、若い世代への支持の拡大も急務だ。

 現状について山口氏は「残念ながら立憲民主党の支持者に高齢者が多いことは確かだと思う。市民を相手に話をしていると、昔大学で暴れた人たちが“生きているうちに政権交代をもう一回起こして、世の中が変わるんだということを若い子たちに見せる。そうやって若い人の政治意識を変えるしかない”みたいな話を半分冗談、半分本気でしている」と明かす。

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 「一方で、大学生への給付や、給料の安い、若い人々に対する公的住宅の供給など、若い人々のための政策は議論している。割と地味だが、持ち家から賃貸へ、みたいな住宅政策のシフトに関する議論もしているし、正規社員と非正規社員の差別を無くしていくための税制や社会保障制度についても、勉強会や研究会で地道に議論してきた蓄積がある。また、マスコミには出てこないし、国会で審議もしてもらえないが、コツコツと一生懸命に議員立法をしてきた。非正規労働だけでなく、エネルギー転換とか気候変動問題、働く女性を巡る法整備などは準備している。やや堅い、難しいテーマだけど、少しかみ砕いて、“雇用の形態で差別があるような社会はやめる”みたいなメッセージ積極的にアピールしていってほしいし、そのためにも若い世代のブレーンが付かないとダメだろうと思う。

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 ただ、政権担当能力の点でよく言われる外交安全保障については、あまり手を加える余地はないところから出発するしかない。これは鳩山政権のときに失敗をしているし、残念ながら国民も“負の遺産”として覚えている。例えば辺野古の工事は一旦凍結して見直そうとか、日米地位協定に見直しの余地があるのではないかといった、できるところからきっちりボールを投げていくことが必要だと思う。そして岸田さんも、これから政策的には逆境だと思う。スタグフレーションの気配はあるし、トヨタが電気自動車で乗り遅れてしまうなど、何の産業で食っていくのか、深刻な問題だ。その点で言えば答えがない状態だし、与野党ともにスタートラインは同じ。そこは立憲民主党が思い切って問題提起をしていく。そういう姿勢も必要だと思う」。(『ABEMA Prime』より)

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