韓国では消えゆく「犬食文化」、北朝鮮では今も“夏の滋養食”? 食文化と動物愛護の境界線って
犬の肉を使った鍋料理「補身湯」とは? »

 古くから「犬食」の文化がある朝鮮半島。しかし韓国では犬をペットとして飼う人が増え、動物愛護への関心も高まっていることから、政府は犬食の禁止に向けた議論を始めることになったという。

 6日の『ABEMA Prime』では、犬食の問題を通じて、食文化について考えた。

【2分00秒〜映像】犬の肉を使った鍋料理「補身湯」とは?

■犬を食べて帰ってきたお父さんが、家族内で“村八分”に…

韓国では消えゆく「犬食文化」、北朝鮮では今も“夏の滋養食”? 食文化と動物愛護の境界線って

 犬の肉を使った料理を出している、ソウル近郊の食堂を訪ねてみた。

 韓国で古くから伝わる、犬の肉を使った鍋料理「補身湯(ポシンタン)」。プルプルとした食感が特徴で、愛好家で作家の金柱聖さんによると、犬の内臓と唐辛子を炒めたソースに合わせるのがお勧めの食べ方だという。「犬肉は夏の滋養食。暑い時に食べると、秋には風邪を引かないと言われている」。

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 しかし韓国の動物保護団体などの調べ(2020年)によれば、実に韓国人の84%が「犬肉を食べたことがない」と回答する時代。それでも食堂の経営者は「犬食を禁止するなら動物全般を食べないようにしないと。なぜ犬だけがダメなのか分からない。人類は草食動物になってしまう」と語気を強める。

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 日本に生まれ、14歳で帰国事業により北朝鮮へ渡り、そして2009年に脱北した金さん。北朝鮮では、番犬や野良犬などを好んで食べる文化が今も残っているという。
 
 「犬食というのはもともと漢民族の風習で、健康のためにという側面もあった。私のおじいさん、おばあさんは韓国で生まれ育って日本にやってきた方々だったので、一升瓶を置いて、酒をぐいぐい飲みながら犬の塊をちぎり取って塩につけて食べている様子を覚えている。そして僕にも、“これは薬だから食べなさい”と。その時は美味しいと思えず、その場で吐き出してしまったが、夏場にはワラビと犬肉を煮込んだ、嫌な匂いのする料理を“身体のためだ”と食べていた。

 そして北朝鮮に渡ると、その文化がメチャクチャ広がっていた。煮込んで水飴状にして、毎日しゃもじ一杯食べる風習があったし、病後の方にももてなす。平壌に行くと、民族の料理の代表として宣伝していた。北朝鮮語では犬肉を“ケゴギ”というが、むしろ甘みがあったので、“甘肉”、“タンゴギ”と呼んでいて、私も数え切れないほど食べた」。

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 一方、韓国の状況については、「韓国に来てみると、ペット文化というか、みんなが動物に親しんでいると感じた」と話す。

 「もしかしたら韓国には犬食はないのではと思い聞いてみたら、“ポシンタン”という犬肉屋があるということだったので、“本当ですか?”と。北朝鮮で食べるようになったことで病みつきになっていたので行ってみると、根本的に調理の仕方が違うものが出てきた。食べてみると、まずくて食べられなかった。しかし脱北した人たちが営む北朝鮮式の調理法の犬肉屋ができてきて、韓国の知り合いの人を騙して“豚肉だ”と言って食べさせると、みんな“おいしい、おいしい”と。そして“これはワンちゃんでした”と明かすと、“えー!”と言いながらも、“また食べたい”と言ってくれる。

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 ただ、やはり世代も変わり、文化も変わってきているので、若い人たちは犬を食べるのを嫌うと思う。犬肉が好きなお父さんが食べて家に帰ると、独特の匂いにお子さんが敏感に反応して、家族内でお父さんが村八分にされたり。また、食用にされる犬が山奥の檻の中で適当に育てられている様子がテレビで放送されることもある。そういうこともあって、食べたいけど食べられない、という人も多いのだと思う。

 そして思うに、この時期に犬肉に関する問題が湧き上がってきたのは、選挙が控えているからではないか。文在寅大統領も愛犬家を公言していて、北朝鮮の金正恩さんからもらった北朝鮮犬を青瓦台で飼っているし、政治的に影響があるからではないか」。

■「犬肉は北朝鮮にいた頃を思い出せるソウルフードだが、馬肉は食べられない」

韓国では消えゆく「犬食文化」、北朝鮮では今も“夏の滋養食”? 食文化と動物愛護の境界線って

 イギリスでは先月、タコやカニ、大型エビには苦痛の感覚があるとして動物福祉法案の保護対象に追加され、“生きたまま茹でてはならない”とのお達しも出ている。これまで当たり前だった食の文化と動物愛護の境界はどこにあるのだろうか?

 テレビ朝日平石直之アナウンサーは「自分が飼っている犬と、保健所で殺処分される犬は同じ命のはずなのに、感覚は全く違う」、カンニング竹山は「僕は犬を食べたいとは思わないし、イルカを食べたいとも思わない。でも、鯨は食べることもある。我々は命あるものをいただいているわけで、家畜だからOKで、家畜ではないからNGという話ではないと思う。ただ、すぐに締めないと美味しくないからと魚を締めることもあるが、それだって見る人によっては残酷な殺し方だ。そういう部分をどう考えるかだと思う」とコメント。

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 フードジャーナリストの山路力也氏は「生きたまま茹でるのと、その前に瞬間的に殺しておくということの差は、やはり人間の都合だ。分かりやすいのは、全世界で食べられている鶏卵や鶏肉だと思う。EUやアメリカではケージ飼いを禁止し、コストのかかる平飼いにする方へ向かっている。その点、日本は明らかに後進で、補助もないので、効率の良いケージ飼いが一般的だ。結果として、消費者は安く買えることになってしまうが、そこをどう考えるかだ」と話す。

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 「こういう問題への受け止め方は、個々人の経験によっても違う。どうした僕が犬を食べたいと思わないかと言えば、それは“ファースト・コンタクト”で、ペットとして出会っているからだと思う。それが牛の場合、“牛さん”とか“ペット”ではなく、いきなり家畜、もっと言えば牛肉として出会っているから、当たり前のように食べるものと刷り込まれている。オーストラリアではカンガルーを食べるが、僕たちにとっては動物園で出会う生き物。そのようにして、最初にどう出会うかで感覚が決まってくるのだと思う。

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 そして難しいのは、食文化というのは科学的・合理的な考え方と必ずしも一致なわけではない。例えば我々が“鰻は夏バテにそれほど効かない”と言われたとしても、おそらく食べ続けたいと思うのではないか。ただ、オリンピックやワールドカップなど世界的なイベントが開催されるような時には、食分化の問題が国際的な注目を集めてしまい、海外から来る人たちに対して“隠す”ということが起きてくる。韓国の場合も、エンタメをきっかけに観光客が増えているし、そういう人たちが犬料理の店を目にすれば、やはり警戒してしまうことになるだろう。国内のペット市場も拡大しているので、国民の犬に対する感覚は日本人と近いものになってきているのだろう」。

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 ジャーナリストの堀潤氏は「文化だし、食べる・食べないは、地域の皆さんが選択する話だと思う。あるいは人の胎盤だって、プラセンタという形で利用されている。問題は命をぞんざいに扱っているかどうかで、国際的な議論が高まっている鯨についても、苦しまないような漁の仕方を工夫しようといった動きが出てきているし、飼育環境に投資をしている養鶏場も出てきている。また、過剰かどうかという問題もある。例えばどこもかしこもフォアグラを出すようになったとしたら、ここまで必要?という話になると思う」と指摘、「僕の場合、子どもの頃、最初に馬刺しを知った時は“馬なんだ”と衝撃を受けた」と明かす。

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 すると金氏は「馬肉は僕も驚いた。犬肉は北朝鮮にいた頃を思い出せるソウルフードだが、馬肉は食べられない。北朝鮮には“愛犬忠馬”という言葉があって、犬よりも人間から大事にされている」苦笑していた。(『ABEMA Prime』より)

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