「川口警察です。飲酒検問行ってます。軽く息を吹きかけてください」
今月3日の夜、埼玉県川口市の路上で行われていたのは飲酒運転の一斉取り締まり。警察官が運転手の息をアルコール検知器で検査している。
コロナによる会食人数の制限もなくなり、年末となればお酒の席が増える可能性もある。こうした中で懸念されるのが、飲酒運転の増加だ。
ニュース番組『ABEMAヒルズ』では、「交通心理学」を研究し、飲酒運転問題に詳しい岡山県の川崎医療福祉大学・金光名誉教授を取材。改めて、飲酒運転の怖さや私たちが心がけるべき行動について聞いた。
金光さんが理事長を務めるNPO法人「安全と安心心のまなびば」では、飲酒が運転に及ぼす影響の検証などを行っている。
「アルコールを飲むことによって、脳の機能、体の機能、運動機能がある意味“麻痺している状態”(になります)。アルコールによる脳の麻痺、運動の麻痺による事故の怖さを訴え、(飲酒運転を)控えていただくことをみなさんにお願いする……そういうスタンスで取り組んでいます」(以下、川崎医療福祉大学・金光名誉教授)
金光さんは、飲酒運転をやってしまう背景としてアルコール摂取による心理状態の”ある変化”が関係していると話す。
「心理学用語で『脱抑制』というんですけど、脱抑制が起こってしまうから(お酒を)飲んで車に乗ることがまさに危ないということになるんです。自分の抑制が働いている状態で車を運転するんですけど、(お酒を)飲むことによってその抑制が機能しなくなってしまう」
また、金光さんは「誰もが飲酒運転をしてしまう危険がある」と警鐘を鳴らす。その原因は「お酒が抜けた」という勘違い、いわゆる”酒気残り”。金光さんによると”酒気残り”とは、体内にアルコールが残っているにも関わらず、それを自覚していない状態のことだという。
「(アルコールは)分解されていずれ体内の血液から全部出て、最終的には小便によって体外に排出されていきます。だけど、5時間なら5時間経てば一斉に体外に出てしまって、人間の脳機能や運動機能が正常になったという確実な証拠ってないんですね。『アルコールを体内に取り入れてから体外に排出されるまでの間、体内にアルコールが残っているよ』ということを“酒気残り”と呼んでいます」
金光さんらが実施した調査では、500ミリのビール缶3本分のアルコールを摂取した14人中、11人が3時間後に「酔いは覚めた」と回答。しかし、14人中全員が呼気から「酒気帯び運転」の基準値を超えるアルコールが検出された。
「少し休んだから大丈夫」「仮眠をとったから酔いは覚めた」――。こうした気の緩みが重大な事故に繋がっている。
「飲酒から何時間経った時点で事故を起こしたかって逆算的にみれば、その人がアルコールの影響をどれくらい受けたかという推測ができるんですね。(お酒を)飲んでから経過する時間によってどういう変化をしていくかという……そういうことを突き合わせながら調べていくと、“酒気残り”という言葉が一番分かりやすいんじゃないかと」
さらに、金光さんは酒気残りの“もう一つの落とし穴”を指摘。それは、飲酒後一晩たってもアルコールが抜けきらないことだという。
男女14人に約2時間の飲酒をしてもらい、その後8時間以上の睡眠を伴う休息を取った後で体の状態を調べると、14人全員が「酔っている感覚は無く、車の運転はできる」と認識していた。しかし、5人の呼気から基準値を超えるアルコールが検出された。
アルコールによる気の緩みと、「お酒は抜けた」という勘違いが引き起こす飲酒運転。痛ましい事故を少しでも無くすために、金光さんはこう呼びかける。
「飲んでしまったら抑制が効かなくなるんですね。だから、『飲んだら乗るな』というのは無理なんです。なので、世の中からアルコールの車事故を無くすためには『乗るなら飲むな』だけでいいと思っています。そのくらい慎重さがないと、世の中から飲酒の事故は無くならないだろうなと思ってます」
(『ABEMAヒルズ』より)
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