「とりあえず“優しい政治”をやってみようで元も子もなくなっては困る」…武蔵野市の条例案から考える「住民投票」、そして「外国人参政権」
外国人参政権ってアリ?反対派と考える
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 「旅行者に近いような外国人も加わる住民投票が行われ、結果が国政の行方を大きく左右する重大な懸念も存在する」。9日、自民党の保守系グループ「日本の尊厳と国益を護る会(代表:青山繁晴参院議員)」は、東京・武蔵野市の住民投票に関する条例案に反対する声明を発表した。

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 条例案では、市内に3カ月以上居住した18歳以上の住民に投票権を認めており、そこには技能実習生や留学生などの外国籍の住民も含まれている。理由について、市は公式サイトで「武蔵野市では市民参加の手法として行ってきた意見交換会や市民意識調査などに新たに加えられるものであり、本制度においても外国籍住民を含めることは合理的であると考える」と説明。

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 また、住民投票の結果に法的拘束力はなく、市政に反映させるかどうかは、議会と市長が結果を尊重し判断するとしており、松下玲子市長も「市民自治の更なる推進を目的として、二元代表制を補完するものと考えている。住民投票の結果を市長や議会は尊重する諮問型の住民投票だ」とツイートしている。

 今回の条例案に反対、あるいは慎重な姿勢を示している政治家たちは、何を懸念しているのだろうか。

■「とりあえず“優しい政治”をやってみようで元も子もなくなっては困る」

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 自民党政調会長代理の宇都隆史参議院議員は、「私は日本人と外国人と区別をすることについてはどうなのか?と感じているが、それ以前に、住民投票というものが議会制民主主義の軽視につながると考えている」と話す。

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 「日本の地方政治は“二元代表制”を取っていて、一方は大統領と同様に大きな権限を握っている首長がいて、そこに議会が対峙し、チェック・アンド・バランスを図るという仕組みになっている。そこに住民投票が必要となるのは、大阪都構想のように、議会がなかなか言うこと聞いてくれないので、法的拘束力はないものの、“住民の声はこうだ”、ということを示したい場合だ。

 そもそも議会はみんなが選挙で選んだ議員で構成されているわけで、そこでの議論で反対意見が多いのであれば、首長は自分の政策を進めるべきではないし、議会軽視やポピュリズムに繋がるものだと思う。もちろん、住民の声を聞くということは大切だし、アンケートを取るのはいいと思う。パブリックコメントや意見交換会、対話集会といった方法もある。しかし、イエスかノーかを問う住民投票という形が必要なのだろうか。他の自治体では、住民投票にかける前に議会できちんと議論をしようとか、様々な条件を付けているはずだ。それが武蔵野市の条例の場合はそうではなく、常設だ」。

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 一方、定住外国人の地方参政権については認めるべきだとの立場を取る東洋大学の金泰泳教授は「大変画期的で、ぜひ成立させてほしい」と訴える。

 「外国人には参政権が認められていない今、自分たちの意思を反映させることができる唯一の手段が住民投票になる。反対派の中には、“外国人が入ってくると何をするか分からない、乗っ取られてしまうのではないか”といった、外国人に対する不信感があることが多い。それに対し、松下市長には人に対する信頼が先にあって、それは地域に住む外国人も同じだ。むしろ住民投票の導入を他の自治体でも広げていければ、武蔵野市を目指して外国人が集まってくるといった危機感も薄れていくのではないのか」。

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 これに対し、宇都氏は沖縄県の住民投票では日米地位協定の見直しや米軍基地の縮小など、“国政マター”のイシューが俎上に上がったことも踏まえ、「例えば人口減少が進んでいる自治体に特定の国の人たちが入ってきて、自分たちが住みやすい街に変えようと考えることもあるかもしれないし、地方公務員の場合、外国人の登用は自治体に任されているので、クオータ制度のようなものの導入が進んだ結果、日本人がマイノリティになっていて、外国人の意見だけが通ってしまう街になってしまうケースも出てくるかもしれない。金さんは性善説の話をされたが、政治というのは常に性悪説も考えながら、慎重に議論をしなければならない。とりあえず“優しい政治”をやってみようで元も子もなくなっては困るわけだ」と反論。

 金氏は「自分にとって住みやすい地域にしたいと思うのは外国人に限らないことだ。その意味では、民族、国籍、あるいは性別、セクシュアリティによって、何が住みやすさなのか、そのニーズは違ってくる。そうだとすれば“ある社会集団の利益を優先させることが、他の社会集団に対して不利益を生じさせたり、抑圧したりするようなことになってはならない”といった但し書きを付けたり、利害を調整する機関を作るなど、仕組みを整えることで解決できるのではないか」と強調した。

■「貢献している在日外国人に、見合うだけの権利を与えていくのは当然のこと」

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 両者の議論を受け、アメリカ出身のパックンは、次のように心情を吐露する。

 「僕は柴田阿弥さんが生まれる前から30年近く日本にいて、永住権もある。もちろん納税義務もあるし、さらに日本の方々が意識することはほとんどないと思うが、僕がアメリカに帰ろうと思ったら、資産に対して15%の“出口税”もかけられてしまう。一方で、僕ほど日本のことを知らない柴田さんには参政権はあるが、僕には参政権はない。だから時々、癖で“我々日本人はね”と言ってしまうが、“我々納税者はね”、と言い直す。それでも、本当に国政選挙に参加したいのであれば、二重国籍にすればいいと思っている。

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 ただし、地方政治への参政権については認めてあげてもいいと思う。人口減少が進む農村や漁村のために働いてくださっている外国人が住民の過半数になれば、自治の権利を握ってもいいのではないのか。逆に日本人が1割、外国人が9割という自治体があった時に、1割の日本人だけが政治を握っていていいのだろうか。在留外国人に対して地方参政権を認めている国々で、実際に外国人が地方政府を乗っ取って悪さをしたという前例があるのだろうか。少なくとも武蔵野市の住民投票については法的拘束力もないわけで、認めてもあまり害はないと思う」。

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 宇都氏は「この議論を突き詰めると国家論に入っていくが、それが国家・国民というものだと思う。歴史や伝統、文化をベースに国家論をイメージしてみれば、むしろ日本は特殊な国だと思う。移民政策も取っていない日本のような国家と、パックンさんが育ったアメリカのような多民族の連邦制国家、あるいは3代、4代さかのぼると様々な人種がいるようなヨーロッパとの大きな違いがここにあると思う。逆にアメリカだって、なかなか国籍はくれない。僕の兄は十年以上アメリカに住んで、やっとグリーンカードがもらえた。

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 一方で、金さんが言われたように、もう少し細かく条件などを定め、うまく運用することもできると思っている。そのためには、権限と責任をセットにする必要がある。例えばパックンさんが言ったように、共同体を運営する一員としての責任を果たすという意味で、国籍を取ってもらうというパターンがあると思う。そのためには日本に5年以上、住んでいないといけない。これは一つのいい基準ではないかと思うし、その上で二重国籍をどう考えるかだ。特別な基準を設けて、二重国籍を正式に認めることを検討する余地は十分にあると私は思う」。

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 金氏は「宇都さんが言っておられた、“日本はヨーロッパやアメリカと異なる独特な文化と歴史がある国だ”というのは、確かにそうかもしれない。逆に言えば、参政権、住民投票の問題は、そういう歴史や文化を継続させるのかどうかという問題を投げかけているのだと思う。やはり今の日本において、在日外国人は経済社会を支える、なくてはならない存在になっていると言っても過言ではないと考える。日本社会に貢献している在日外国人に対し、それに見合うだけの権利を与えていくのは当然のことだろう。そして、国籍という切り口が出たが、これまでの日本社会は、国籍で見て、イコール外国人、イコールヤバい人たち、みたいな線の引き方をしてきたが、もうそろそろ変わらないといけないんじゃないか。もっと多様性を寛容に認めていく社会になっていかないと、そうでなければ社会も経済も収縮するばかりだ」と指摘していた。

 武蔵野市の条例案は今月13日に総務委員会で審議され、21日の本会議で採決される予定だ。(『ABEMA Prime』より)

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