日本大学は10日、田中英寿前理事長らが逮捕されたことを受けて、初めて記者会見を開いた。会見冒頭、加藤直人学長は一連の騒動を謝罪。「田中前理事長と永久に決別する」などと述べた。今後、理事長職に関しては、加藤氏の兼務が兼務するという。
【映像】田中前理事長の“ヨイショ本” 顔写真付きで『加藤学長推薦』の表記も(11分ごろ〜)
会見では、3点の説明があった。1点目は、田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除し、役員報酬、賞与、退職慰労金は一切支給しないこと。2点目は、事案の舞台である事業部は清算も視野に入れて対応すること。3点目は、外部の有識者を中心に再生会議を組織するといった内容だ。
ニュース番組『ABEMA Prime』に出演した大学ジャーナリストの石渡嶺司氏は「学長に就任して1年目だとか、教学面では強圧的なことがなかっただとか、やたら言い訳を繰り返している印象を受けた」と印象を述べる。
ネット掲示板『2ちゃんねる』創設者のひろゆき氏は「加藤学長がおっしゃった3点のうち、最初の『田中前理事長の影響力を排除』とあるが、その影響力の元で学長になった人(加藤直人学長)がずっと居続けて、影響力を排除すると言っている。もう(影響力を排除)できていない。できないことの証明になっていて、ある種のコントに見える」と苦笑い。
石渡氏は「去年刊行された『炎の男 田中英寿の相撲道』(※「寿」は正確には旧字体)という本がある」と紹介。「これは田中前理事長の“ヨイショ本”で、本には『加藤直人日本大学学長推薦』と顔写真付きで出ている。Amazonなどでも普通に売られている。こういうヨイショ本で、顔写真付きで推薦まで出される方が『田中体制とは決別する』と、どの口で言えたのか疑問だ」と指摘した。
石渡氏は「記者会見では、そこまで親しくない、でも経営と教学が両輪でやってきたとうんぬんかんぬんと話していたが、実際はもっといろいろあったように見える。今回の記者会見を一言でいうと『黒焦げにはなっていないけれど、生焼けに終始したな』という印象だ。ちなみに本の著者も、日大の教員の方だ。系列の日大の短大の学長をされていて、要は機関誌みたいなものだ」と述べた。
一方で、昨年度は90億円の補助金が日本大学に投じられている。これが今回の問題で削られるのではないかという報道があるが、これに石渡氏は「1年間だけだが、2018年のアメフト騒動の後、日本大学は補助金を35%カットされる処分を受けている」と言及。その上で「その年はアメフト騒動の影響で1万5000人志願者が減った。今回は35%カットどころか最低でも50%カット、場合によっては全額カット、不交付という厳しい処分がちらついている段階だ。それを考えると、一般入試の志願者も1万5000人どころか大幅に減る可能性が結構高いと思う」と予測した。
自治体や国に向けて“こうやって変わる”という意向が伝わらないと、補助金にも影響する可能性がある。補助金が削られると、授業料はどうなるのだろうか。
石渡氏によると「2018年のアメフト騒動から2021年まで日本大学の学費を文献調査した。授業料は、5学部で学費の値上げがあった」という。
「おそらく、35%の補助金カットが地味に影響しているだろう。今回の事件で大幅な減額が予想される。実は今、調査しているところだが、そうなると中長期的には学費の値上げは不可避だ」
リディラバ代表の安部敏樹氏は「大学のガバナンスは本当に難しい。特に日本大学は大きすぎる」と話す。「各学部も勝手なことを言って、ガバナンスがきかなくなると、より予算を奪い合う形になっていくだろう。本来は経営陣を一掃して、外から実績のある、ちゃんと大学改革の経験がある人たちを何人か呼んできて、その人たちを中心に進めていくのがいい。私学で偏差値がメチャメチャ高いわけじゃないけれど、うまくいっている大学は、理事長がオーナー一族で強権的な大学も多い。強権があるから改革が進む。その意味でいうと、日大は1つ武器を失った可能性もある」と指摘した。
石渡氏は「オーナー経営や理事長が強い権限を持つのが善か悪かは、安部さんがおっしゃったように議論が分かれる」とコメント。「実際にそれで経営がうまくいくこともある。ただ、日大の場合は田中前理事長や井ノ口容疑者があまりにも専横というか、金権体質が過ぎたなと。それで問題が噴出したと見ている」と述べた。
前理事長らの逮捕で大きく揺れている日本大学。今後の動向にも注目が集まりそうだ。(『ABEMA Prime』より)
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