
これぞメインイベンター、これぞチャンピオンという試合だった。12月12日、RISEの年内最終戦となる後楽園ホール大会。メインイベントのリングに登場したのは、ライト級チャンピオンの直樹だ。
対戦したのは、かつてムエタイで5つのタイトルを獲得したジャルンチャイ・ライオンジム。39歳のジャルンチャイは日本のジムで指導にあたっている身。とはいえ老獪なインサイドワークなど、タイ人は侮れない。直樹も「実績もあるし、そんなに落ちる年齢でもない」と警戒していた。
何より、このマッチメイクは来年からの“対世界”路線を見越してのものでもある。RISEの2021年、その第1戦のメインでベルトを巻いた直樹としては、最終戦のメインもきれいに締めくくりたい。きれいに、とはつまりKOだ。
「何が何でも倒す」
そんな気持ちで臨んだという試合。しかしなかなか手数が出せない。まずはフェイントから丁寧に、慎重に。雑な攻撃では攻略できないのがタイ人だ。直樹は試合をこう振り返った。
「ジャルンチャイ選手は蹴りもパンチも固かったですね。小遣い稼ぎで試合するタイ人はすぐ倒れるイメージがありますけど、ジャルンチャイ選手はそうじゃなかった」
そういう相手を的確なカーフキックで崩し、ボディブローも。KOを狙ってはいるが焦らない。3ラウンドかけて最後に倒す、そういうスタイルだ。まさにその3ラウンド、直樹が左フックでダウンを奪う。
「あそこですぐ立ち上がってきた。終わったと思ったんですけどね。勝つ気できてるんだなと嬉しくなりました」(直樹)
そこからノンストップの凄まじいラッシュ。レフェリーが試合をストップするまで、ひたすら拳を繰り出し続けた。チャンピオンの、メインイベンターの仕事を全うしようという執念を感じる攻撃だった。
「チャンピオンとしての2戦目で、前回はしょうもない試合だった。今回は倒さなきゃと。65kgで勝てるところも見せられました。2階級同時制覇を狙ってるので」
来年に向けても期待を抱かせる内容。ただ100%満足はしていない。最後のラッシュは顔面へのパンチ一辺倒、もっとボディや蹴りを混ぜたほうがよかったと直樹。逆に言えば、試合直後でもすぐに反省点を語ることができるくらい落ち着いていたわけだ。
RISEの伊藤隆代表は、試合中に相手とグローブを合わせる場面を指摘。「甘さが出た、もっと厳しくていい。人の良さなんでしょう」と言う。
試合後のマイクアピールではジムの仲間たちに触れ、自分だけでなく所属するBRING IT ON パラエストラAKK全体を応援してほしいとアピール。最後には「気をつけてお帰りください」と観客への気遣いも。このあたりのナイスガイぶりも魅力だ。その魅力を失わず、なおかつ相手に対しての厳しさをどれだけ徹底できるか。来年のRISE戦線では、直樹の役割がさらに大きくなるはずだ。
文/橋本宗洋