中間層で“得”になるケースも? 住宅ローン減税控除率1%→0.7%に縮小へ 新たな枠組みを解説
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 自民・公明両党の税制調査会は先週、来年度の税制改正大綱をとりまとめた。住宅ローン減税については、これまで年末のローン残高の1%だった控除率が0.7%に縮小。一方で、期間は原則10年から13年に延長された。

【映像】住宅ローン減税見直しは損か得か 記者解説

 控除率が下がるということで、今より損することになるかと思いきや、必ずしもそうではない側面もあるという。テレビ朝日経済部の中村友美記者が解説する。

 現在の住宅ローン減税制度(新築)は、年末のローン残高の1%が控除されるもので、残高の上限は4000万円、控除期間は10年(ともに居住年によって異なる)。来年度から始まる制度では、控除率が0.7%に引き下げられ、残高の上限は3000万円、控除期間は13年となる。1年の控除額は40万円から21万円に、最大控除額は400万円から273万円に減少する。

 しかし、中村記者は「実はあまり変わらないのではないかとみられている」と説明する。新しい制度では、「省エネ基準適合住宅」「ZEH(ゼッチ)住宅」という枠組みが新設される。「省エネ基準適合住宅」というのは、断熱性能や省エネ性能で一定の基準をクリアした住宅のこと。ローン残高は4000万円、最大控除額は364万円だが、2019年度の新築住宅のうち、81%はこれに当てはまるという。

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 また、「ZEH住宅(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」とは、省エネ基準よりも高い水準が求められるほか、太陽光パネルなど再エネの導入も求められる住宅のことで、こちらのローン残高は4500万円、最大控除額は410万円。さらに、その上の「認定住宅」は、「長期優良住宅」や「低炭素住宅」など、住宅を購入する時にそれぞれ認定を取る仕組みになっており、ローン残高は5000万円、最大控除額は500万円から455万円に引き下げられる。

 「そういう意味では、一番ゆるい基準の省エネ基準でも8割が該当するので、ローン上限4000万円まで減税を受けられる人が多くなるとみられている。担当者に話を聞くと、『これまでにないZEHという枠組みもできたので、当てはまる人が増える可能性もある』としている」(中村記者)

■中間層で“得”になるケースも?

 コロナで経済が停滞する中、なぜ今控除率を下げるのか。背景にあるのは、長らく続いている「超低金利」だという。各社の動向を見ると、「固定35年」は1%台、「固定10年」は0.6~0.7%台、「変動金利」は0.3~0.4%。住宅金融支援機構の調べでは、変動金利を選んだ人は68.1%だった(2021年4月時点)。

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 「参考までに、約30年前に私の実家がどうだったのか聞いてみると、固定金利で4%だったと。今は1%とかなり低い水準になっている。住宅ローンの控除率は1%だったが、実態として金利0.3~0.4%という人が多いと、利息より控除のほうが多くなる“逆ザヤ”の状態になってしまっている。それを、税金の使い道をチェックする会計検査院が問題視したので、今回引き下げるという議論になった。実際、お金に余裕がある人が返済を遅らせて10年間は控除を受けて、その後にガッと返す人もいたという話は聞いている。住宅ローン減税は住宅を購入した人だけが恩恵を受けられる仕組みで、“逆ザヤ”はお金を借りた額が大きいほどメリットがある。そういった視点から、足下の利率に合わせて制度変更を求めた」(同)

 一方、来年度に控除率が1.0%から0.7%に引き下げられても、逆に“得”をするパターンがあるという。例えば、年収600万円、年末のローン残高が4000万円あるAさんをモデルケースとした場合、これまでは控除率1%=最大40万円の控除を受ける権利があった。ただ、減税は自分が払った分の税金しか戻ってこないため、所得税などで払っている額が40万円に達していなければならない。Aさんの場合、所得税などの控除限度額は29万円で、その差額の11万円分は控除されなかった。

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 しかし、来年度から控除率が0.7%=最大28万円の控除になると、Aさんは28万円の全額が控除されることになる。さらに、期間が3年伸びる分、結果的にプラスになる可能性もあるという。「所得税を払っている人ほど多く控除されていたので、この制度になったことで『中間層により手厚く支援ができるのではないか』と担当者も話していた」(同)。

■“五輪後”も下がらない不動産価格、今後の見通しは

 住宅ローン減税制度が来年度から変更されることを受けて、不動産会社の関係者は「住宅ローン減税が不動産の購入自体の判断に影響を与えることはほとんどない」と話しているという。ちなみに、今年1-10月の首都圏マンションの平均販売価格は6565万円とバブル期超え。さらに、“金利が低いうちに可能な限り”ということから、少し背伸びした額、例えば8000万円~1億円をフルローンで借りる20代、30代も増えているという。

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 「五輪後に不動産価格が下がる」といった声も聞かれていたが、今後急に下がるようなことはあるのか。

 「選手村に使われていた『晴海フラッグ』の販売が再開されたが、倍率が111倍という部屋もあった。首都圏マンションの人気や値段が下がるという見通しはできない状況で、不動産関係者も『超低金利が続く限りはそう簡単には下がらない』と口をそろえる。一部では『早ければ早いほどいい』『賃貸にお金を払うのはもったいない』という声もある一方で、『今後急落する』と言う人もいるが、具体的にいつかは誰も見通せない。実際には自分のライフプランに合わせてどうしたいか、納得のいく住宅が見つかった時が購入のタイミング、ということが一番かもしれない」(同)

ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)
 

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