手軽な乗り物として人気の「電動キックボード」。新たな移動手段として都市部などで若者を中心に利用者が急速に広がっている。利用者の増加に伴い、交通違反や事故も急増。そこで警視庁は、電動キックボードによる交通事故を減らすべく、今月から電動キックボードの取り締まりを強化し、15日、都内で取り締まりを公開した。
今年に入って11月末までに都内で起きた電動キックボードに絡む交通事故は60件。これは、半年で3件だった去年の数字を大きく上回っている。電動キックボードの事故を取材した、テレビ朝日社会部で警視庁の交通部を担当する藤原妃奈子記者に話を聞いた。
「今年6月、電動キックボードに東京の新宿で乗っていた23歳の女性が、赤信号を無視して交差点直進し、タクシーに衝突するという事故がありました。彼女は無免許だったということで、無免許危険運転傷害などの疑いで書類送検されています。この事故では、タクシーに乗っていた乗客の方が軽傷を負っていて、この書類送検された女性本人も骨折のけがをしているので、重大な事故につながる可能性がある乗り物かと思います」
個人が所有している電動キックボードは、基本的に多くは原付バイクとして扱われるため免許証が必要となる。さらに車体にはナンバープレートやミラー、ライトなどの設置が義務付けられ、ヘルメットの着用も必須。走行は車道となり、歩道を走行すると罰則が科せられる。ただ、すべての利用者がこれらのルールを理解しているとは言えないのが現状だ。
「実は現場の警察官が電動キックボードの違反を取り締まるには大きな壁があったんです。電動ではないキックボードに当たるケースもありますし、またその出力によっては、原付以上のバイクに当たるケースもあって、取り締まりの時には、科捜研で鑑定をその都度する必要がありました」
機種によっては原付バイクに該当しないものもあるため、モーターの出力を確認する必要があり、現場での判断が難しく“指導警告”にとどまっていた。警視庁はそれを解決するべく、電動キックボードの機種情報をデータベース化にしたという。
「これは警視庁が独自に作ったものなんですが、市販されている電動キックボードの商品の内容をデータベース化して共有することで、現場の警察官が今取り締まろうとしている電動キックボードと、そのデータベースのキックボードが同じものだと判断できるようになるんです」
データベース化にしたことによって、現場の警察官が運用でき、違反行為に対してその場で反則切符の交付が可能に。藤原さんは、電動キックボードの利用者の増加とともに事故も多発するのであれば、「飲酒検問のように街中で警察官が集中的に取り締まる必要も出てくるのではないか」と話し、「まずはこのデータベースをどのように運用していくかが重要」と述べている。
警視庁の取り締まり強化など、利用者のマナーも問題になっている電動キックボード。事業者はこれについて、どのように受け止めているのだろうか。電動キックボードなどのシェアサービスを展開している株式会社LuupのCEO岡井大輝さんに話を聞いた。
「もともと、Luupというサービスは政府、特に警察庁等と一緒に電動キックボードの安全なルールを決めるための実証実験に参加をしていました。例えば、政府が作った安全に関するテストを全問正解しないと乗れないような形でサービスを作っているのですが、それでも取り締まりが強化されない限り、一部の悪質なユーザーが絶えなかった現状があります。今回のように警察が本腰を入れて取り締まりを厳格化していただけるのは、しっかりやっている事業者からするとかなり心強い助けになると考えています」
実証実験の中ではヘルメットの着用を推奨しているが、義務化はされていない。それについて岡井さんは、「政府側が今回と昨年まで行っていた実証実験の両方を通してヘルメットをつけた方とつけなかった方の安全性の差を検証するため」だと話している。
また、実証実験は認可を受けた事業者に限定して、一部エリアでの電動キックボードの走行ルールが変更される。そのルールが複雑なことが大きなハードルだと岡井さんは話す。
「ルールが難しいと、どこまでアプリの中でテストを受けている人がいて、周知をしても、一部把握ができないユーザーの方が多くいらっしゃると思う。Luupとしては早い段階で政府にどういうものであれば安全で正しいかを決めていただいて、シンプルでかつ安全なルールに一本化していただきたいと考えています。Luupはそのためにあらゆる協力をさせていただいています」（『ABEMAヒルズ』より）
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