強烈なオーバーハンドが炸裂した鮮やかで衝撃的なKO劇。しかし、視聴者が注目、称賛したのは、勝った選手よりも、身を挺して追撃を防ぎつつマットに転がり、さらに一度は倒れるもゾンビのように立ち上がり、フラフラと向かってくる敗者をケアするという“1人二役”の活躍を見せた名レフェリーの献身的な働きぶりだった。
12月17日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE: WINTER WARRIORS II」。マーク・ステファン・ロマン(フィリピン)対ユサップ・サーデュラエフ(ロシア)の一戦は、1ラウンド後半、強烈な左2発でロマンが鮮やかなKO勝ちを収めた。この試合では強烈な一撃を見抜いて身を挺してダメ押しを防ぎ、さらにフラフラの“ゾンビ状態”で迫りくる敗者を咄嗟に支える好アシストを見せた"有能すぎるレフェリー”も注目を集めた。
フィリピンの実力派集団、チーム・ラカイ所属のロマンと、ロシア・ダゲスタン共和国出身のサーデュラエフの対戦。試合は両者距離を取りながら打撃で様子をうかがう攻防。組みの強さに定評のあるサーデュラエフに対して、寝技勝負は避けたいロマンは、ラウンド中盤からオーバーハンドのパンチの連打で勝負に出ると、左のブン回し系のフックが当たり相手を後退させる。
明らかに効いている相手に連打で猛ラッシュをかけるロマン。辛うじてここを凌いだサーデュラエフだが、再びカウンター気味の左を被弾すると、たまらずダウンを喫した。その瞬間、”グシャっ”と鈍い音を聞き、ここで危険と判断したレフェリーが試合を止めた。
衝撃的なKOシーンよりも印象的だったのは、選手の安全を優先したレフェリーの素早い機転だ。快心の一撃のあとのロマンは、ダメ押しの一発の構え。これをレフェリーを務めたオリヴィエ・コストが後ろから羽交い締め状態でマットに転がりながら強制制止。さらに脳が揺れて、ダウンから立ち上がるもゾンビのように徘徊するサーデュラエフが前のめりに倒れる姿をみて、頭から崩れ落ちるのを防ぐファインプレーも見せた。
一見するとレフェリーが右往左往する珍フィニッシュとなったが、選手の安全を確保するために素早い判断をみせ、奮闘したレフェリーに対してネットからは「ゾンビが迫ってきた」「有能オリヴィエ」「よろけてる選手も助けようとしてかっこいい」「名ジャッジだ」など賞賛の声が相次いだ。
ファンの間ではONEのなかで「安心と信頼のオリヴィエ」と定評のある名物レフェリー。かゆいところに手が届く八面六臂のレフェリングで、2021年最後の大会でも“安定の”大活躍を披露した。