10日、自民・公明両党は来年度の税制改正大綱を決定した。その中で現在、注目されているのが、岸田総理肝煎りの「賃上げ税制」の拡充だ。
【映像】給料は上がる?お金の専門家が「賃上げ税制」のデメリットを解説
働く人の給料を上げることにより、企業が収める法人税が一部控除される制度だが、ポイントとなるのは企業の取り組みに応じて、段階的に控除率があがることだ。
具体的には、従業員の給料が前年度より規定以上増えた場合、控除率が5%上がり、さらに教育訓練費も規定以上となれば、控除率はそれぞれプラス5%、10%と拡大する。中小企業の場合は、最大で40%の控除を受けることができるという。
企業は納める税金が減り、従業員は給料が増える。一見、それぞれがwin-winになるようにも聞こえる賃上げ税制。ネットでも「給料上がるかな」「働いている当事者には、ほとんど効果が無いと思う」など様々な声が……。
今回の制度変更では、給料は上がるのだろうか。ニュース番組『ABEMAヒルズ』コメンテーターでやさしいお金の専門家として活動する横川楓さんに話を聞いた。
「給料を上げる制度として、本当にふさわしいのかどうか、疑問です」
横川さんは、今回の賃上げ税制について「必ずしも得策とは言えない」と疑問を投げかける。
「そもそも赤字の企業というのは、法人税を納めなくていいようなっています。なので赤字の企業には、賃上げ税制の適用ができないのです。結局、黒字で利益が大きい会社ではないと関係がない制度になってしまっているというのが問題点かと思います」
国税庁が今年発表したデータによると、日本の企業の約65.4%が赤字企業で、法人税を納めていない。したがって、従業員の給料を上げたとしても、法人税控除の恩恵を受けることが出来ないのが現状だ。
「赤字の会社は、給料上げてもこの税制も使えないから、何のメリットもない仕組みになってしまう。一方で、得する企業というのは、やはり継続的に収益が成長していて、それを従業員に還元できているような体制が整っているところであれば、この制度を利用することで実際得するのではないかと思います」
また、制度終了後も、一度引き上げた給料を下げることは難しく、結果的に企業の負担が増えるという可能性も……。そのうえで横川さんは、長期の視点を持つことが重要だと話す。
「自分たちは給料が上がった分、引かれるものもどんどん増えていくという現状がある中で、『賃上げ税制で給料が上がりました』ということの大きなメリットが、継続的にあるかというと、なかなかそういうわけではない。会社も継続的に収益を上げて、それに伴い給料を上げられる経済環境を整えることが必要になると思うので、そういったところをこれから経済対策として、もっとやって欲しいと思ってます」
(『ABEMAヒルズ』より)
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