東京メトロは20日、30代の車掌が乗務中、マナーが悪いと感じた乗客を車掌室から業務用タブレットで撮影、その画像を私用のスマートフォンからTwitterに投稿していたことを明らかにした。
車掌は「車内でのマナーの悪い客を投稿した」と話しているといい、同社は「社内規則に則り、厳正に処分する。社員に対する指導・教育を徹底し、再発防止に取り組む」としている。
一方、車掌の行動に対しては、ネット上で理解を示す声もある。背景にあるのは、公共交通機関における一部の乗客やファンによる相次ぐ迷惑行為だ。アイドルの和田彩花も「行為についてはどうかと思うが、マナーの悪いお客さんにも原因はある。私はそこまで厳しい処分は下さないでほしいと思う」と話す。
こうした意見について、深澤諭史弁護士は「まさにTwitter上のトラブルがそうだが、相手が悪いことをしたからといってこちらも悪いことをしていいという話にはならないし、こんなに悪い奴だから制裁を加えてもいいということにもならない。今回のようなことはすべきではないし、会社の責任も問われる」と指摘する。
その上で、「一方で、他の業種と違って客を選ぶことができない公共交通機関で、しかも大勢の人もいる中、よほどのことでないと警察も動かないし、対応が難しいという気持ちもわかる。それでも、やはり法的な手続きを踏むべきだ。公共交通機関のような大きな企業であれば人員を増やし、厳しく対処する。そうではない企業であれば原則として客を選ぶことができるはずなので、場合によっては“お前は客ではない”と対処することが大事だ。私も中小企業からクレームの相談を受けるが、“そういうのは切りましょう”と言うようにしている。“ネットに何か書かれるのが怖い”と言われても、“そういう人たちは何をやっても書くから、機嫌を取っても無駄だ。1人のクレーマーを納得させるパワーで、10人、20人のまともな客を感動させることができるし、そちらの方が絶対いい。クレーマーに対応するのは、普通の客に対する裏切りだ”と説明するようにしている」と話した。
「10年くらいグループ活動していたが、ファンは選んでいた」と振り返る和田彩花は「例えばライブの時、最前列でジャンプをする人がいたが、“自分を見て欲しい”という、自分のための欲求でしか跳んでいない。私たちはそのアピールをされてもどうしようもないし、後ろの人がステージが見えなくなってしまう。そういう人たちに対しては、“そういうことをしたいのであれば後ろに行ってほしい。お互いに気をつけようと”などと、常に厳重に注意をしていた」とコメント。
ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「コロナ禍で“エッセンシャルワーカー”という言葉を耳にするようになったと思うが、社会インフラを支えている人たちこそ尊いんだという価値観が広がってきていると思う。駅にいると、おじさんが駅員に食ってかかっている様子を目にすることがあるし、先日はマスクをしないで大声で怒鳴っていたおじいさんに、若い女性の車掌が“黙ってください”と注意しているのを見た。責任感の強さに感銘を受けた。だからこそ、駅員さんに対して同情的な声が寄せられているのではないかと思うし、その事実自体は重要な変化だと思う」の見方を示す。
「少し話は逸れるが、茶道の世界に“主客一体”という言葉があるように、いかに店側が良い接客をしていても、客側の態度が悪ければ、場の雰囲気が悪くなる。ゲストとホストの両方が空間を作るというのは鉄道にも言えることであって、車掌や駅員の一生懸命さに対して、我々乗客も“ありがとうございます、今日も心地よく乗らせてくれました”という気持ちでいれば、良い空間が作る事ができる。そういう発想がない人が、モンスタークレーマーになってしまうのではないか」。
リディラバ代表の安倍敏樹氏も「佐々木さんの言う通り、いい兆候なのかなと思う。やはり鉄道のような、ある種の公共的空間はみんなで作るものだが、その管理コストがどんどん大きくなっている気がする。参加している人たちがその点に無関心になってしまっていると、フリーライダーや嫌な人を抑制する役割が全て駅員や車掌に押し付けられてしまう」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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