深浦康市九段“藤井聡太キラー”ぶりで弟子に見せる男の背中「自分が勝たないと弟子の心が動かない」
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 師匠・弟子ともに、現役のままであることも多い将棋界。師匠が現役バリバリであればあるほど「強く戦うところを見せる」ことは、実に大きい。「第1回ABEMA師弟トーナメント」に、深浦康市九段(49)は弟子の佐々木大地五段(26)と出場する。佐々木五段はデビュー以来、約300局を指し通算勝率が7割を超える若手ホープだが、この優秀な弟子に、深浦九段は強い男の背中を見せている。四冠保持者となった藤井聡太竜王(王位、叡王、棋聖、19)に通算3勝1敗と勝ち越し“藤井聡太キラー”とも呼ばれ始める師匠は「自分が勝たないと弟子の心が動かない」という。どれだけ強大な相手にも立ち向かう、強い意志を語った。

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 普段からとても丁寧に、そして時にユーモアを交えながら、取材に応じる深浦九段。ただ、その笑顔からは想像できないほど、盤に向かう時は厳しい顔つきになる。勝負も煮詰まる最終盤となれば、顔を紅潮させ、見ている方が息が詰まるというぐらいだ。その深浦九段も、弟子・佐々木五段とともに戦えることは楽しみだ。「普段から佐々木とは研究会やVS(1対1での研究会・練習将棋)をしています。Twitterでは、弟子の雰囲気や日常の考え方がうかがえるので、それも深浦一門のよさもあるのかなと思っています」と、将棋界では珍しく師弟で共同のTwitterアカウントを運営している。

 出会ったころは病を抱え、無事にプロになることができるかと心配した佐々木五段も、今やいつタイトル戦に出てもおかしくないと言われるような、期待の棋士になった。「将棋の成績は、まだ師匠としては不満なので、まだまだ頑張ってほしいと思います」と手厳しいが、それも将棋一本で生きてきた自分を超えてほしいという愛情の裏返しでもある。

 弟子のためになるようにと言葉も工夫はするが、何よりも自分が戦う姿を見せることが一番だと考えている。竜王戦2組、順位戦B級2組で奮闘し、どちらも佐々木九段よりクラスは上。また、なんといっても現在の将棋界で序列1位にも立った藤井竜王に今年度の対局でも2勝するなど、3勝1敗と勝ち越していることは実に大きい。「将棋に対する姿勢を見せたいですよね。佐々木に足りないものがあるとしたら、貪欲に勝利を掴み取ろうとするところ。自分が勝たなければ心が動かないと思うので、自分も必死に戦って、そういうところを見つけてほしいです」と、結果だけでなくなんとしても勝とうとする勝負師の心を伝えたいようだ。

 深浦九段が発したファンにも印象深い言葉がある。「羽生さんと殴り合いのけんかをしたら僕が勝つ」だ。もちろん、本気でけんかを売るわけでもない。ただし七冠独占など、長く絶対的強者として君臨してきた羽生善治九段(51)に対して、何か勝てるという気持ちを持たないと、盤に向かう前から勝負にならない。「あれは本当に原点ですね」と今でも振り返るように、戦う心は失わない。「第一人者に対しては、こちらは捨てるものがないので、思い切りぶつかれる。羽生さんや藤井さんになると、迷いなく自分のベストを出してどうかという相手。思い切りいっているのがいい勝負、好勝負を得られているのかなと。藤井さんが八冠王になっても、そういう気持ちで行きますよ」と、勝負の世界で生きるというのは、こういうことだと示したいのだ。

 今回の大会では師弟、がっちりと肩を組んで優勝を目指して戦うが、深浦九段には夢がある。「タイトル戦とは言わないですけど、挑戦に届きそうなところとか、優勝できそうなところとか、注目を集めるところでガチガチにやりたいですね」。羽生九段、藤井竜王を相手にするのと同じように、弟子が相手でも盤を挟めば、深浦九段は間違いなく容赦しない。

◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールール。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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