「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Aリーグ1回戦・第1試合、チーム井上とチーム畠山の対戦が12月29日に放送され、畠山鎮八段(52)と斎藤慎太郎八段(28)のチーム畠山がスコア3-0のストレートで、開幕戦を制した。師匠・畠山八段は、相手の井上慶太九段(57)、稲葉陽八段(33)に連勝すると、この流れを受けた斎藤八段も、稲葉八段に勝利。師弟同士の意地と面子がぶつかり合う戦いで、最高のスタートを切り、本戦出場にあと1勝と迫った。
チーム名「熱風」。熱血の畠山八段と、“西の王子”とも呼ばれ爽やかな風のような斎藤八段。その名の通り、熱い風が、開幕戦で強烈に吹き続けた。まず熱さを生んだのは、畠山八段だ。「フィッシャールールは初めてなんで、いろいろドキドキしているより、最初に出て指してしまった方がいろいろわかる」と、緊張を抑える、経験を積むという2つの目的から第1局の出場を志願すると、井上九段と師匠対決に。硬さもあったのか、序盤から形勢を損ね苦しい出だしになったものの、辛抱しながら受け続ける中で少しずつ超早指しのリズムを掴みだすと、形勢も好転。大きな逆転勝利で、初陣を飾った。
勝った時には連投と決めていたチーム畠山。予定通りに畠山八段が第2局も出場すると、ここは名人経験もあるトップ棋士、稲葉八段と対戦。奨励会時代には幹事と奨励会員という関係の中、「挑戦者のつもりで指せたらいい」と、ぶつかる気持ちで対局に向かうと、今度は序盤・中盤とペースを握る展開に。ただここから稲葉八段に食らいつかれ、最終盤では形勢が二転三転。それでも最後は、時間がない中でも瞬時に詰み筋を発見し、本人も望外の2連勝を果たした。
この流れを受けて、斎藤八段も負けるわけにはいかない。早速チームの勝利に王手がかかる第3局となったが、稲葉八段と後手番から角換わりの将棋になると、やや押され気味に見えた序盤から、中盤以降は「ちょっと無理気味でも強引に攻めた」というように、2連勝のアドバンテージを活かして、師匠の熱さを借りるような鋭い攻め。「普段以上にのびのび指せた」と、100手で快勝した。
これ以上ないストレート勝ちでの初戦突破。次の一戦に勝利すれば、Aリーグ1位通過が決定する。何よりも、フィッシャールールで指すのに不慣れな畠山八段が、2つ勝ったことは、今後の戦いを考えても、非常に大きい。「いつ慌てて何をやるかわからないので、とにかく落ち着いて臨みたい」と、自分を落ち着けるように試合を振り返った畠山八段。斎藤八段も「師匠にすごく頑張っているのを見せていただいた。正直、控室ではめちゃくちゃハラハラして、序盤から大丈夫かな、ちょっと冒険が多いかなと思っていたんですが、結果を出していただいた」と、素直に喜んだ。この大会、弟子にはタイトル戦線にも顔を出す棋士が揃う中、勝敗の鍵を握るのはベテランの師匠たち。注目の開幕戦は、その師匠が大活躍するという、象徴的な一戦となった。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)