「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Aリーグ1回戦・第2試合、チーム深浦とチーム木村の対戦が12月30日に放送され、深浦康市九段(49)と佐々木大地五段(26)のチーム深浦が、スコア3-0のストレート勝ちで初戦を突破した。次戦、チーム畠山に勝利すれば、予選Aリーグ1位で本戦出場が決まる。
いきなりぶつかった強豪を、本人たちもまさかというストレート勝ちに、師弟揃って「望外」と驚いた。チーム木村は、過去に超早指しのABEMAトーナメントで大活躍している木村一基九段(48)と、その弟子・高野智史六段(28)。フィッシャールールの経験も十分で、今大会に出場する8組の師弟の中でも、優勝候補に挙げられていた。そんな相手に最高の結果が出たとあっては、望外という言葉もぴったりだったのだろう。
快勝劇の口火を切ったのは佐々木五段。デビュー以来、公式戦では高い勝率をキープする期待の若手だが、このフィッシャールールでは手こずることも多かった。第1局、受けに定評がある高野六段が、角換わりから先手番ながらじっくりしとした戦いに誘導すると、佐々木五段が先に攻めて出る進行に。ただ中盤は高野六段にペースを握られ苦しい時間も続いた。それでも最後まで諦めずに戦い抜くのが深浦一門のスタイル。「終盤はなんとか勝負形に持ち込むことができた」と振り返るように、混戦に誘い込んでからは覚悟を決めて鋭い攻めに終始したことが、大きな逆転勝ちを呼び込んだ。
弟子の奮闘に、師匠も燃えた。深浦九段は、過去にタイトル戦でもぶつかってきた木村九段と、相雁木の骨太な出だしながら、早い指し手で持ち時間をどんどん増やした。解説を務めた村田智弘七段(40)も「弟子同士の戦いよりも若々しい将棋」というほど勢いよくぶつかりあった戦いは、木村九段に大きくポイントを稼がれたが、深浦九段の覚悟の一手から流れが変わり、ついに形勢逆転。押し込まれても慌てずに耐え、じっと勝機が訪れることを待ち続け、弟子と同じく逆転勝利を持ち帰った。
2つの逆転勝利で、風は完全に深浦一門に吹いていた。第3局、佐々木五段は高野六段と再戦になったが、第1局とほぼ同じ出だしから、ここでも佐々木五段の攻めが光った。「最終盤、ちょっと負け気味かなと思った」と、分の悪さを感じながらも攻め続け、高野陣を一気に崩壊。快勝でチームの勝利を決めた。
激戦続きではあったものの、粘った結果が全て白星につながるという、チーム深浦にとっては最高の初戦となった。深浦九段は「3勝0敗は望外すぎ。押し込まれることが多くて、びっくりしています」と語れば、佐々木五段も「厳しい戦いになると思ったんですが、予想以上に力が出た」と、こちらも驚いた。個人戦とも、団体戦ともまた違う、師弟によるチーム戦。日頃から仲のよさが知られるこの2人、肩を組んだ時の力は、周囲の予想をはるかに超えていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)