今年の2・12日本武道館大会で武藤敬司に敗れGHCヘビー級王座を手放して以降、右上腕二頭筋腱脱臼の手術とリハビリのため長期欠場していた潮崎豪が、11・28代々木大会のメインイベント終了後リングに姿を現し、復帰を宣言。
さらに現GHC王者・中嶋勝彦への挑戦も表明し、来年の1・1日本武道館大会『ABEMA presents NOAH "THE NEW YEAR" 2022』で、いきなり中嶋勝彦vs潮崎豪のGHCヘビー級タイトルマッチが行われることとなった。
そんな大一番を前にした潮崎に、復帰までの道のりと、中嶋戦への意気込み。そして来年1・8に横浜アリーナで行われる新日本プロレスとの対抗戦への思いを聞いた。(聞き手・文/堀江ガンツ)
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― まずは肩の手術から9カ月ぶりの復帰、おめでとうございます
潮崎 ありがとうございます。
― 12・5名古屋大会での復帰戦(潮崎豪&清宮海斗vs中嶋勝彦&拳王)の試合後、「こんなに厳しくてつらいことをやってたんだね」っていうコメントを残していたのが印象的だったんですけど、あれはまさに本音だったんじゃないですか?
潮崎 「こんなことやってたんだ!?」っていうのは本音ですよ。こんなに長い期間休んだことがなかったので、そう感じたということもあるでしょうけど、何よりもリング上で闘ったときの衝撃がすごすぎてね。また自分の欠場中、他の選手たちはずっとこういう試合をしてきたわけで、「やっぱり、ノアはすげえわ」って、リングから離れていたからこそ、あらためて思いましたね。
― 潮崎選手は欠場前、そういう激しい試合を満身創痍の体でやっていたということですよね。
潮崎 そうですね。正直、肩の状態はかなり悪かったのでキツかったですよ。それで病院の先生が「手術して動けるようにした方がいい」と勧めてくださってたんですけど、自分の中では手術をしたほうがいいのかどうなのか、悩みましたね。手術をするということは、長期欠場するということなので。だからGHCのチャンピオンでいる間は絶対に手術はしないと決めていました。
― では、ずっとギリギリの状態で防衛を続けていたのが、今年の2・12日本武道館で武藤さんに敗れてGHC王座を失ったことで、手術に踏ん切りがついたわけですね。
潮崎 はい。悩みましたけど、今は手術をして良かったと思ってます。長い欠場期間があったからこそ、自分自身をより見つめ直すことになったし。より自分を鼓舞してリングに向かうようにもなったんでね。あとは元日の武道館でベルトを取って、この手術と欠場期間を意味あるものにするだけですね。
― 潮崎選手が手術を決めたあと、武藤さんの入団なんかもあり、ノアが団体としてどんどん勢いが出ていきましたよね。そういうのを見て焦りはなかったですか?
潮崎 焦りを出すと欠場した意味がなくなってしまうと思ったので、なるべく情報は入れないようにしていましたね。とにかく自分が復帰することだけを考えるようにしていました。
― この9カ月間のリハビリ生活はどんなものでしたか?
潮崎 手術後、2カ月弱ぐらい腕を固定して動かせない状態だったんですよ。そうすると、いざ固定を外してリハビリで自分の腕を上げようとしても、上げられないんです。体が上げ方を忘れてしまうんですよ。「あれ!? どうやって動かしたらいいんだ?」っていうところから始まったので、「俺、プロレスできるの?」って、最初はすごく不安でしたね。
― そんな状態だったんですか。
潮崎 もちろんトレーニングもできないですし、何もできない状態が続いたんで、「このまま引退になっちゃうんじゃないか」と考えるくらいでした。たとえ腕が動かせるようになっても、筋肉って戻るのかなとも思ったし、不安しかなかったですね。
― そこを少しずつ地道にリハビリしていったわけですか。
潮崎 そうですね。主治医の先生に、「いま無理しちゃうと、手術した意味がなくなってしまうよ。またマイナスからやり直さなきゃいけなくなるから」って言われたとき、「いまは耐える時だな」って思い直しましたね。
― 昔、小橋建太さんが入院中、お医者さんが「ダメだ」って言ってるのに病室でトレーニングして、悪化させちゃったこともありましたもんね。
潮崎 小橋さんにも言われたんですよ。「やっちゃダメだと言われたときは、やるんじゃない」って。経験者の言葉だったんで、余計に心に響いて(笑)。おかげで無理せず地道にリハビリに励めましたね。
― トレーニングを再開できたのは、いつ頃からですか?
潮崎 夏ぐらいに少しずつですかね。わりとリハビリで動きも出せるようになってきて、「復帰はいつくらいになるかな……」ってかすかに考えることができるようになったのは、その頃です。ただ、「よし、復帰に向けてやるぞ!」みたいな感じにはまだなれなかったんで、「今年中になんとか復帰できるかな……?」という考えが芽生えたくらいでした。
― 欠場中、SNSでの発信やメディアへの露出も一切やめていたのは、どういった思いからだったんですか?
潮崎 欠場して試合もしてない人間が言うことなんて、何もないじゃないですか。かと言って、プロレスと関係ない日常的なことをつぶやいても「なんだそれ?」ってなっちゃうし。とにかく、余計なことを考えずに治療とリハビリに専念することが大事だと思ったので。その間、なんの情報もなくて不安に思ってくれた方もいたと思いますけど、SNSも何もやらずにいましたね。
― 夏以降、中嶋勝彦選手が「N-1 VICTORY 2021」で優勝し、10・10大阪では、丸藤正道選手とものすごい試合の末、GHCヘビー級王座を奪取し、「俺がノアだ」と発言しました。あの発言についてはどう思いましたか?
潮崎 言葉を言うだけなら簡単ですけど、それを実践していくのは簡単なことじゃないですからね。いかに体を張って、自分の闘いを見せてベルトを守っていくか。それをやっていかないと、「俺がノアだ」とは言えないので。「I am NOAH」vs「俺がノア」だね。どっちがノアか、ハッキリさせなきゃいけないと思いましたね。
― 潮崎選手自身、「I am NOAH」と言い始めたのは、そういう覚悟を持った上での発言だったわけですね。
潮崎 覚悟がないとその発言はできないと俺は思っているので。いかにノアを背負うか、GHCを背負うか。そういう闘いをね、今後も見せていかなきゃいけないと思っています。
― ノアでエースと呼ばれてきた歴代王者は、みんなそうされてきたわけですもんね。
潮崎 それをリング上の闘いと、普段の姿勢の両方で見せてくれた人たちを俺は知っていますから。だからこそ、より負けられないなと俺は感じています。
― 1・1日本武道館での対戦相手、中嶋勝彦選手は絶好調でタイトル戦でもすごい試合を連発していますが、最近の試合ぶりをどう見ていますか?
潮崎 この前(12・5名古屋大会)の60分フルタイムやった拳王戦が、久しぶりに生で見た試合でしたけど。相変わらずだと思う部分もあり、よりチャンピオンとしての意地を感じた部分もあったんでね。ベルトを巻いている自覚というのはハンパじゃないんだろうな、とは思ってます。でも、どっちがノアかと言われたら、俺も黙ってはいられないし。それを証明するために、1・1武道館で闘おうと思っています。
― 復帰した時、自分のライバルがGHCのベルトを持っていたというのも運命的ですよね。これが武藤さんや丸藤選手がチャンピオンだったら、また感覚も違ったんじゃないですか?
潮崎 そうですね。そういう状況だったら、復帰して即挑戦という気持ちに俺自身がなってなかった気がしますね。中嶋勝彦だからこそすぐに挑戦を表明したし、あいつからベルトを獲るのは俺しかない、そういう考えで動きましたから。
― その舞台が、プロレス界で初めて元日に開催する日本武道館大会ということに対しては、どんな思いがありますか?
潮崎 あっ、プロレス界で初なんですね。2022年最初の日というのは、ノアがいいスタートを切れる絶好の日だと思うので、最高の試合をして、ノアを引っ張っていきたいです。そして1・1日本武道館では、若手の宮脇純太も復帰するのでノアのフルメンバーのフルパワーを、ぜひ会場で感じてもらいたいと思ってます。
― 元日の武道館だけでも大きな話題なのに、1・8横浜アリーナで新日本プロレスとの対抗戦も発表されています。これについては、どんな考えがありますか?
潮崎 今は元日の日本武道館に集中しているので、正直、そっちのことはまだ考えてないですね。でも、やるのであれば、差を感じるのは新日本側でしょうね。
― ノアと新日本が絡むのは5年ぶりですけど、この5年間で変わったのはノアの方だと。
潮崎 向こうの試合をそんな見てるわけじゃないですけど、新日本が変わったところは感じないですし。自分たちは自信を持ってノアの闘いというものを見せるので、対抗戦を通じて、あらためてノアの凄さを認識してもらえればと思ってます。とにかく、今は1・1日本武道館に集中しているので、ぜひ期待してください! ノアは元日から突っ走ります。