ATP(男子プロテニス協会)が主催するATPカップが、元旦にめでたく開幕。4組のグループラウンドのうち、初日はグループAのチリ対スペインとセルビア対ノルウェー、グループDのアルゼンチン対ジョージア、ギリシャ対ポーランドの対戦が行われた。
この日の目玉はなんといってもギリシャとポーランドのエース対決、世界ランク4位のステファノス・チチパスと9位のフベルト・フルカチュの一戦だった。しかし、コートに現れたのはチチパスにあらず。代わりに現れた選手が誰なのか、さっぱりわからなかったのは無理もない。世界ランキング1076位のアリストテリス・サノスという20歳の選手。「イケメンじゃないか」と気を取り直してみたところで、昨年マイアミでマスターズの初タイトルも手にしたフルカチュの相手となるはずはなく、6-1 6-2のワンサイドマッチに。第1試合のシングルス2対決では117位のカミル・マイクシャクが399位のミカイル・ペルボララキスを6-1 6-4で下してポーランドが先勝しており、シングルス2つであっさり勝敗は決した。
チチパスは昨年11月に肘の手術をしている。復帰戦の相手がフルカチュでは肩慣らしにはならないし、逆にリスクが大きすぎたか。ペルボララキスと組んでダブルスには出場し、フルカチュ/ヤン・ジーリンスキにマッチタイブレークで勝利を挙げた。それならシングルスも戦えたのでは?という声も聞こえてくるかもしれないが、「悪い意味にとってほしくないんだけど、やっぱりダブルスとシングルスは負担が違う」とチチパス。「手術のあとまだ100パーセントの状態には戻っていない。チームのためにシングルスでプレーしたかったけど、もう少し時間がほしいという感じなんだ。次のアルゼンチン戦までに1日空くから体の状態を見ながらまた決めたい。シングルスで戦えるように僕も祈っている」と試合後のオンコート・インタビューで語った。
残りのグループラウンドの相手はアルゼンチンとジョージア。シングルスに出場するとしたら、チチパスの相手は世界ランク13位のディエゴ・シュワルツマンと同22位のニコロズ・バシラシビリとなる。さて、チチパスとチームとファンの願いは叶うだろうか。
ワンマンチームのつらさを露呈したギリシャだが、このグループDではポーランドもジョージアも似たようなメンバー構成だ。シングルスのナンバー1のみがずば抜けている。そんな中、チーム力で勝負するのはアルゼンチン。13位のディエゴ・シュワルツマンをエースとし、ナンバー2にはフェデリコ・デルボニスがいる。さらにダブルス・ランキング22位のマキシモ・ゴンザレスと同44位のアンドレス・モルテーニが後ろに控え、ジョージアとのグループラウンド第1戦も3-0と圧勝した。
ABEMAでこのカードの解説を務めた佐藤哲哉氏は、「アルゼンチンは単複分業がしっかりできているという強みがある。しかも3試合とも快勝したことで、いいムードで次につながるのではないか。このグループはアルゼンチンがいけそう」と予想する。
第2日は、グループBのロシア対フランス、イタリア対オーストラリア、グループCのカナダ対アメリカ、ドイツ対イギリスと、どれも注目度の高いカードとなっている。中でもタレント揃いのイタリアと地元オーストラリアの戦いは熱くなりそうだ。
開催国オーストラリアはワイルドカードでの出場のため、エースのアレックス・デミノーのランキングは16カ国のエースの中でもっとも低い34位だが、フットワークを武器に半年前には15位だった実績もある。ナンバー2のジェームズ・ダックワースは49位と各国の2番手の中では高いほうで、ダブルス13位のジョン・ピアースと同23位のルーク・サビールが控えていることも強みだ。
ただ、やはりイタリアはそれにもまして手強い。世界ランク7位のマテオ・ベレッティーニと10位のヤニク・シンネルはともにパワーと多彩さを併せ持ち、イタリアのシングルスの層の厚さは16カ国中トップ。シドニーっ子のデミノーが、ベレッティーニを破りでもすれば展開としてはおもしろいが、地元の応援でミラクルを起こせるか。
文/山口奈緒美