元日の日本武道館大会で「2022年1月1日、日本のプロレス界の序列を変えるスタートだ!」と拳王が令和プロレス革命を宣言し、1月8日の横浜アリーナで対抗戦を行う新日本プロレスに改めて宣戦布告したプロレスリング・ノア。新日本が新年恒例行事として東京ドーム興行を開催した1月4日、すぐ隣の後楽園ホールで、ノアの選手たちの1・8横浜アリーナ対抗戦への激情が爆発した。
【視聴詳細】1・8『WRESTLE KINGDOM「新日本プロレス vs プロレスリング ・ノア」』
まず口火を切ったのは、横浜アリーナで昨年8月にデビューしたばかりの新日本のホープ・藤田晃生との若手対抗戦に出陣する矢野安崇だ。藤村加偉を前方回転エビ固めで丸め込み、デビュー1年2カ月にしてシングル初勝利を果たした矢野は「ノア生え抜きは、技術もすべて新日本と違うからな。絶対に潰してやる!」と“ノアの技術”を強調した上で、必勝を誓ったのである。
いつもは楽しいキング・タニー&モハメドヨネのファンキーエクスプレスは、宮脇純太&岡田欣也相手に骨太のゴツゴツしたファイトを随所で見せ、岡田をキン肉バスターで料理したヨネが「新日本の選手はつまらない煽りをしていたから、コメントを出さないノアの選手の方が上がっちゃったという不思議な状態がありましたけど、試合結果を見てもらえばわかると思います。ねえ、タニー?」と、新日本を皮肉りつつ、自信をチラリ。これを受けてタニーも「今はファンキーエクスプレスで勢いがあるし、ノア自体に勢いがあるんで“このまま、うちらがいっちゃうよ!”って感じで、レッツ・ファンキー!」と、小島聡の「いっちゃうぞ、バカヤロー!」をパクったような勝利宣言だ。
ファンキーエクスプレスは齋藤彰俊も加えたトリオで永田裕志、天山広吉、小島聡の新日本第三世代と対戦するが「本物のレスラーとやりたいと思っていた。俺らはファンキーな強さもあるし、いろいろなものを持っているチームだと思うんで、重鎮たちとどう絡み合うかをお客さんに観てほしい」と、さらなる引き出しを開けることを示唆。ヨネはこれまで永田に2勝1敗で勝ち越しているだけに手ぐすねを引いて1・8を待っている感じだ。
今、新日本ジュニア戦線でヒールとして頭角を現しているSHOと一騎打ちを行う小峠篤司は、吉岡世起とのノア・ジュニアのハイレベルな攻防戦を必殺キルスイッチで制すると「チームのために、団体のために、気持ちをここから落とさないですよ。俺は、守るものがある時はめちゃめちゃ強いですよ。絶対に負けない、気持ちで!」と、ユニットだけでなく団体…ノア・ジュニア全体を背負って戦うことを宣言した。
こうした熱い気持ちを吐露する選手たちの一方で自然体なのが杉浦貴。桜庭和志&KENTAとのトリオで鈴木軍(タイチ&鈴木みのる&TAKAみちのく)と激突する杉浦は、桜庭&藤田和之とのトリオで田中将斗&望月成晃&稲葉大樹と対戦して稲葉をオリンピック予選スラムで一蹴。対抗戦について聞かれると「別に新日本に対して因縁も何もないから普通にやるだけ」とサラリ。相手はかつて在籍した鈴木軍だが「鈴木みのるも新日本じゃないでしょ? そうしたら別に団体同士のアレでもないでしょ? 面白いコメントは出ないよ」と受け流した。ただ、こういう時の杉浦は怖いということを忘れてはならない。
もちろん2022年のノアは新日本との対抗戦だけでなく、ノアの現在進行形の戦いも苛烈だ。丸藤正道、マサ北宮、稲村愛輝、原田大輔、大原はじめと金剛(中嶋勝彦、拳王、征矢学、タダスケ、亜烈破)の10人タッグでは、2人の選手が自己主張した。昨年から遺恨が続くGHCヘビー級王者・中嶋勝彦をサイトー・スープレックス計3発でKOした北宮、そしてGHCタッグ王者の丸藤に激しく突っかかった征矢だ。
北宮は中嶋のGHCヘビー級、征矢は武藤敬司&丸藤のGHCタッグへの挑戦を表明したのである。ただし、対抗戦も忘れていない。北宮は金剛に向かって「お前たちだけじゃねぇぞ! 俺たちもノアなんだよ、バカヤロー!」と言い放った。なお、この2つのタイトルマッチは1月16日の仙台サンプラザホールで実現することが正式決定した。
セミファイナルでは元日決戦で中嶋GHCヘビー級王座に挑戦して敗れた潮崎豪、拳王のナショナル王座に挑戦して敗れた清宮海斗が2022年再スタートを期しての一騎打ち。スタートからノンストップの真っ向勝負となったが、これを制したのはジャンピング・ニーパットからタイガー・スープレックスを鮮やかに決めた清宮だ。「もう俺は一歩も引けないんだよ。俺もこのノアに人生懸けているんだよ。止まらねぇぞ!」と、1・8横浜アリーナで武藤と組んでのオカダ・カズチカ&棚橋弘至戦に一直線の清宮に対し、敗れた潮崎は「諦めねぇ。必ず立ち上がってやるよ」という言葉を残して控室に消えた。
メインは小川良成&HAYATAに鈴木鼓太郎&YO―HEYが挑んだGHCジュニア・ヘビー級タッグ選手権。元日の日本武道館でHAYATAに小川が挑戦する師弟のGHCジュニア・ヘビー級戦が行われ、HAYATAが防衛。試合後に師の小川がタッグベルトをHAYATAにタッグのベルトを投げつけるという幕切れで不穏な空気が漂っていた。しかし小川もHAYATAもピンチをしのぎ、最後はHAYATAが鼓太郎にへデックをズバリと決めて防衛に成功。コンビの絆は保たれた。1月6、7、10日の横浜ラジアントホールでノア・ジュニアによる『N innovation U―CUP』が開催されるが、その中心になるのは、やはりHAYATAと小川なのだ。
1・8横浜アリーナでの新日本との対抗戦で日本プロレス界の序列を変え、ノアの現在進行形の激しい戦いをさらに熱く拡大していく。ノアのイッテンヨンは選手たちの気概が満ち溢れる大会だった。
文/小佐野景浩