金剛の革命はならず…内藤は試合後、拳王に「またな」「会社主導ではなく、選手個人が相手選手の名前を出すような対抗戦をしたい」とも
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 1月8日、新日本プロレス『WRESTLE KINGDOM in 横浜アリーナ』における新日本プロレスvsプロレスリング・ノア対抗戦のダブル・メインイベント第1試合として行われた鷹木信悟、内藤哲也、SANADA、高橋ヒロム、BUSHIのロス・インゴブレナブレス・デ・ハポン(LIJ)と中嶋勝彦、拳王、征矢学、タダスケ、亜烈破の金剛の10人タッグマッチは今大会の中で最も対抗戦ムードが高まった。

【視聴する】1・8『WRESTLE KINGDOM「新日本プロレス vs プロレスリング ・ノア」』


 拳王がノアの日本武道館元日決戦で「日本のプロレス界の序列を変えるスタートだ!」と令和プロレス革命を宣言し、さらに新日本の1・5東京ドームで「いつまでも天狗になってるんじゃねぇぞ!」と新日本の選手ばかりか、ファンにまで喧嘩を売って対決姿勢を鮮明にしたからだ。ましてや、この試合を迎える段階で対抗戦の星取りは4勝4敗1分けのイーブン。どちらも負けられない重要な一戦になった。

 金剛は、試合が組まれていない覇王、仁王も加わってメンバー全員で入場してポーズを決め、やる気満々。GHCヘビー級王者・中嶋が先発を買って出て、リング上で胡坐をかいて待機すると、LIJ側からは内藤が飛び出した。

 中嶋にとって内藤は、16年8月4日の福岡市民体育館におけるG1公式戦で敗れている相手。この時、デスティーノで勝った内藤は「中嶋に送る言葉はアニモ(頑張って)。また次の対戦、楽しみにしてるよ」と余裕のコメントを出し、中嶋は「これだけじゃ終わらせない。内藤哲也、必ずあなたの前に現れる」という言葉を残している。それから5年5ヵ月を経ての再会だ。内藤がヘッドロック投げ、それを中嶋がヘッドシザースで返すと、内藤は寝転んで右腕を突き上げるお得意のポーズ。負けじと中嶋も寝転んでニヤリ。内藤が「トランキーロ!」と言おうとした瞬間に金剛勢が襲い掛かるなど、スタートから丁々発止の駆け引きが見られた。

 続いてヒロムと亜烈破のジュニア対決が実現。激しいロープワークからティヘラで場外に落とされたヒロムは、試合に関係ないセコンドの覇王をフェンスに叩きつけた。これはヒロムの手荒いメッセージ。この対抗戦が決まった時、ヒロムは覇王との一騎打ちを熱望していたが、実は13年のイギリス武者修行時代にタッグを組んだり、覇王が保持していた4FWジュニア王座に挑戦した過去があるのだ。

金剛の革命はならず…内藤は試合後、拳王に「またな」「会社主導ではなく、選手個人が相手選手の名前を出すような対抗戦をしたい」とも
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 この10人タッグは様々な過去の物語が内包されていた。鷹木と中嶋は04年デビューの同期で、ドラゴンゲートの05年11・2後楽園、ダイヤモンドリングの12年2・11後楽園で対戦して、いずれも中嶋が勝利している。

 SANADA、BUSHIと征矢は全日本の若手戦線で切磋琢磨した同期で、SANADAのデビュー戦の相手は中嶋と、その前日にデビューしたBUSHIのコンビ(SANADAのパートナーは土方隆司)だったし、SANADAと征矢は2010年に全日本新世代コンビのesとしてアジア・タッグ王者になっている。

 BUSHIと征矢の再会は、ヘビー級の征矢がスイング・スリーパーで圧倒した。SANADA vs征矢は、SANADAのエルボー連打に征矢は重い逆水平チョップで対抗。SANADAがスワンダイブ式ミサイルキックを発射すれば、オクラホマ・スタンピードで叩きつけ、SANADAの首固めをブレーンバスターでぶっこ抜くなど一歩も引かない。

 内藤vs拳王も熱かった。「気になっているのは、あいつだけだ!」と内藤に照準を絞っていた拳王はヘッドロック投げからパンチを連打し、座っている状態の内藤の側頭部にキックをぶち込んで踏みつけると「日本一はこんなものかよ!」と挑発。その後、拳王の投げっ放しジャーマンが炸裂したが、すぐさま立った内藤が延髄斬り、これに拳王がオーバーヘッドキックで応戦…と、目が離せない攻防が繰り広げられた。

 鷹木と中嶋はチョップとミドルキックの激しい応酬。鷹木がバックドロップからパンピング・ボンバーを狙うが、中嶋は腕にカウンターのキックを見舞って阻止すると、お返しのバックドロップ! こちらも一歩も譲らない。

 そして勝負を決したのは鷹木vsタダスケだ。実は2人は04年の闘龍門15期生。同年8月に闘龍門ジャパンがドラゴンゲートとして独立したため、練習生の削減により退寮を余儀なくされたタダスケは翌05年に大阪プロレスでデビューし、17年9月にノア所属になった。かつての闘龍門の同期生がおよそ18年の時を経て新日本とノアとして対抗戦で再会したのである。タダスケは思いを込めた地団駄ラリアットを鷹木に叩き込み、投げっ放しドラゴン・スープレックス、スライディング・ラリアット、パンピング・ボンバーの豪技3連発を食ってもカウント2で跳ね返した。最後は鷹木の必殺ラスト・オブ・ザ・ドラゴンに沈んだものの、この試合のハイライトは、この鷹木vsタダスケだったかもしれない。

 試合はLIJの勝利。金剛の革命は成らなかった。試合後、金剛全員がノーコメントだったことからも、その無念さがわかる。一方、LIJは異口同音にネクストを口にした。内藤は「今回のような会社主導ではなく、選手個人が相手選手の名前を出すような対抗戦をしたい」と言う。団体の威信、ユニットのプライドだけでなく、それぞれの過去からの物語も垣間見えたLIJ vs金剛。試合後に内藤が拳王に「またな」と語りかけたのが印象的だったが、それがいつになるのか、待ち遠しい。

文/小佐野景浩

写真/プロレスリング・ノア

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