新日本プロレスとプロレスリング・ノアが約5年ぶりにあいまみえる全面対抗戦、1・8『WRESTLE KINGDDOM 16 in横浜アリーナ』。
第0試合を含めて全11試合すべてで対抗戦が組まれた今大会。“大将戦”とも言うべき最終ダブルメインイベント2として組まれたのは、オカダ・カズチカ&棚橋弘至vs武藤敬司&清宮海斗。団体のためにユニットの枠を超えて共闘した頂上対決だ。
【視聴する】1・8『WRESTLE KINGDOM「新日本プロレス vs プロレスリング ・ノア」』
ここまで対抗戦の対戦成績は、新日本の5勝4敗1引き分け。この時点でノアの「勝ち」はなくなったが、メインは勝敗の重要度は他の試合と比べ物にならない。かつて95年の10・9東京ドームで行われた新日本とUWFインターナショナルの対抗戦で、高田延彦に勝利した武藤敬司が1勝以上のインパクトをもたらしたことでもわかるとおり、この試合で勝った方の団体が「勝利」のイメージを独占するほどの試合といえる。
そんな大事な一戦で最も注目されたのは、プロレス界のトップが揃った中、唯一20代である清宮海斗の闘いぶりだ。清宮は2020年5月24日の配信マッチの際「レインメーカーを体感したい」と発言するなど、かねてからオカダ・カズチカ戦を熱望。今回の対抗戦が発表された記者会見でもあらためて「レインメーカーとやらせていただきたい」と語っており、新日本のトップであり現IWGP世界ヘビー級王者相手にどんな闘いを見せられるかが注目された。
試合はいきなりその清宮とオカダの先発でスタート。まず清宮がグラウンドのリストロックで主導権を握り、高速リープフロッグから打点の高いドロップキックで先制すると、オカダは「やりやがったな」の表情から強烈なエルボーを返し、さらにセントーン。代わった棚橋は、エルボードロップからエアギターで控えの武藤を挑発した。
ここで武藤が登場。棚橋との“師弟対決”では、じっくりとグラウンドの攻防を展開し、その後オカダと初対決。オカダはロープ際でのブレイクの際、LOVEポーズで武藤を挑発。これに対し武藤はフライングメイヤーからフラッシングエルボー。そして放送席の蝶野正洋に見せつけるようにSTFをきめていく。
武藤に負けじと、代わった清宮もフライングフォアアームや高く飛び上がるエルボードロップで攻めていくが、オカダは余裕の表情でフラップジャックを返し、さらにスライディングキック。ここから清宮はローンバトルが続く苦しい展開。棚橋にテキサスクローバーホールドをきめられ、オカダには場外でDDTを食らい、大の字になったところ「調子に乗ってんじゃねえぞ。さっさと上がってこい、この野郎!」と見下された。
それでも清宮が、棚橋にランニングネックブリーカードロップで反撃すると、代わった武藤が低空ドロップキックから串刺しシャイニング。オカダ、棚橋に連続でドラゴンスクリューを決めて、棚橋に対しUインターとの対抗戦を思い起こさせる足4の字固め。さらに武藤はオカダにもシャイニングを決め、清宮にタッチすると「行けよ!」と檄を飛ばす。
武藤から勝負を託された清宮はエルボーとエルボースマッシュの乱打でついにオカダをダウンさせると、フライングエルボー、ミサイルキック、ジャンピングニーで畳み掛け、オカダの余裕を奪っていく。そして決め技のタイガースープレックスを狙うが、これは棚橋がスリングブレイドでカット。そこに武藤が棚橋にシャイニングウィザードを決め、さらにオカダが武藤にドロップキック。清宮もオカダにジャンピングニーを決め、4者がダウン。
最初に起き上がった清宮は膝立ちのままオカダとエルボー合戦を展開するが、打ち勝ったのはオカダ。ショートレンジのラリアットから旋回ツームストンで清宮を追い込んでいく。そしてトドメのレインメーカーを狙うがこれは清宮がかいくぐり、武藤がシャイニングウィザードで援護射撃。勝負と見た清宮は高角度ジャーマンから、雄叫びもろともタイガースープレックスを決めるが、これは棚橋がカット。するとオカダがドロップキック、開脚式ツームストンで清宮の動きを止め、最後はレインメーカーを完璧に決めて3カウントを奪った。
清宮は奮闘したものの、結果はオカダが力の差を見せつけての完勝。敗れて大の字になりながら号泣する清宮に対し、オカダは「こんなんで泣いてんじゃねえぞバカヤロー!帰れさっさと! 邪魔だ!」とば倒。清宮は「泣くな!帰るぞ」と声をかけた武藤の肩を借り、悔し涙を流しながら控室へと戻っていった。
バックステージでもオカダは、清宮に対しては手厳しい発言に終始した。対戦した感想を聞かれると「それはもう見た人が感じてください。僕が言うとひどいことになってしまうかもしれないんで。それぐらい差があると思いますし、泣いてる場合じゃないよって。もう、名前を出さないでほしい。清宮“選手”だったけど、(対戦した今はもう)清宮“くん”かな。呼び捨てにもできないレベル」と切り捨てた。
その上で「悔しいなら新日本プロレスに来ればいいじゃん。海外修行のように新日本に何年か上がって、自信がついたらノアに戻ればいいし。そうしないと、ノアでトップになれるかもしれないけど、プロレス界、外に出たら海は広いよ。それぐらい差があったなと思います」と、辛口のエールとも取れる言葉も口にした。
この結果により対抗戦は6勝4敗1引き分けで新日本の勝利。清宮海斗が今回の敗戦、そしてオカダのこの言葉を受けて、これからどう闘っていくのか。この悔しい思いを活かすことが、清宮の今後のレスラー人生、ひいてはプロレスリング・ノア、プロレス界の未来につながるはずだ。
文/堀江ガンツ
写真/プロレスリング・ノア