“新規感染者数”に振り回されるメディア、国民、政府…医師「オミクロン株に入れ替われば緩和戦略が始められるはず」
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 オミクロン株による感染例が南アフリカで確認された11月末以来、原則として新たな外国人の入国を禁止するなどの厳しい水際対策を続けている日本政府。家族と会えない、留学が叶わないなど、外国人たちに大きな影響も出ている。

 アニメーターを目指し、東京藝術大学への留学を計画してきた中国人のパン(仮名)さんもその一人だ。大学3年生の時に交換留学生として韓国に滞在した際、知り合った藝大生の作品に触れて感動、憧れを抱いたという。ところが昨年に続き、今年も来日の見通しは立っていない。

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 『ABEMA Prime』の取材にパンさんは「大学での専攻はアニメーションで、中国でもたくさん勉強したが、日本に行きたいと願うようになった。2年間も準備してきたのに、入国できなくてとても落ち込んでいる。今はとりあえず諦めるしかないので、準備を続けながら、中国で仕事をしようと思う」と肩を落とす。

 こうした状況に、WEB漫画家のやしろあずき氏は「実は今、アニメーターは中国の方が稼げる。そういう中で、クオリティの高い作品が作れるパンさんのような人が日本にリスペクトを持ち、学びたいという意欲を持ってくれているのに、それを逃してしまうのは日本にとっても勿体ない話。痛手だと思う。漫画業界では、関係する印刷会社が潰れていっているという話も聞いた。イベントも一律に禁止するのではなく、どういう状態なのかをきちんと考えて判断してほしい」とコメント。 

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 また、大学入試対策などを手掛けるLoochs代表の斎木陽平も、「仕方がないという部分がある一方、これまでの2年で感染症について分かってきている部分もたくさんあると思う。ワクチン接種も進んでいるし、来日観光客とは分けて考えてもいいのではないか。検査や隔離措置などと併せて、感染を拡大させない範囲で、学びたい人については受け入れることを考えるべきではないか」と問題提起。

 その上で、「メディアや我々国民は、どうしてもキーとなる数値として新規感染者数を見てしまっていて、“前週比で”などと言ってショッキングに取り上げがちだ。しかし重症者数も増えていない、飲み薬の話も出てきている今、新規感染者数だけに怯えて振り回されるのはどうなのだろうか。政府としても支持率が新規感染者数に左右されるので、そっちを見てしまうところがあると思うが、社会経済活動を何から何まで停止してでも抑えるべきものだろうか」と疑問を投げかけた。

■感染症対策“やることはずっと変わらない”

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 ただ、影響は外国人にとどまらない。沖縄県では濃厚接触者への対応の結果、エッセンシャルワーカー不足が起きている。現場でコロナ感染症患者の治療にあたってきた愛知医科大学病院の後藤礼司医師は、オミクロン株について「デルタに比べて弱いということははっきりしている」とした上で、「ここからが勝負ではないか」との見方を示す。

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 「デルタに比べればオミクロンは猛毒株ではないので、いわばインフルエンザに近くなった、という感覚を持っていただけたらと思う。ただ、そこで考えていただきたいのは、インフルエンザに罹った方が接客をしたり、医療の現場にいたりしてもいいですか、ということだ。そこに“ノー”と答えるのであれば、やはり新規感染者数を増やさないに越したことはない。

 だから沖縄の問題についても、家族のうち誰か1人でも観光に従事しているとなれば、やはり動かないでねという話になってしまうので、産業構造上、どうしても苦しくなってくる。医療も同様で、冬場はコロナが無かったとしても、猫の手も借りたいくらい現場は忙しくなる。僕のところには心臓疾患の方たちが来るが、この金土日の間だけでも、2桁に迫るぐらいの勢いで緊急患者の手術があった。

 それを加味すると、余計なものは少しでも増えて欲しくないというのはあるし、僕は大学の仕事以外にBリーグのチームドクターを掛け持ちしているが、今節、来節と試合中止になっているくらいなので、それだけ市中感染が広がっているというふうに考えるのが妥当だ。視聴者の皆さんの中には、PCR検査をすればオミクロンかデルタかがすぐに分かると勘違いされている方も多いと思うが、それは追加の試験をしなければ分からない。未だ2割程度はデルタ株だとみられているし、結局のところ、症状ベース、もしくはワクチンを打ったかどうかで見ていかなければわからない」。

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 こうした状況を踏まえ、やしろ氏や斎木氏の意見については「もちろん、先ほども言ったように、オミクロンだけになってしまえば、すでに1億人近くの国民がワクチン打っているという状況もあるので、経済を止めるレベルかと言われれば、そこまでではないと思う。その意味では、今が“考え時”だと思うし、オンライン授業などの技術革新も起きているわけで、試験の方法も含め、グローバル化を踏まえた視野を持って考えていくことも必要なのではないか」と指摘した。

 「僕はコロナの初期の頃から、“やることはずっと変わらない”と言い続けているが、密や大人数の飲み会を避ける以外、普通に外食やショッピングも必要であればしてきたし、マスクを外してランニングをしてもいる。今日もこうして外出先からお話をしているが、当たり前のことを当たり前にやっていけばいい。これから先の未来にも、コロナ以外の感染症が必ず出てくるはずだ。その時に、今回の経験を活かしてストレス社会にどう適合していけるかが試されているんじゃないか」。(『ABEMA Prime』より)

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