将棋界は、ソフト(AI)が台頭するまでの勉強法といえば「実戦・棋譜並べ・詰将棋」の3点セットだった。先人の戦い方を棋譜から学び、詰将棋で終盤力を鍛え、練り上げたものを実戦で試す。誰の棋譜を並べるか、何手詰ぐらいの詰将棋をやるか、ぐらいの差はあれど、おおよそ誰もがそうしていた。ところが今では若手を中心に、ソフトをフルに活用し初手から終盤に至るまで研究し、対人であまり指さずに本番、という棋士も少なくない。時間がかかる棋譜並べ、詰将棋よりはるかに効率的だが、これに森下卓九段(55)は「一日中考えることしか得られないものがある」と、きっぱりと言う。実体験から確信を得て、弟子・増田康宏六段(24)にもすすめた勉強法は、どんなものか。