北朝鮮の朝鮮労働党機関紙は17日、朝鮮人民軍が「戦術誘導弾」の射撃試験を行い、2発ともが日本海上の目標へ正確に着弾したと報じた。
北朝鮮の狙いについて、自民党政調会長代理の宇都隆史衆院議員は「一番はアメリカだ。何かあった時、そこから攻撃される可能性がある在韓米軍、在日米軍に対して、自分たちの力を示しておくことが重要なことだ。なぜ繰り返すのかと言えば、一つは国際的な制裁によって追い込まれているということがあるだろう。それでもこれだけ技術力を高めている背景には、裏でつながっていて、まともに経済制裁をしようとしない国、技術支援をしている国があるからだ。まずはそういったところをシャットダウンしていく必要がある」と話す。
「ただ、最近は外交的に見ても、中国が完全に後ろ盾になり、水面下で連携しているということにはちょっと疑問がある。北朝鮮としても、中国の言いなりにはならないぞという気持ちが出てきているように見える。個人的には、トランプ政権の時にシンガポールで行われた米朝会談は失敗だったと思う。CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な核の放棄)がギリギリまで行っていたのに、韓国の融和政策に乗ってしまい、現状を認めてしまった。そこから北朝鮮は味をしめたと思う。
また、“北朝鮮とは対話して、北朝鮮が求めるものをあげた方がいいのではないか”という日本の世論を作るために撃っている。その意味では、これ以上追い込んでもダメなのではないか。対中国でもそれをやって失敗しているわけだし、国連決議も守らない国である以上、言うことを聞いてはいけない。国際社会で決めたルールは、守らせないといけない」。
相次ぐ北朝鮮の飛翔体発射を受け、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有の検討を求める声も一段と高まっている。ところが北朝鮮は移動式発射台を用いた実験も繰り返しており、単に敵基地攻撃能力を向上させただけでは抑止力には繋がらないとの指摘もある。
元航空自衛官でもある宇都議員は「そもそも敵基地攻撃能力については昭和30年代から議論されてきたテーマで、その課題を政治的に乗り越えようとしている潮流が出てきている。自民党でも、今まさにその話をしているところだ」と話す。
「ただし、そうしたものを自衛隊の装備品として開発・購入して訓練、運用するとなると、10年くらいはかかるのではないか。やはり実際にそういう能力を持っている同盟国の軍隊と協力しながら、我々にできない部分は肩代わりしてもらうということが必要になる。ただ、米国も国内に様々な問題を抱えているので、何でもかんでも依存するのでなく、これまで100%依存してきた中の一部の攻撃能力については、自分たちでも持とうじゃないかということだ。
一方、北朝鮮は先日もTEL(輸送起立発射機)を用いるなど、ミサイル発射部隊が移動できるようになってきているので、ミサイルを飛ばして建物などを物理的に破壊するというだけでは抑止力には繋がりにくい。敵基地攻撃能力に代わる良い言葉を見つけ、それによって説明しなければならないのではないか、というのが現状だ。
そこで物理的ではない抑止力として、向こうが一番嫌がるのは“体制の崩壊”の可能性、さらにいえば“指導者の殺害”の可能性だ。だからこそアメリカなどは情報力やピンポイントの攻撃力を駆使し、“お前の居場所はいつも把握できているぞ”、“そっちがやろうとすれば、こっちは指導者の殺害までできるんだぞ”という意思を示し、脅威を感じさせている。しかし国家情報局みたいなものが日本には無いし、直ちにこうした能力を日本が保有するのは大変難しい。いずれにしろ、予算を付ければ数年でできる、というようなものではない」。
こうした問題点を乗り越えるため、核保有こそ抑止力、対話のきっかけになるのではないかという意見もある。
宇都議員は「ただし、核は非常に政治的にハードルが高い。しかも最近のウクライナの紛争を見ていると物理的な攻撃だけではなく、電子戦やヒューミントを使った世論の撹乱といった情報戦など、ハイブリッドな戦い方になってきている。その意味では、北朝鮮が開発しているのは高性能のミサイルなので、システムの機能を撹乱することによって着弾点を逸らすといった防ぎ方も可能だ。
ただし今の日本の法律上、サイバー空間の中でこちらから攻撃を仕掛ける、特定の周波数の電波を使って攻撃を仕掛ける、といったことはできない。こうした“たが”を一つずつ外し、国家として持っている機能をフル活用するような能力を身につけていくべきだろう。岸田総理としても、そういうところも含め、ゼロベースで考えましょうということだ。
そもそも今の国家安全保障戦略は8年前に作ったものなので、ミサイル防衛システムについても、北朝鮮の弾道弾をどう守るか、という時代の想定だ。当時は中国による台湾侵攻などは全く想定していなかったし、むしろ北朝鮮による攻撃よりも起きる確率的にはこちらの方が高い。そういうことに対する戦略と予算についての議論が、まさに始まっているのが現状だ」。(『ABEMA Prime』より)
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