19日、政府は新型コロナウイルス感染症対策本部で、感染が急拡大している13都県について「まん延防止等重点措置」を適用することを決定した。
新たに追加したのは、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、岐阜県、愛知県、三重県、香川県、長崎県、熊本県、宮崎県の1都12県。期間は21日から2月13日までとなる。
まん延防止等重点措置(以下、まん延防止措置)の効果には疑問の声もあがる中、政府はどのようにみているのか。テレビ朝日政治部の今野忍記者が解説する。
Q.政府はまん延防止措置の効果をどのようにみている?
私が取材した政府高官は「効果はある」とはっきり言っている。去年9月末に解除して以来、政権が変わってから初めて出すので、多少はアナウンス効果があるとみている。菅政権の時は、まん延防止措置が効かないから緊急事態宣言を出して、また他の地域でまん延防止措置を出してと、どこがどうなのかわからないぐらいの状態だったが、今回は久しぶりということでそれなりに効果があるとみている。
Q.尾身会長は19日、「これまでとは違ったメリハリの効いた対策が必要」「人流抑制ではなく人数制限」だと言っていたが。
今回の尾身会長の発言はみんな驚いたと思う。「ステイホームは必要ない」というのも、菅前総理が聞いたらずっこけそうなぐらいだ。それぐらいオミクロン株は違うんだと。専門家が口を揃えて、飲食店で大人数でお酒を飲んで、大声で会話をするのはダメだと言っているが、これまでやっていることとあまり変わらない部分はある。
Q.第5波の時より重症者が増えていないのはどのように見ている?
感染者がこれだけ増えているのに、重症者は第5波の10分の1というのは冷静にみている。新型コロナは指定感染症の2類だが、政府与党内には「5類まで下げていい」「オミクロン株は風邪みたいなものだ」と言っている人もいる。ただ、岸田総理としては、オミクロン株だけ見たらそうかもしれないが、変異してオミクロン株並の感染力でデルタ株並に重症するようなものが出てきた時に、5類から2類に戻すのは大変だということで慎重になっている。
Q.岸田政権では自治体との連携はうまくいっている?
わりとうまくいっているのではないかというのが、政府与党や関係者の見方だ。これは簡単で、岸田総理は“丸のみ”するから。以前、吉村知事と電話をした際は、「今は自治体の言うことを丸のみしてくれる」と話していた。
東京よりも大阪のほうが感染者数が多いのになぜまん延防止措置を出さないかというと、吉村知事が言う理由は2つ。1つは、自分たちで病床使用率35%という基準を作っていて、これを守らないと飲食店の人たちが持たないということで、“基準に達したから要請する”という手続きが必要だということ。もう1つは、これまでは今回の13都県と一緒に動かないと次は適用されないかもしれないという関係性だったが、岸田政権は自治体の要請を基本的にはのんでくれると。そこまで焦らずに、自分たちで決めた数字になったら動くという考え方になっている。
取材していて思うのは、岸田さんは総理になった時から菅前総理を反面教師にしている。菅前総理がやったことは今になって評価されているが、渦中にいる時は散々な言われようだった。菅前総理は経済を優先したいという強いこだわりがあったので、自治体や専門家との齟齬が見られるようなこともあった。後手に回っている印象があったので、岸田総理が「先手、先手」と言うのはそこへの思いがあると思う。
Q.逆に言えば、岸田総理はリーダーシップを発揮して引っ張っていくタイプではない? 政府与党内での評価は?
今のところ支持率も高いし、うまくやっているという評価だが、ここ数日で感染が拡大していて、今回初めて岸田政権として措置を発動するので、評価が定まっていないというのが正しいと思う。
ただ、岸田総理は、安倍元総理や菅前総理が後手に回ったことへの批判を踏まえているのと、圧倒的に優位な立場でもある。安倍元総理や菅前総理の時とは違って、今はワクチンを8割ぐらいの人が2回接種していて、飲み薬、経口薬もできてきている。最初はこんぼうと布きれで戦っていたのが、今はそれなりのつるぎとよろいを身につけたような状態で、岸田総理にはアドバンテージがある。
ワクチン接種に関しては、菅前総理の時には1日150万回いったこともあったが、逆に足りなくなって批判されたこともあったので、それを意識したのか岸田総理は慎重だ。自衛隊の大規模接種センターを1月31日から開始するのも年明けに決めていて、「なぜ今あるワクチンを使って先に打たないんだ」という声が菅前総理や河野前ワクチン担当大臣周辺から出るのは、指摘のとおりだと思う。