「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ1回戦・第2試合、チーム谷川とチーム鈴木の対戦が1月22日に放送され、チーム鈴木がスコア3-0のストレート勝ちで初戦を突破した。師匠の鈴木大介九段(47)が個人2連勝を飾ると、弟子の梶浦宏孝七段(26)もレジェンド棋士の攻めをしっかり受け止めての快勝。師弟の力がしっかりと噛み合った3連勝で、最高のスタートを切ることになった。
昔ながらの上下関係を保ちつつ、その雰囲気は実に和やか。鈴木・梶浦師弟の関係が良好であることが滲み出るような、そんなストレート勝ちだった。先陣を切ったのは梶浦七段。近年、めきめきと成績を上げ、特に竜王戦では挑戦権獲得に年々近づいている期待の棋士だ。第1局は谷川浩司九段(59)という将棋界の重鎮とぶつかり「大先生にぶつかることができる貴重な機会」と謙虚に抱負を語ると、後手番から相矢倉に進み、相手の攻めを真正面から受けて立つ堂々とした内容となった。谷川九段からも「対戦相手でなければ応援したくなる後輩の一人」とまで言われる好青年だが、将棋でも背筋を伸ばして戦うようにレジェンド相手にひるむことなく、落ち着きまで感じさせる指し回しで勝利。「小学生のころから雑誌やテレビの番組でずっと見ていた先生だったので、対局することができて、うれしかったです」と喜びを隠さなかった。
梶浦七段を将棋界の子どもとかわいがる師匠・鈴木九段も、この1勝に乗った。第2局は都成竜馬七段(32)との対戦になったが、先手番から中飛車を選ぶと、角交換を経て都成七段も向かい飛車を選んで相振り飛車に。「昭和の相振り飛車と全然指し口が違って参りました」と混乱しながら序盤を戦っていたが、さばきながら陣形を整え直すと、攻めのターンが回ってきてからは鋭い手で反撃。「プロ的に見るとかなり押されていた」と苦戦を実感しながらも、大きな勝利を弟子のもとに持ち帰った。
こうなれば、もうノリノリだ。「すごく気分が楽になった」と、鈴木九段は第3局にも連投。想定外に都成七段との連戦になったが、今度は後手番から四間飛車を選ぶと、都成七段が居飛車・穴熊で対抗形に。経験のある形に持ち込み序盤からペースを握り、終盤でも優勢・勝勢といった状況だったが、時間の短いフィッシャールールの圧力もあってか「最後バタバタになったのはお恥ずかしい」と頭をかく混戦になった。それでも終盤までに稼いでいたポイント差も大きく、逃げ切り勝ちを収めた。過去、同じフィッシャールールで戦う団体戦「ABEMAトーナメント」では思うような成績を収められていなかった鈴木九段だけに、弟子とのタッグでの連勝には「出来すぎというか信じられない。望外ですね」と驚いていた。
弟子の勝利を全力で喜び、師匠の連勝を見ていた弟子もわくわくしながら見守る。盤外でも2人の絆が見て取れたチーム鈴木。1人で戦う公式戦以上のものを、この師弟タッグが初戦から出してきた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)