コロナ禍で外出や人との接触などがはばかられる今、一棟貸しペンションのニーズが高まっている。その一方、ペンション内を我が物顔で振る舞う悪質な客による問題。いわゆる“カスハラ”も増加している。
九十九里海岸に面する千葉県いすみ市の山間にとある人気の一棟貸しペンションがある。今年で4年目を迎える一棟貸しペンション「太陽と星が輝く宿 季楽(KIRA)」。ここもまた、悪質な客のカスハラに直面している。
オーナーは菅井直美さん。かつてK-1広報として活動し、故アンディ・フグや武蔵、ボブ・サップなどの選手をメディアに売り出し、人気と知名度を高めた。そんな菅井さんが手がけたペンションには広い中庭があり、バーベキューや映画、さらみは露天風呂やサウナなどを楽しむことができる。16人を1グループとし、全5部屋を丸ごと借り上げる使い勝手の良いスタイルが評判だ。
菅井さんはバリ島旅行で出会ったご主人と結婚。その後、東京からいすみ市に移住。現在のペンションは大工の心得があったご主人と「お客さんに楽しんでもらいたい」という一心でゼロから作り上げた二人の城でもある。
しかし、一棟貸しならではの問題も。そのことについて菅井さんは「一棟貸し切りの宿は管理人が常駐して見ているわけではない。お客様にどうしても目が行き届かない部分があると思うが、庭でケーキを投げて物を壊してしまったり、汚してしまったり…」と残念な出来事を明かす。「誕生日だったみたいなので楽しまれてましたけど」と楽しまれたことについては一定の理解を示しつつも、やはり心中複雑な様子だ。
12人のグループは仲間の誕生祝として巨大なケーキを体に塗るなど悪ふざけをすると、体や衣服に生クリームがついた状態で、芝生やバリ島で購入したクッションに座り込むなどした。「何度もクレンザーで洗ったけど取れないんです…」菅井さんは汚れが付いたままのクッションを手に残念そうに語った。
結局、思い出の地であるバリ島で購入したクッションは破棄することに。弁償代金を請求するも連絡はとれていないという。大半の客がマナーを守って楽しむ中、深夜に花火を打ち上げたり、露天風呂を破壊したりとやりたい放題の客がいることもまた、残念ながら事実である。
それ以上に頭を悩ませている問題があるという。それはサイトへの書き込み(レビュー)だ。問題のケースは、犬を連れて宿泊した客のケース。ランチバーベキューから夜は和食のフルコースを堪能したはずが……ちょっとしたハプニングが発生する。
客自らが扉を開け、食材を運ぶために敷地内と外を2往復した際、同伴した犬が扉から逃げてしまったのだという。すると翌日、予約サイトのレビューには「(菅井さんの)ご主人が扉を開けっぱなしにしたせいで犬が脱走。車に轢かれそうになったり、近隣の犬にかまれそうになったりし、家族総出で探し、涙した。犬好きは利用を考えた方がいい」などといった内容だった。
しかし実際に防犯カメラの映像を確認すると、レビュー内容とは異なる事実を確認する。犬は1分足らずで連れ戻され、大騒ぎになるどころか、時間を延長して楽しんでいったとのことだ。さらに同ペンションを利用する際には「飼い犬の同意書」にサインする必要があり、そこにはすべて飼い主の責任との誓約。作業上や性質上、スタッフの出入りなどで扉が開く可能性も明示されている。もちろん、両者が承諾のサインをしたうえでの利用だった。
「全額 返金して欲しい」
その後、この利用者は運営サイトを通じて宿泊代や食事代、延長代など、およそ9万円の全額返金を要求してきたのだ。当然、お金の問題は突っぱねて解決。しかし、一度書き込まれた一連のレビューを消すことはできずに残ったままとなってしまった。レビューが集客に果たす役割は大きく、悪影響も懸念される事態だが「一行でも事実があると消すことも変更することも不可能だ」と菅井さんは肩を落とす。
口コミ(レビュー)の問題についてきらり法律事務所の中川みち子弁護士は「口コミというのは選択をするうえで非常に重要だが、自分に不利なモノだけ削除依頼をできるとなれば、それは公平ではない。おそらく、全く事実と異なるということでなければサイト側は削除に応じないだろう」との見解を示すと「誹謗中傷や名誉棄損に当たるとか権利を侵害するようなものは削除可能だと思うが、感想ということでは難しい状況だ」と続けた。
また、今後の流れについて中川弁護士は「口コミに対して返信ができる機能を持っているサイトはある。もし事実と違うのであれば、そこで訂正をするというのが一つ有効。あまりにもひどいということであれば、削除依頼をサイト側にかけることもできる」としたうえで「見ている人が賢くなるというのが一番必要。平均よりも突出して悪いというのは悪意がある」と個人的な見解も述べた。
■Pick Up
・「ABEMA NEWSチャンネル」がアジアで評価された理由
・ネットニュース界で話題「ABEMA NEWSチャンネル」番組制作の裏側