伊藤隆代表も絶賛したように「これぞRISE」と言うべき圧巻のKO劇だった。

 1月23日のRISE後楽園ホール大会。メインイベントのバンタム級タイトルマッチに登場したチャンピオン・鈴木真彦は、挑戦者の拳剛を1ラウンドで倒してみせた。

 鈴木は168cm、拳剛は177cm。身長差がある対戦だったが、鈴木は一気に飛び込んでラッシュをかける。拳剛もパンチを返し、試合は激しい打ち合いとなった。挑戦者のパンチも当たっていたのだか、それでも鈴木の連打は止まらない。

「こっちが1発打つと3発打ってくる」

 拳剛がそう振り返った圧倒的な回転力と強打。1ラウンド2分4秒、3度のダウンを奪ってのKO勝利で王座防衛だ。昨年は悲願の那須川天心戦に敗れたが、江幡塁を倒して再起。そして今回も“鈴木強し”を印象付けた。だが試合後の鈴木は、まず反省を口にした。

「チャンピオンらしい試合ができなかった。感情のままに闘ってしまいました。もっとレベルアップしないといけない」

 なぜ感情が先走ってしまったのか。鈴木は言う。

「2022年一発目のRISE。そのメインでしっかり締めなければと。コロナで大変な時期ですし、それを吹っ飛ばすような試合を見せたかったです。大変な時期でも、格闘技の力を広めたい」

 RISE王者として大会を背負う覚悟、決意が強いからこその猛ラッシュだったのだ。リング上では、一昨年秋に敗れている志朗とのリマッチをアピールした。曰く「この階級でやり返さないといけない相手がいる」。

 鈴木が見据えているのは、6月に開催される那須川天心vs武尊をメインとするメガイベントだ。そこでは、団体対抗戦が行なわれるという話もある。鈴木はその大舞台に真のRISE代表、RISEバンタム級のトップとして出場したいのだ。そのためには志朗へのリベンジが必須となる。

「対抗戦があるのならRISEを背負って、 RISEで一番強い選手として出たい。そして向こうの一番強い選手とやって、RISEが一番強いと証明したい」

 6月の武尊戦を最後に、那須川天心はキックボクシングを卒業する。キックを、RISEを盛り上げるのは誰か。それが大きなテーマになってくる。鈴木は、自分がその中心になると決意したのだ。上半期の闘いはそのためにある。鈴木真彦は試合内容だけでなく、その言葉にも力強さ、頼もしさを感じる選手になった。

文/橋本宗洋