「TikTok」を運営する日本法人、ByteDance株式会社が延べ20名の“Twitterインフルエンサー”に対価を支払い、動画の投稿を依頼していたことが明らかとなった。
同社は25日、「#PRなどの広告表記が必要とされる商品やサービスの宣伝をするものではなく、TikTok内のコンテンツをより多くの皆様に知っていただくための活動であったことから、「広告」表記は不要との認識にて実施されていた」と説明。「法令に抵触しないとはいえ、結果として皆様に誤認をさせる可能性があり、不信感を持たせてしまうこととなりました。」としている。
ネット上のトラブルにも詳しい深澤諭史弁護士は、「サービスの品質や性能を有利・優良と誤認させる広告は規制の対象となるが、原則として広告は表現の自由に守られており、TikTokの行為が該当するとは言えないため、社会的な批判があるものの、適法だ」と説明するが、業界の常識では、一連の投稿が“ステマ”(ステルスマーケティング)に当たるのではないかとの批判がある。
インターネット広告のビジネスモデルに詳しい、オンラインサロン『田端大学』塾長の田端信太郎氏は「正直言って、広告営業をやっていた頃、広告主からそうした相談を受けたことがあるし、グラデーションでいえば、“クロに近いグレー”から、“かなり白に近いグレー”まで、いろいろな広告が存在していると思う」と話す。
「そして、それはネットのステマだけでない。例えばテレビだって、スポットCMをたくさん打った広告主、あるいは雑誌にたくさん広告を打った広告主についてはなんとなく好意的に取り上げるみたいなことが、広告営業の中では昔から“阿吽の呼吸”で続いていると思う。あるいはテレビのCS放送などで、“使用者の感想です”とかいって健康食品のCMを流しているが、あれだってタレントさんや出演者にはギャラが払われているのだろうし、消費者から見れば今回のTikTokの投稿と大差ないのではないか。
また、広告に直接紐づいたお金はもらっていなくても、例えば別の機会の講演会に呼ばれてギャラをもらって…とか言い出すとキリがない。もっと言えば、テレビ局や広告代理店の“コネ入社“、ファッション誌に出ている“読者モデル“の旦那さんが有名ブランドのマーケティング部長だったという事例など、なだらかなグレーゾーンがあって、境目もない。“本心はどこだったんだ”と尋問をしているとキリがない」。
田端氏は続ける。「だからこそ、そこに法規制をかけるのは馴染まないと思うし、僕が理事を務めていたJIAA(日本インタラクティブ広告協会)という業界団体では、業者同士で“さすがにこれはないわ”というものをガイドライン的に決めていた。あくまでもモラルの問題として、目先のお金に惑わされずに自分の尊厳を長く保とうとする。そして、“ステマをやるのはダサいよね”と皆でガッカリする、見放すということでしかないのではないか。
そう考えると、もちろんTikTokが悪いというか、ダサいしカッコ悪い。しかしそれ以上に、投稿することでお金をもらっていたインフルエンサーの方がダサいしカッコ悪い。今回の問題で誰が誰を裏切ったかと言えば、まずフォロワーを裏切ったインフルエンサーたちではないか。“がっかりした”と批判されるべきだし、名前が出てきていないこともおかしいと思う」。
また、広告代理店などでつくるWOMJ(WOMマーケティング協議会)の理事長も務める井上一郎・江戸川大学教授は「どんな投稿であったとしても、誰が書かせたのか、つまり広告主のような存在なのかが情報の受け手に分かる、ということがポイントだ。また、投稿した人がその依頼によって何かしらの報酬を得たのかどうかが受け手に分かる、ということもポイントだ。それらが分からないとするならば、それはやはり不適切な投稿である言えると思うし、一連の投稿も、“広告”や“PR”であるということ、誰が依頼したかが明記されているべきだった」と説明する。
「田端さんから、ステルスマーケティングでインフルエンサーの印象が悪くなるという指摘があったが、情報発信者といってもプロフェッショナルではなく、かなりアマチュアな人たちがたくさんいる。そういう人たちがダメなことだとは知らずに、企業から“これ紹介してよ”と言われて嬉しくなって、ついつい投稿し、結果的に糾弾されてしまうという、“無邪気なステマ”が相当数あるのも現実だ。
一方で、そういう人たちの投稿が良質だったり、役立つものだったりするからこそ、フォロワーが増えていったという側面があるはずだ。私たちが作ったガイドラインにも、正しい投稿をすることが、フォロワーに対して誠実であるということが書いてある。言い換えれば、フォロワーが正しい情報を得られる権利を守ってあげることが、同時に発信者を守ることにもつながるということだ」。(『ABEMA Prime』より)
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