福岡県がYoutuber「駒沢アイソレーション」と共同で、大麻乱用防止のためのゲーム風啓発動画「TAIMA HAZARD」を公開した。
この動画は、堅いイメージがある啓発動画と一線を画す、ユニークな作品となっている。番組では、制作を担当した福岡県保健医療介護部薬務課・麻薬係の児玉臨さんに話を聞いた。
「大麻で検挙される方が、若年層の方が多いという特徴があります。若い方々、特にスマホで動画を見て楽しんでいる方が多いので、そういったところに啓発の動画を出していって是非見ていただきたい」
去年、福岡県内で大麻を所持するなどしていたとして摘発された人数は、暫定値ながら399人と過去最多を更新。その内、20歳未満が65人と若年層による薬物乱用の実態が浮き彫りとなっている。
「若い方に見ていただくのに堅い内容であったり、難しい内容だと最後まで見るのが難しいのではないかということでかなり冒険して思い切った取り組みになっています」
そして福岡県とタッグを組み、動画を制作したのがインフルエンサーとして活動する二人組、「駒沢アイソレーション」。ゲームの世界観を忠実に再現した動画が話題を集め、TikTokのフォロワー数が120万人を超える人気クリエイターで『ABEMAヒルズ』でも、一昨年特集として取り上げた。
『ABEMAヒルズ』では、そんな駒沢アイソレーションを再び取材。メンバーのハヤケンさんは、動画を撮影するときに意識したことについてこう話す。
「今回は薬物の乱用防止の啓発ということで、いかにシリアスな内容を噛み砕いて、若い世代の人たちにも楽しんでもらえるかというところで、いかにゲーム風に出来るか工夫しました」
例えば動画のワンシーン。スポーツで悩む男性に、先輩が（違法）薬物を勧め、それを男性が受け取ろうとするシーン。
違法薬物がいかに私たちの生活の近くにあるか、きっかけは、身近なところに潜んでいるということをゲームの様な動画を通じて理解できるような演出がされている。
「今回要求されていたのが、大麻などの断り方だったので、断り方をどうゲーム化するかというところが難しかったです。『薬物がダメなものだよ』というのはかなり共通認識としては、広がっていると思う。コミカルに内容がスッと入って来て欲しいなって思いますね」
自治体とYouTuberという異色のタッグがおりなす啓発動画。県の担当者・児玉さんは動画を通じて若い世代に”薬物の断り方”を学んでほしいと訴える。
「誘いをきっぱり断ること、その場を離れること、この2つをぜひ知ってほしい。大麻に誘われているような場面は、非常に危険な場面なので、どうにかして直ちに離脱をしていただきたい。もしもすぐに離れるのが難しいような相手の場合には、理由を作る。そういったことを絡めながら離脱をはかっていただきたい」
『ABEMAヒルズ』コメンテーターでノンフィクションライターの石戸諭氏は、啓発として新たな切り口に挑戦するのは面白いとしつつ、大麻の勧誘について「リアルな問題として考えてほしいのは、一度だけではなく、何度も誘われる。そうすると断り続けるのは、なかなか難しい」と述べる。
一度、誘われると抜け出せなくなる薬物の問題。「なぜ薬物に手を出してしまったのか」という背景を、周囲の大人たちがケアすることが一番大事だと語る。
「ゲームや市販薬などにもあてはまるが、いろんなところに依存する若者たちがいる。そういう人たちがなぜ依存症になってしまったのか。そこの背景というのは、それぞれが抱えている家庭事情が原因になっていることもある。なので、それを取り締まれば問題が解決するわけでもない。また、若者たちは仮に薬物に手を出したとしても『数回なら覚醒剤や大麻でも大したことない』と考えてしまう人も多い。それでどんどんハマっていって、気がついたら依存症になっている。そんなときに大人が『1回、2回薬物に手を出しても大丈夫。こういう道があるんだよ』と手を差し伸べてあげるのが大事」
石戸氏は、最後に「軽い気持ちで手を出してしまい、なかなか抜けきれない」という人たちについて「日本の場合は、大麻などに手を出した場合、軽い気持ちに見合わないほど社会的制裁が大きいことを知っておかなければならない」と話した。（『ABEMAヒルズ』より）
