解説棋士「AIさんは味方」「ジェット機は乗るもの」将棋ソフトの“共存”で進化する棋士たち
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 かつては敵視する者も多かったが、今は心強い味方。将棋界における将棋ソフト(AI)のことだ。「人間 対 AI」の構図に、ある種の決着がついてから5年足らず。今では若手からベテランまで、多くの棋士が将棋ソフトを活用した研究で棋力を高め、名局を生み出している。2月3日、藤井聡太竜王(王位、叡王、棋聖、19)が順位戦B級1組12回戦で快勝を収めた対局中、解説を務めていた千葉幸生七段(42)がふと口にした言葉は、棋士と将棋ソフトの関係性が大きく変わったことを示すものだった。

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 2017年5月、当時名人だった佐藤天彦九段(34)が将棋ソフトPONANZA(ポナンザ)に2連敗した時には、将棋界に大きな衝撃が走った。数十年かかっても人間を超えるものは生まれないという声も多かった中、AIに急速に追いつかれ、抜き去られた人々には、戦う意味を見失いかけた者もいただろう。ところが今では10代の藤井竜王のような若手だけでなく、50代のベテランであっても積極的に研究に活用する。「対立」から「共存」には、関係者やファンの想像以上にスムーズに移行した。

 千葉七段は、ABEMAの中継番組で解説をしている最中、将棋ソフトが900億にも及ぶ手を解析していることについて、脅威を感じるのではなく「AIさんは味方ですから」と語った。人間が実際に何手分を読めているか数値化するのは難しいが、仮に計算できたとしても短時間で900億ということにならないのは、容易に想像がつく。「ジェット機みたいなものと徒競走をしようと思っちゃいけません。ジェット機は乗るものですから」。正面から勝負すれば敵わない。しかしツールとして活用すれば、人間の隠れた力を引き出したり、成長につなげられたりする。それが現在の人間と将棋ソフトの理想的な関係だ。

 そして千葉七段は、こうも言った。「将棋は900億手読んでも、よくわからないってことなんですかね」。最先端のソフトをハイスペックなパソコンで動かしても、81マスという狭いスペースで40枚の駒を使って戦うゲームの必勝法が見つからない。時には藤井竜王の「AI超え」のように、将棋ソフトですら最善手としなかったような好手が見つかることもある。そんな小宇宙の探求は、千葉七段の言うように「AIは味方」にした方が、より深く進められる。類まれなる才能が、将棋ソフトによって磨かれた時、今まで見たこともないような手がまた世に送り出される。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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