「本当に日本で日本語を勉強したくて、日本の文化をもっと知りたくて。日本で仕事がしたいです」
去年10月、ニュース番組「ABEMAヒルズ」にこう訴えたスウェーデン人留学生のコネーリアさん。この2カ月前から日本の大学で学び始めるはずだったが、コロナ禍で入国できず、オンラインで授業を受ける日々が続いていた。
留学生の入国をめぐっては、感染者数が落ち着いていた秋に制限が緩和されたものの、オミクロン株の拡大によって、再び政府は水際対策を強化。例外的に入国が認められるケースはあるが、15万人といわれる待機留学生の一部の希望しか通っていないのが現状だ。
現地で日本の大学のオンライン授業を受けているが「健康と気分は本当に悪くなってしまいました」と話すコネーリアさん。一番の理由は時差だという。
「スウェーデンでは日没が早く、今も冬なのであまり太陽がみられません」
日本の大学のオンライン授業は、現地の時間で午前1時から5時まで。昼夜逆転の生活が続いたことによって、コネーリアさんには精神的・肉体的な不調が現れているという。コネーリアさんの留学期間は今年の6月までで、たとえ今すぐ来日できたとしても、残された期間はわずかだ。留学生の入国問題について岸田総理は2日の国会で、こう説明している。
「外国人留学生の新規入国については人道上国益上の観点から個別の事情を慎重に勘案し、必要な防疫措置を講じたうえで入国を認めてきた。(一部略)状況が刻々と変化している。国内外の感染状況の差あるいは、オミクロン株の特性をしっかりと踏まえた上で、必要かつ適切な対応を絶えず考えていかなければならない」
状況に応じて適切な対応を考えると発言した岸田総理だが、水際対策は2月末まで継続する見込みだ。政府の慎重な考えは「理解できる」というコネーリアさんだが……
「言いたいことは、もちろん『日本に入らせてください』です。オミクロン株はすでに日本で広がっているので、入国制限の意味はないと思います」
日本で学び、日本の文化に直接触れ「ゆくゆくは日本で仕事をしたい」と思っていたコネーリアさん。それが叶わない今、他の国への留学も含め、新しい進路を考えているという。
「私は交換留学生なので、スウェーデンの大学もあります。だから(スウェーデンの大学に)戻れると言われました。3月にそうするつもりでいます。もし岸田さんに『これからも留学生は入れない』といわれたら、私は留学をやめると決めていました。日本には友達がいます。もちろん日本は一番好きな国です。でも、この間に他の国は私を受け入れてくれますが、日本人は私たちをそんなに受け入れたくないですか?」
■進められた日本の「留学生30万人計画」長引く入国規制は人材損失にも
公共政策に詳しい東京工業大学准教授の社会学者・西田亮介氏は「すでにコネーリアさんのような学生が多数出ている。学部も大変だが、大学院の修士課程は2年しか期間がない。僕の大学の研究室にも入国できない留学生がたくさんいる。大変心苦しい」と話す。
オミクロン株の感染拡大を防ぐという目的があるとはいえ、長引く入国制限は日本の人材損失につながる可能性もある。西田氏は「そもそも日本は『留学生30万人計画』という政策を2000年代の終わり頃からやってきた。その目標を達成し、さらに留学生誘致に力を入れようとしていた」と言及。「日本の場合、少子化と高齢化が同時に進んでいる。留学生の人たちは日本が好きで来てくれている。中長期的に見れば、明らかに日本の損失につながる」と語った。
教員としても変化を感じているといい、西田氏は「春や秋の入学に向けて、例年は今頃毎日ひっきりなしに留学生と面談をしているような状況だった。今年はそういった連絡がさっぱり来ない。僕の研究室は文系で学生さんたちに実験してもらったりするような研究室ではないが、理系の中には留学生が来なくなると困ってしまう研究室もあるかもしれない」と現状を告白。韓国など、コロナ禍でも留学生の受け入れを続けている国もあるが、西田氏は「コロナ対策の考え方は国によってかなり違う。どこの国が正しいのか、一概に結論を出せる状況ではない。日本は死亡者が少ない数で推移しているが、(水際対策だけ取り上げて)良し悪しの評価は難しい」とコメント。その上で「ただ、この状況では(留学先として)日本の大学や研究室を選ばずによその国に行ってしまい、入国できるようになっても選ばれにくくなるかもしれない」と述べた。(『ABEMAヒルズ』より)
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