プロ歴45年のレジェンド棋士から出たまさかの発言に、ファンもびっくりだ。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ2位決定1回戦、チーム谷川とチーム森下の対戦が2月5日に放送された。この第3局で、チーム谷川・谷川浩司九段(59)がチーム森下・増田康宏六段(24)と戦ったが、対局前の谷川九段は「実は作戦がないんですよ」と苦笑い。公式戦だけでも2200局を超える実績を持つ棋士の想定外の言葉が注目されることになった。
谷川九段は、タイトル通算27期を誇り十七世名人の有資格者。鋭い切れ味と速度計算に優れた「光速の寄せ」は、後輩棋士たちからの憧れとなった。今年4月には還暦を迎えるが、現在でも毎年30~40局ほど公式戦をこなし続けている。この大会に採用されている持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールは、過去に出場した「ABEMAトーナメント」でも経験済み。師弟トーナメントの1回戦ではいいところなく敗れたが、このチーム森下との戦いでは第3局に森下卓九段(55)との50代対決に快勝、大会初勝利を手にしていた。
快勝を収めて弟子の都成竜馬七段(32)が待つ控室に「今回は胸を張って入りたいと思います」と向かった谷川九段だったが、ここでまさかの展開が待っていた。谷川九段としては1つ仕事を終えて、弟子の戦いを見守ろうと思っていたが、ここで都成七段からチームの勝利を決めてほしいとばかりに連投の打診。驚いた谷川九段だったが断ることもなくそのまま第4局も指すことになった。
対局間は、ほとんど時間もない。気持ちはなんとか切り替えようとしたが、ここでポツリともらしたのが「後手番なので、実は作戦がないんです(笑)」という一言。もちろんまさに百戦錬磨の棋士だけに本当に何も思いつかないわけでもないが、このフィッシャールールという特殊な環境と、自分の指し方に適した戦法が思いつかなかったようだ。「あまり打ち合わせの時間もなくて、連投になるとは思っていなかった」と素直にインタビューで明かした谷川九段。結局、増田康宏六段(24)の居飛車に対し四間飛車を用いて迎え撃ったものの101手で敗れた。
ただファンにとっては、対局の内容以上に谷川九段ほどの棋士が「作戦がない」と語ったことが印象的だったようで「ノープラン!」「作戦を催促」「タニーがとなりんに弱みを見せた!!!!」「作戦ないけど 結局強い」といった声が多く寄せられていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)