警察署襲撃、“沖縄ヘイト”への眼差しは“荒れる成人式”報道や米軍基地問題への無関心にも繋がる?
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 先月27日に発生した、沖縄警察署(沖縄市)の襲撃事件。玉城デニー知事は4日の定例会見で県警に対して全容の解明と県民への情報発信を求める一方、「誹謗中傷やヘイトスピーチは絶対に許されるものではないと思う。まかり間違えば、人の命も奪いかねない状況を起こさせる」とも訴えた。背景にあるのは、“沖縄だから”というネット上の情報発信だ。

【映像】なぜ沖縄ヘイトに? 根拠なきイメージが先行?

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 7日の『ABEMA Prime』に出演したカンニング竹山は「マスコミもやりすぎたのではないか。僕の地元の福岡県についても、例えば北九州市の成人式を取り上げてヤンキーがいっぱいいる、“荒れる若者”みたいな感じで報じる。ヘイトで書き込むような人は、どこのことでも書き込んでいるんだと思うが、そういうイメージに基づいているんだと思う」と話す。

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 元沖縄県サイバー防犯PR大使でライターのモバイルプリンス氏は「ショッキングな映像や画像によって心が揺り動かされた高校生たちが抗議に行ったのだろうし、さらにその映像を見て、“沖縄ではとんでもないことが起きている”とネットに書き込んでしまうだろう。こういう連鎖は止めたいと思うし、番組で取り上げていただけるのはありがたいが、高校生を追い込んでしまうことにならないか、また新たなハレーションを呼び起こすのではないか、という複雑な心境だ」とした上で、次のように話した。

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 「アメリカでは警察に抗議する『ブラック・ライブズ・マター』運動、あるいはフェイクニュースなどに扇動されて連邦議会を襲撃するという事件が起きたが、今回の件は全容が解明されておらず、抗議した人たちが当事者とどういった関係性で、どういう流れであのような行動に至ったのか分からない。展開によっては第2、第3の騒動が起きないよう、冷静さを呼びかけたい。“抗議に集まった人たち”という括りにはなっているが、実際には穏便な抗議をしようとした人、あるいは野次馬、逆に止めようとした人もいたかもしれない。そのあたりも丁寧に見ていかなければならない。

 やはり沖縄には文化、風習の面で違うところがあるし、それをポジティブに捉えれば旅行として楽しめる部分があると思うが、それが偏見と混ざってしまうことで“沖縄だからそうかもしれない”と事実に基づかない形で認識し、批判やヘイトスピーチのような形で書き込む人が出てきてしまうのではないか。一方で、おそらく東京で生活している人たちは、“差別が本当にあるかどうかは分からない”と感じるかもしれないし、それが差別の構造なのかもしれない。しかし、これは沖縄への差別であると受け止め、違う属性では自分も差別される側になるかもしれない、こういう立ち振る舞いはよくないんだよということを、自戒を含めてよく考える機会にしたい」。

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 地元紙『沖縄タイムス』の阿部岳記者も「取材した同僚によると、野次馬がいたことは間違いないし、投石などに心を痛め、片付けてから帰った若者もいたという。やはり県警が把握できる事実だけでも早めに情報公開していけば、デマやヘイトが蔓延することもなかったのではないか」と指摘する。

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 「成人式について言えば、沖縄のこともよく報じられる。確かに現場を取材しているとヤンチャな若者たちはいるし、そこにだけカメラを向ければ、“荒れる沖縄の成人式”になる。しかしその隣にはスーツ姿の青年や振り袖姿の女性もいるわけで、そこにカメラを向ければ“荒れていない沖縄の成人式”になると思う。やはり一度“荒れる沖縄の成人式”というイメージが付いてしまうと、東京なり、本社なりから“荒れている画はないのか”と求められ、現場が“消費”のために素材を集めてしまう。自戒を込めてだが、メディアにはそういう特性があるので、イメージが増幅されたり、歪めて伝えられたりしていることも多いのではないか。

 私は東京出身で、沖縄に来て記者になり25年になるが、もし今回と同じことが東京で起きたとしても、“東京土人”とは言われないと思う。沖縄に来た警察官が“土人”という暴言を吐いた醜悪な事件があったが、そういう歴史的な積み重ねによって、“差別していい対象なんだ”と刷り込まれているから同じことが繰り返されるのだと思う。プリンスさんが言われたように、意識しているかどうかに気付くのは難しいと思うが、“差別されている”という声があった時には、“そういうつもりがない”と言うのではなく、自分がしてきたことを振り返るということが必要だ」。

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 さらに阿部氏は続ける。「強い側から弱い側に対して起こるものが差別で、その力関係を使って言葉を投げつけるのがヘイトスピーチだ。その意味では、日本人の大多数が、1%しか人口のいない沖縄に70%の基地を押し付けている状況も差別だと思う。このことを、東京や沖縄の方々、それ以外の方々はどう考えるのか。沖縄の人が“基地はいらない”と繰り返し言ってきているのにそのままある、ということをどう考えるのか。また、基地問題に限らない。琉球王国という独立国を明治政府が併合して以来、差別は100年くらい前からある。ヘイトスピーチというのは本当に取り返しがつかないし、次はグループを攻撃していいとして、具体的な暴力が起こる。それがヘイトクライムだ。そして最終的にはジェノサイドまで行きつく。ナチスドイツでも同じことが起きた。とても危険なものだとして警鐘を鳴らしているのであって、今回番組に取り上げていただいた意味もそこにあると思う」。

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 モバイルプリンス氏も「差別はいけない、ということはみなさんも認識していると思うが、沖縄の人たちが“差別的な書き込みがある”と言っていることに対し、“これは差別ではないのではないか、批判の一種だよね”と番組で取り上げてしまえば、差別が“透明化”されて終わってしまう。阿部さんの言った基地問題についても、今回の問題とは繋がっていないのに、なんで急に話すんだと思われたかもしれない。しかし、実は偏見とか眼差しみたいなものは、根っこで繋がっているんじゃないかなと思う。沖縄の成人式は他の地域と違うのか?といったことから、一歩一歩丁寧にやっていく。そういうことも、アベプラ(ABEMA Prime)ならできる気がする」と訴えかけた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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