山下貴司元法務大臣「高校時代に9条を読んで、自衛隊が持てるとは読めなかった」…自民党が目指す憲法改正を菅野志桜里弁護士と議論
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 来年度の予算案が審議される中での異例の開催となった憲法審査会。コロナ禍を踏まえ、対面ではなくオンラインでの審議を行うことなどについての自由討議が行われた。

【映像】動き始めた憲法改正論議 元法務大臣&EXITと考える

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 この憲法審査会について毎週の開催を求めるなど、意欲を見せるのが自民党だ。2018年には“たたき台”として、憲法9条への自衛隊明記や緊急事態条項の創設などの4項目を掲げており、岸田総理大臣も2日、「たたき台素案、これに基づいて憲法を改正していくべきだと私は考えている」と明言している。

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 さらに1日には党憲法改正実現本部の古屋本部長が「5月の連休までには、何とか全都道府県で少なくとも1回」と、安倍元総理や麻生副総裁、石破元幹事長などの重鎮を含む30人が“講師”を担う“国民との対話集会”を開くよう呼びかけている。

 10日の『ABEMA Prime』では自民党が目指す憲法改正のロードマップについて、検事出身で、第4次安倍内閣で法務大臣も務めた山下貴司衆議院議員(自民党)と、山下議員と同じく検事出身で、衆議院議員時代から“立憲的改憲”を訴えてきた菅野志桜里弁護士に話を聞いた。

■菅野弁護士「与野党が前向きに話し合いしましょうという雰囲気になってきた」

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 EXITのりんたろー。は「75年もルールが変わっていないこと自体には違和感があるが、変えると具体的にどうなるのか、変えないことで何が保護されるのかがいまいち分からない」、兼近大樹は「人間もそうだが、時間が経てば変わっていくに決まっているし、周りが変わっていくのに合わせて調整して、変えていくのが普通だと思う。だから“変わらない美学”というのは変だと思う。ただ、変えたい人は“変えたい”というスタンスだけをとっているだけ、変えたくない人は“変えたくない”というスタンスだけとっているだけじゃないのかと思うし、結局変わらなかったところをみると、本当に変えたい人はいないんじゃないかとも思う」と話す。

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 山下議員は「おっしゃるように、他の国と比べると、一度も変わっていないのは不思議なことではある。アメリカは6回、フランスは27回、ドイツは65回も変えている。変えられなかった理由には、自民党と社会党のイデオロギーの対立があって、“憲法を変える”と言うと“戦争を始めるのか”というような、極論のぶつかり合いになっているところがあった。ところが最近は与野党がちゃんと向き合って話し合いをしようという雰囲気が出てきた。実際、“歩み寄り”もあって、例えば立憲民主党の枝野幸男前代表は2013年、『文藝春秋』で改正案を示している。

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 岸田総理も、自民党総裁として憲法改正実現本部のキックオフに来てくれて、国民の議論と国会の議論、そして国民の信頼を両輪として進めてほしいとおっしゃっているので、改正に意欲を示したと受け止めている。ただ、変えていいのか、変えていけないのかが分からないという国民の皆さまもたくさんおられると思うので、この機会に国民の皆様にしっかり伝えたいということだ。もちろん、政治は勝ち負けじゃない。お互いが合意すれば両方の勝ちになるから、そういうところを目指していきたい」と説明する。

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 これに対し菅野弁護士は「今までは与野党ともに、自分たちの目の前にいる、数の少ない“変えたい人たち”と“変えたくない人たち”だけ見ていた。しかし“変えたい営”に与しているのか、“変えたくない陣営に与しているのか、どっちか手を挙げてみて、と聞いた時、ほとんどの国民は“ちょっと分からない”みたいになるのではないか。ただし、“ちゃんと議論をしてほしい”、あるいは“変わると、自分や日本にとってどんないいことがあるのかを知りたい”といった素朴な思いを持っていると。そこを政治家が理解しだしたということだと思う」との見方を示した。山下貴司元法務大臣「高校時代に9条を読んで、自衛隊が持てるとは読めなかった」…自民党が目指す憲法改正を菅野志桜里弁護士と議論

 一方、フリーアナウンサーの柴田阿弥は「安倍政権時代はやはり国民の理解があまり得られずに進まなかったと思う。国民にとっての課題は今も経済、目の前の生活だし、コロナ禍なのに憲法改正の話をするんだと思う層もいると思うし、国民投票で過半数の賛成を得られるのだろうか」と問題提起。

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 すると山下議員は「一昔前は憲法学者の中でも圧倒的多数が自衛隊は憲法違反だ、憲法改正を論ずることが憲法違反だという雰囲気があった。しかし世論調査によっては過半数、あるいは7割近い人が議論をすべきだという意見になってきているし、“今そこにあるという危機”もある」として、自民が掲げる“改憲4項目”の一つでもある、“緊急事態”への対応について次のように説明した。

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 「国会は定足数(必要な出席議員数)が3分の1を満たしていなければ法律や予算を通せないが、例えばパンデミックや、向こう30年間に7割の確率で起きるといわれている首都直下型地震によって議員が集まれず、本会議が開けない、といったことが現実に起こり得るのではないかという問題だ。実際、関東大震災の時には緊急政令を十数本出して乗り切り、東日本大震災の時も菅野先生も含め当時の民主党政権の皆さんが頑張って、2年間に70本の法律を変えているが、本当に国会が開けなくなったら困るなという認識が徐々に国民に出てきていると思う。この議論は、冷静に始まりつつある。あるいは、かつては予想されていなかった北朝鮮による核実験や、迎撃の難しいミサイルの発射実験もある。これに対し、憲法で許される自衛権とはどういうものなのか、しっかり議論しなきゃいけないと思っている」。

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 菅野弁護士も「いま皆さんが最も関心のあるコロナと憲法はなかなか結びつかないと思うが、飲食店が狙い撃ちにされるのはどうなの?とか、緊急事態宣言の時には国会を閉じてるけどいいの?というモヤモヤ感はあると思う。日本国憲法の中には、こういう時の国会のルールがなかったり、宣言を出すときには国会議員が責任を持って賛成・反対を明らかにしようというルールもなかったりする。例えばそうした部分を変えることで、わけも分からないうちに、まん防が延長されたり、宣言との違いはなんでしたっけ、みたいになったりする曖昧さをなくすことができる。そういう憲法改正もあるんだという話をしていけば、生活と憲法が結びつくと思う」とした。

■山下議員「高校時代に憲法9条を読んで、自衛隊が持てるとは読めなかった」

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 とはいえ、やはり議論の紛糾が予想されるのが、9条の問題だ。自民党は4項目の中で、条文への自衛隊の明記を謳っている。

 山下議員は「僕は高校時代に憲法9条を読んで、自衛隊が持てるとは読めなかった。アメリカだったら大統領の権限だと書いてあるが、日本国憲法は自衛権も、誰がそれをコントロールするのかについても書いてない、国際的に見て珍しい条文になっている。だから芦部信喜さんという東大のものすごく有名な憲法学の教授も、“今のままなら自衛隊をなくす方向で考えるか、憲法を変えるかのどっちかしかない”ということを言った。ただ、自衛隊をなくすというのはちょっと現実的ではない。

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 また、2項には“前項の目的を達するため”と書いてあって、憲法を作った極東委員会は“これで自衛のための戦力は持てる”と勘違いしていたが、日本はそう解釈していることを言っていない。また、その後のいろいろな論争を経た今、安全保障環境は激変している。そういう中で、国民の生活を守り、国の存立を守るための自衛権として必要な措置が取れるのかと。また、昔のように軍は軍がコントロールするんじゃない、内閣のトップの総理大臣が指揮するんだということを明らかにする改正をすべきだと思う」と主張。

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 しかしパックンは「僕はシビリアンコントロールを憲法に明記することには反対しないし、拡大解釈が続くような曖昧さがあるのは不安だから憲法を変えるべきだという方も多いと思う。一方で、日本に自衛権があることは国際社会も認めているし、自衛隊を廃止すべきだという声もごく一部で、危機になっているほどではないと思う。今の“暗黙の了解”を明記しても、何も変わらないのではないか。むしろ、今の憲法のおかげで国際紛争に参加しなくてもいいという意味では“世界一おいしい憲法”を持っているとも言えるし、それは日本だけの特権だ。それを捨てるのか」と、集団的自衛権をめぐる論争を踏まえて切り込んだ。

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 山下議員は「パックンさんは“おいしい憲法”とおっしゃるが、僕は“危ない憲法”だと思っている。つまり自衛権は書いてないけど自衛権はある、自衛の措置は書いてないけど自衛の措置はできると、解釈でいかようにも伸びていく、解釈でいろんなことができてしまうは非常に危うい。政権が変わって、前の政権は国民の命を守るためとして取った措置について、“いや、それはやめた”となれば、国際社会は驚くだろう。国際社会に対しても責任を持たなければならないという中で、自衛権の中で一体何ができるのか、具体的な言葉を前提にしっかり考えていくことが必要だと思う。

 契約書に書かれていないことを、“いやいやこう解釈しているんだからいいじゃないか”と、ズルズルやっていくのは不安ではないか。やはり憲法を変えるという議論になれば、皆さんが一生懸命に議論することになる。これは許されるけど、これは許されないという限界を議論していくのはとても大事なことだ。集団的自衛権についての疑問については、これは日本を守るために必要なことだし、砂川事件の最高裁大法廷の文言に倣ったもので、拡大解釈ではない。憲法を解釈する最高裁、司法権の判断は尊重しなければならないということだ」。

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 菅野弁護士は「現実と憲法に差があるなというのは、みんなが思っていることだと思うが、私はパックンさんが言う“おいしい憲法”を、実は手放しちゃったと思っている。それが集団的自衛権の行使容認という、まだやられてないけど、ほぼやられている感じというのはやり返してもいいよね、という大きな解釈の変更をしてしまったことだ。そういう大事なことは伸び縮みする政府の解釈に任せるんじゃなくて、憲法改正の国民投票で決めていこうよ、また問題が起きたら国民で変えていこうよ、というベクトルこそ、日本国憲法が本来イメージしていることだと思う。おそらく、これから日本に求められることはジリジリと増えていくはずだ。そこで憲法を改正して、日本が戦争に踏み切るのはこれがマックスだ、みたいなことを決めておけば、なし崩し的に、という事態はなくなると思う」と指摘する。

 「ただし、山下さんも自衛隊を書くだけで良いという話はしていなくて、どこまでできるのかという議論をしようよという方向でおっしゃっている。それがすごく大事だけど、やっぱり9条の問題というのは、憲法の議論の中でも最後の“応用問題”みたいなものじゃないか。その前に、国会議員が会議に出られなくなったときに国会が止まるのは困るから、オンラインも可能にしようというような、“基礎問題”から議論していこうという考え方でもいいと思う」。

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 すると山下議員は「自民党には9条だけではなく、4つの提案がある。先ほどもお話しした緊急事態。それから地方自治、一票の格差。そして教育の格差の是正もある。そして外交交渉、あるいは国際協調の根っこに、日本には自衛権があるという抑止力だ。やっぱり憲法は国民のものだから、高校生の僕が読んでも分かるよう憲法にしたいというのが願いだ」と応じた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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