弟子を応援する気持ちから、思わず絶対にできない手まで期待することになった。「第1回ABEMA師弟トーナメント」予選Bリーグ2位決定戦、チーム谷川とチーム中田の対戦が2月12日に放送された。チーム中田の中田功八段(54)は、一番弟子の佐藤天彦九段(34)と目標とする優勝に向けて奮闘していたが、この試合でも弟子の対局を全力で応援。その最中に、2つの選択肢について「両方打て!」と叫んだことが、視聴者の笑いを招くことになった。
中田八段は「コーヤン」の愛称でファンから親しまれ、この大会でも愛弟子・佐藤九段への様々な思いを語ったことで、さらにファンを増やしているベテラン棋士。対局でも、得意の振り飛車をフルに活用し、なれない超早指しでも全力で戦っていた。また佐藤九段が対局の際には、控室で一人モニタを見守りながら、あれやこれやとコメントしては「ドキドキしちゃう」と鼓動を速めていた。
この試合を制した方が本戦出場となるだけに、第1局から中田八段はヒートアップ。佐藤九段の対局が始まると間もなく「暴れろ!勝ち負け関係なく暴れろ!」と、モニタに向かって檄を飛ばした。さらに燃え上がったのは、形勢有利になった中終盤から。「▲7二金でもいい▲5二金でもいい。どっちか打て!」と言った直後「両方打て!」と、どんな棋士であってもルール違反になってしまう「二手指し」まで求めた。これにはファンも「無理ですwww」「両方打ったら負けちゃう」「両方はだめーw」と大盛りあがり。思いが通じたのか、佐藤九段は169手という長手数の一局を制した。
試合はスコア1-4で敗れ、予選突破はならなかったものの、中田八段は「勝ちもした、負けもした。天彦君のいろいろな顔を見れたのは、うれしかったです」と、師弟の時間を堪能できたと結果以上に満足そうな表情を浮かべていた。
◆第1回ABEMA師弟トーナメント 日本将棋連盟会長・佐藤康光九段の着想から生まれた大会。8組の師弟が予選でA、Bの2リーグに分かれてトーナメントを実施。2勝すれば勝ち抜け、2敗すれば敗退の変則で、2連勝なら1位通過、2勝1敗が2位通過となり、本戦トーナメントに進出する。対局は持ち時間5分、1手指すごとに5秒加算のフィッシャールールで、チームの対戦は予選、本戦通じて全て3本先取の5本勝負で行われる。第4局までは、どちらか一方の棋士が3局目を指すことはできない。
(ABEMA/将棋チャンネルより)