20年近く続いてきた自公連立政権。しかし、今夏に行われる参議院選挙に向けた“相互推薦”をしない方針を固めるなど、両者に“綻び”が見え始めている。
自公が初めて連立を組んだのは1999年、当時の小渕内閣のとき。前年の参院選で議席を減らした自民党が、国会で安定多数を確保するためには公明党の議席が必要と判断したことがきっかけだ。その後、民主党政権で一時は野党に転じたものの、2012年の衆院選で当時の安倍総裁が率いる自民党が圧勝。その後成立した第2次安倍内閣で3年3カ月ぶりに自公連立政権が復活した。
この選挙で、自公の選挙協力はフル回転。各選挙区で平均2万票とも言われる創価学会票が自民党候補の勝利を後押ししたといわれている。公明党の支持母体である創価学会のベテラン会員は「学会のおばちゃんに嫌われたら終わり。好かれたら自分の息子のように応援する」など、選挙協力の実態を明かした。しかし、最近になって自公の連立が存続の危機を迎えていると政治ジャーナリストの青山和弘氏は指摘する。「日本の政治の大きな転換期になるかもしれない一大事」とも。
自民党内には先の総選挙における公明党の公約であった「18歳以下への10万円給付」を丸呑みさせられたという不満が根強く残っている。対する公明党側も衆院選を巡って自民党への不満が爆発。創価学会のあるベテラン会員は「私たちは昔から自民党候補をしっかり応援してきたのに彼らは全然やってくれない。見返りもないのに、こっちだけ応援はできない」と不満を口にする。
結果として、自公両党は参院選に向けて相互推薦はしない方針を固めた。先週、岸田総理と会談を行った山口代表は、会談後のぶらさがりで憮然とした表情を浮かべると「繰り返し述べてきた通りでありますので、変わりません」と言い切った。山口代表の態度や発言に対して、あるベテラン会員からは「よくぞ言ってくれた。スカッとした。もっとキレちゃってもいいくらい。それが学会員の本音です」などと心中を明かした。
一連の流れ、今後の展望について解説を求められた青山氏は「まだそんなに大きくなっていない」としながらも「真実は細部に宿るという言葉があるように、小さな変化が後の大きな変革につながっていく可能性がある。この変化を見逃してはいけないというのが今の状況だ」と指摘する。
青山氏は続けて、次のように説明する。
「いま、岸田政権になって幹事長は茂木さん。前までは何の用が無くても幹事長同士が毎週1回集まりましょうという会議をやっていたが、茂木さんになって『やめましょう。用事があったら会いましょう』となくしてしまった。茂木さんは公明党や創価学会に『配慮する必要はない』という考えの持ち主。さらにオフレコ発言で、周辺に対して『公明党はだんだん衰退していくから、あまり配慮する必要はない』と話しているのが、公明党や創価学会にも逆流して伝わってしまっていて、創価学会も怒っている」
コロナ禍が布教活動に影響を与え、学会員が減少傾向にあると公明党の実情について述べた青山氏は「副総裁の麻生さんも(茂木幹事長と)同じような考え方。岸田さんも自分が政調会長のときに30万円給付を公明党にひっくり返され、顔に泥を塗られたような経緯がある。岸田さんも公明党とはあまり良くない。そのような執行部になってしまったので、参議院選挙で相互推薦はやめましょうとなった。参議院選挙だけといえば、だけに見えるが、20何年間続いてきた自公の連立にとっては、大きな震源地になり得る変更だ」とも続けた。
菅前総理、二階前幹事長の執行部体制における公明党との関係性を問われた青山氏は「菅さんは創価学会の幹部に太いパイプがある。二階さんも配慮をしてやっていた。一方で、自民党内には配慮しすぎだという声もあった。中国に対する非難決議を国会でやったが、公明党は中国に対して融和的なので、ウイグルや香港の問題などで中国を名指しせず、外すように誘導した。選挙のときも自民党が持っている後援会の名簿を推薦の代わりに渡さなければいけない。そうすると自分たちの支持者のところに創価学会の信者が『比例は公明党に』とどんどん行ってしまって、自民党としては『荒らされる』という思いが、20何年の間にお互い、色々とくすぶっていて、そういったものが出てきている」などと応じた。
青山氏の話を受け、元衆議院議員で二階派だった宮崎謙介氏は夏の参院選を見据えて「公明党、創価学会の推薦がないと、自民党の多くの議員はかなり苦しくなる。茂木さんや麻生さんなどのベテランで、ガチガチの保守の選挙区は公明党の推薦などは無くてもいい。ただ、都市部など競っているところは、公明党票がかなりのっている。それが無くなると相当困ることになる」と指摘。
さらに自身の経験に基づき「推薦も3パターンある。一番下は自主投票で、学会としてはあまり応援しない。真ん中が、ちょっと応援しましょう。一番上に“徹底”というのがあって、これをやるとピラミッドのように上から下までが見事に動く。『(徹底の指示)下りたよ』となれば、翌日からまったく変わる。学会員のタクシーの運転手が『調子はどうや?』と話しかけてきたり、手を振ってくれる人が増えたり、目に見えて変わってくる」と相互推薦で得られる公明党の選挙協力の大きさについて説明した。
すると青山氏は「それだけやってやってるんだから配慮しろよ、というのが公明党の考え方。一方、自民党側からすれば、アナタたちは私たちと連立組んでいるから政治に関与して、与党で給付金もらったりできるんだから、そうは言っても(連立から)出ていけないでしょと甘く、足元を見ている部分がある。それが透けて見えるので、緊張関係が高まってきてしまうという状況だ。加えて高市さんは割と保守的な政策を掲げている。憲法改正に加え、敵基地攻撃能力を持つという話もしている。公明党は平和の党ということを掲げてきたので、そういう政策を前に出されると婦人部の反発が強くなる」などと述べ、自民党の公明党に対する配慮不足が相互推薦の見直しに至ったであると補足した。
「自民としては、どこかのタイミングで公明党と離れても大丈夫という考えがあるのか」
そのように問われた青山氏は「選挙の話もあるので、そこまでは考えていないと思う」としながらも「維新の会がわりと力をつけてきており、どちらかといえば右派。公明党と反対側にいる。国民民主党も自民党に接近する素振りを見せている。そっちに乗り換えてしまうということは将来的になくはない選択だが、そういうことが、公明党をイラつかせる原因にもなっている。逆に選択肢を広く持っていることが、今の自民党の余裕を生み出している。憲法改正で協力するというのは、連立組み換えに近いような大きな政策。こういったことで不満が溜まってきて亀裂が深まると現実味を帯びてくる可能性もある」と持論を展開。
その一方で「目の前の参議院選挙に勝たないと自分の身が危ない。(山口代表と)ランチをするにも、前さばきがあってトップがあるというのが望ましいが、いきなりトップがあっても難しい。党内からも『いきなり会っても岸田さん可哀そう』という声も上がっているほど、岸田さんは困っている」と述べ、岸田総理の難しい立場、心中を推察した。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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