多くの人たちの努力もあり、近年オープンに議論することができるようになりつつある「生理」の問題。一方、月経が完全に止まってしまう「閉経」については、日本人女性の平均的な閉経年齢が50.5歳であることから、“歳を取ったから”というネガティブなイメージもあってか、話題に上る機会、知る機会は限られている。
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■更年期という言葉にいいイメージがない理由
産婦人科が専門の高尾美穂医師は「閉経というのは卵巣機能の終了であり、血液検査でも知ることはできるが、自分で認識する方法としては12カ月間生理がこなかったことを確認し、最後の生理の時点をもって閉経とみなす」と説明する。
「つまり、簡単に言えば“後付け”だ。そして、その前後5年間ずつの合計10年間を“更年期”と呼ぶので、“更年期”のスタート時点もまた、“後付け”ということになる。だから平均が50.5歳とすれば、更年期も平均的には45歳〜55歳と考えられるが、実際には人それぞれなので、40代に入ったら更年期が始まっていると考えて準備していてもおかしくはない。
一方、更年期という時期は全ての女性が迎えるわけだし、更年期症状も全体の6割弱が経験するとされている。そして、中には治療しないと生活がしんどい、更年期障害が出る方もいる。更年期、更年期症状、更年期障害、この3つの言葉はそれぞれ違うものを指しているが、更年期障害がイメージされてしまうので、更年期という言葉自体にもいいイメージがないのだと思う。
また、生理自体の重さではなくて生理前の不調をPMSといって、メンタル的にアップダウンするとか、むくみが強いといった変化の両方を4分の3の方が経験するといわれている。これが重い方は更年期の症状も重いということが分かっている。ただ、対策方法があるのでそこはそんなに心配しないでほしい」。
高尾医師が説明する通り、実際には30代で閉経した人も少なくないのだ。
■30代の100人に1人が「早発閉経」している事実
「38歳のとき、ひと月に生理が2回来て、“あれ?”っと思った。実はさかのぼると、それまで27、28日周期だったのが少しずつ短くなってきていた」。イラストレーターのたかはしみきさんは、39歳のときに閉経であると診断された。それまで生理不順などもなく、35歳で1人目を出産、2人目を望んでいた時期だったこともあり、産婦人科で血液検査を受けたところ、卵巣に関わるホルモンの値などが閉経後の数値になっていることがわかった。
「まさか自分が…という。信じたくない一心で、メチャクチャ不安にはなるんだけど、“違う違う、自分じゃない自分じゃない”って、情報を集めながら、必死に打ち消すという感じだった」。しかし医師からは「なりかけではあるけど…、“早発卵巣不全”ですね。早発閉経ともいいます」と告げられる。40歳未満で卵巣機能が低下、月経が来なくなる症状だった。その後、専門の病院で本格的に不妊治療を試みたものの、精神的、経済的な理由から、約1年半で断念した。
高尾医師は「一般的には30代半ばで生理が不順になったり、来なくなったりした方が婦人科にかかり、血液検査で調べたら卵巣機能の数が閉経に近い数字だねと指摘され、初めて気が付くというケースが多いように思う。早い段階で分かれば、いわば卵子の在庫がある状態なので、それを取っておけばどうにかなるケースもある。また、(早発閉経の)原因が分かるのは1〜2割で、遺伝子的な問題がある場合。多くの方は分からない」と説明する。
また、早発閉経は30代の100人に1人、20代の1000人に1人がなるとされているが、あまり知られていない。
30代での不妊治療中に早発閉経と診断されたサチコさんは「“閉経の数値ですよ”と言われたが、意味が分からなくて。閉経というのは50前後の女性が考えることという知識しかなかったし、望まない妊娠はしないようにということは考えてきたが、その逆のパターンについては全く考えてこなかった。それでも、もうちょっと知識があったり、専門的な不妊治療を受けたりしていれば、妊娠することもできたかもしれない」と後悔の念をにじませる。
「私も32歳で結婚するまで生理不順はなかったが、1年経っても妊娠することがなかったので産婦人科を血液検査の結果、50歳くらいの数値だと言われた。ただ、月経は定期的にあるし排卵もあるようだから一般的な治療から始めようということになった。ただ、1年続けてもダメだったので、ネットで調べて体外受精を専門に行っている県外の病院で高度な治療を始めた。それでもやはりうまくいかない。その頃から、もしかして自分は早発閉経なのではないかと疑い始めた。そしてホルモンの数値を調べるAMHという検査を行ったところ、卵巣に残っている卵子の数がゼロに近いという結果が出た。私も、原因については“分からない”と言われた」。
■安藤美姫「閉経については知らなかった」
16日の『ABEMA Prime』にMCとして出演していたフィギュアスケート元世界女王の安藤美姫も「私の場合、アスリートである前に一人の女性なんだよ、現役生活を終えた後の人生も大事にしなさいと言ってくれる人が周りに多く、ホルモンバランスや生理不順のことなどについては勉強もした。ただ、閉経について詳しいところまでは知らなかった」と話す。
「私たちアスリートは、一般の女性に比べて生理が始まるのも遅く、私も中学校3年生の冬だった。しかも19、20歳ごろまでは生理が2週間続き、量がすごく少なかったので、婦人科のクリニックに行って検査してもらったこともあった。先生には“子宮が女性としての機能を果たすまでに育ち切っていないから不順なのかもしれないよ、でも、1年くらい経てば子宮が育って、生理も1週間以内におさまるようになるよ”と言われた。実際、1年後そうなったが、こうしたことは閉経とも関係するのだろうか」。
高尾医師は「初めて生理が来る年齢は、身体の組成の中の脂肪量に関係がある。脂肪細胞が作るレプチンというホルモンが卵巣の機能をスタートさせるので、ある程度の脂肪量がないと来ないということになる。アスリートの中でも、特に審美系と言われるフィギュアスケートや新体操の方々が初めての生理が遅いということはよく知られているが、これもそのためだ。安藤さんについても、フィギュアをされている方の中では非常に安定している方ではないか。ただ、生理が終わるのが遅くなるのかといえば、それは関係がないということが分かっている。つまり、生理が早く来たら早く閉経するということもないし、逆に遅く始まったから遅くまで生理があるということもない」と回答した。
■「妻が更年期になったとき、どうすればいいのか…」
テレビ朝日の平石直之アナウンサーは「女性も知らないという方が多いのと同時に、男性からすると、触れること自体が失礼なんじゃないか、という思いもある。だからこそ更年期の議論ができないわけで、リテラシーが必要だと思った」、オンラインサロン『田端大学』の田端信太郎塾長は「自分の妻が更年期に入った可能性ある場合、どういったコミュニケーションやサポートをすればいいのか」とコメント。
慶應義塾大学の夏野剛特別招聘教授も「こればかりは我々の想像を絶する世界だが、妻からは“あなたは全然理解していない”とか“更年期の辛さは分からないんだから”みたいに怒られつづけて10年になる。“言わないが察して”、みたいなのが一番辛い」と明かす。
サチコさんは不妊治療の際の夫との関係について「私の夫は非常に“昭和”なタイプで、あまりそういうことには立ち入りたくないという感じがあったし、治療に関しても協力的な方ではなかった。だから基本的には私が言ったことを理解するという範囲にとどまっていた」と振り返ると、LINEを使った更年期向けサービス『よりそる』を運営する高本玲代氏も「更年期ですごく体調が悪くなった頃、本当に夫婦不和になってしまった。医療に繋がるということはもちろんだが、どうやってこの時期を乗り越えられるかなと考えると、やっぱり家族の協力が必要と感じた」と、立ち上げのきっかけが自身の夫婦間のコミュニケーションに課題を感じたことだったと話した。
「職場でも、女性自身が知らないという問題があることと、男性の上司に分かっていてほしいという問題とがある。男性としては触れられないという問題がある。そこのギャップをどういうふうに埋めていくかを企業研修で提供し、コンセンサスを図ろうという話ができるように持っていけるかが課題だ」。
一方、安藤は「日本の女性は恥ずかしがり屋だったり、言い出せなかったりする人がすごく多い。でも、そういう女性だけではないということは男性の皆さんにお伝えしておきたい。小さなコミュニケーションのところで探っていきながら、この人は大丈夫とか、この人は気にしているということは、お付き合いの時点で話せば分かると思う」とアドバイス。
高尾医師は「生理前でイライラしているとか、生理痛で辛いとかと同じで、ざっくり、“体調が悪い”ということでいいと思う。みなさんも、お腹が痛いといったことがあると思う。体調が悪そうであれば、私たちは配慮をするし、それはパートナー同士でもそうだと思う。自分では調子が悪い理由が分かっている。でも、それをオープンにするかしないかはその方のキャラクターということでいいと思う」と話していた。(『ABEMA Prime』より)
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