履修主義が残ったまま? 早稲田大学の“落単騒動”にひろゆき氏「教員側の問題では」
【映像】同時視聴は不正行為? 早稲田大学で100人“落単”で物議
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「2つのウィンドウを開いて、同時視聴をしている状態です」(早稲田大学商学部1年生のスズキさん ※仮名)

 同じ画面で複数の動画を同時に視聴――この行動が今、波紋を呼んでいる。

【映像】早稲田大学「我々は大変がっかり」 実際の通達文(8分ごろ〜)

 早稲田大学の商学部では、必修科目の「ビジネス法入門」が新型コロナウイルスの感染対策でオンライン授業になっている。期限内におよそ40本の授業動画を視聴することで出席扱いとなり、これが単位取得の条件の一つになっていた。

 しかし、授業動画を同時に再生している学生を確認した大学側は、不正受講として、同時視聴したおよそ100人に単位を認めないと通知。Twitterでは、学生への批判や擁護のほかに、大学側のシステムの問題を指摘する声が上がっている。

 スズキさんも同時視聴していた学生の一人だ。大学の通達に対し、ニュース番組『ABEMA Prime』に生出演したスズキさんは「内容を全く理解しないで、授業を受けたテイになってしまうという状況だったのは真摯に反省している。今回落単してしまうのも仕方ないとは思います」と話す。同時視聴の方法は「周りから聞いていた」といい、倍速視聴の話も聞いていたという。また、事前に大学から「同時視聴はダメ」というルール提示はなく「(出席認定の条件は)すべての動画視聴を終えるというだけだった」と答える。

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 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は「倍速再生は(大学側から)用意されているのか?」とスズキさんに質問。スズキさんは「Waseda Moodle(※早稲田大学の授業支援システム)で2倍速までできる。春学期に実際に単位を取得した人が『Google Chromeに一旦サイトを移動すると32倍速までできる』と言っていた」と回答。スズキさんによると春学期に32倍速で視聴し、実際に単位を取得した人がいたという。また、テストについては「過去問とほぼ同じ問題。動画を実際に見なくても、過去問をしっかり対策していれば、単位は必ず取れる状況だった」と話す。

 スズキさんの回答にひろゆき氏は「そもそもテストで過去問と同じ問題が出るなら(教員は)めっちゃ手を抜いているじゃないか」と指摘。「ちゃんと毎回毎回違う問題を作っていたら、きちんと授業を受けないと分からない。だから『ちゃんと受けよう』と思うわけだ。同じ過去問で楽して作業しておいて、学生の責任にするのは教員側の問題ではないか?」と疑問を浮かべた。

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 早稲田大学の卒業生でもある放送大学教授の辰己丈夫氏は「修得主義」と「履修主義」の違いに言及する。

「大学は教育的には『修得主義』といって、授業を受けていれば必ずしも単位がもらえる場所かというと、本来はそうではない。ペーパーテストもそうだし、例えば制作物を作って作品を作って提出して、自分の成果で評価される場所が大学だ。ただ、小学校や中学校はまだまだそういうことができないので『履修主義』といって『勉強したらとりあえずいいよ』ということになっている。大学は本当は修得主義じゃないといけないのに、履修主義が残ってしまっている。そこがよくないと個人的に思う」

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 その上で辰己氏は「今回の早稲田大学の件は、学生の皆さんへの説明が足りていないことが一番大きい」と話す。

「放送大学はもともと通信制の大学で、ある意味、修得主義だ。もちろん授業は全部見てほしいが、録画して見てもらっても構わない。授業の動画の中に入っていることだけを聞くテストもあって、そうすると見ていないと答えられない。放送大学の試験問題は毎学期、全て違う。(その科目の担当教員が)問題を作っても、他の先生に査読をしてもらわないと、出題できないけっこう厳しい仕組みがある。普通の大学だと、ここまでやらない。査読に出さないでテストに出している」

 問題になっている早稲田大学の科目では、過去の学期に同時視聴した人については“おとがめなし”の状況だ。過去に同時視聴していた学生の一人である同大学商学部に在籍中のサトウさん(※仮名)は、「たまたま私のタイミングじゃなくてよかったなと冷や汗をかいた」と心境を告白。また、今回の大学側の対応については「突然レッドカードだった印象がある。事前の忠告があってもよかったのではないか」と述べ、「今回の先生は分からないが、他の先生で昨年度からずっと同じ動画を使い回している先生もいらっしゃる。先生側も手抜きだったりするのに、学生側には真摯な姿勢を求められるのは不満に思う」と語った。

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 早稲田大学は、そもそも「ビジネス法入門」という科目を学ぶ目的について「ビジネスの世界において、法令遵守、コンプライアンスが重要であることを学び、将来万が一にも就職先の企業等において、企業の信用失墜、破綻、損害賠償責任の負担、刑事責任の発生をみなさん自身が起こさないようにという意味も込めて、早稲田大学商学部の必修科目になっている」としている。

 これにひろゆき氏は「社会人として言わせていただくと、同時視聴の仕組みがあるにもかかわらず、等倍でずっと時間かけてダラダラ聞いているような無能はいらない」と一刀両断。「むしろ同時視聴で2つのことをちゃんと把握できる人の方が学習能力高い。そういう人の方が社会人でも伸びる」と持論を語った。

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 辰己氏は「先生を擁護するわけではないが、一流の研究者だ。研究者の先生であって、しゃべるのがうまいわけじゃない」という。

「大学の先生は“研究がうまい人”が揃っている。本当は大学もこれから5年、10年で変わっていかないといけないと思うが、その観点で言うと、研究者の先生をうまくプロデュースして、番組というか動画に仕立てていく役の人が必要だ。言い換えれば大学をもっといじらないといけない。教育のプロと研究のプロが一緒になって授業していくように、変えなきゃいけない。日本の大学はそういう点ではまだまだ古いものを引きずっている。1〜2年じゃ変わらない。ゆっくり変わっていくのではないか。放送大学はテレビ局を抱えているので、ちゃんとした動画をもともと作っていたが、なんたって新型コロナが来て、いきなり1カ月2カ月で世の中を変えなきゃいけなくなった。そこに急に追いつかなくてはいけなくなったことは、ある意味不幸だなと思う」

 入試がない放送大学では「8年間ずっと居て、やっと卒業する人もいる。敷居の低さの一方で、テストはものすごく厳しいので、卒業は簡単にできない」と話す辰己氏。また、ここまでメディアを使って授業する大学では珍しく「今後は放送大学のような大学がもっと増えてくるのではないか」と見解を語った。

 コロナ禍で起こった早稲田大学の“落単騒動”。原点に返って、大学の存在意味や授業の価値について考える必要がありそうだ。(「ABEMA Prime」より)

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