どんな一言が、人の縁になるかわからない。将棋の世界でもそれは同じだ。「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持ち、最年長でのタイトル獲得記録を持つ人気棋士・木村一基九段(48)には1つ、おもしろくもありがたい思い出がある。「飯島栄治って人、知ってる?」。同じく棋士の飯島栄治八段(42)のことだが、この2人をつなげたのは、飯島八段が奨励会時代に木村九段に聞いた「すっごく筋の悪い手」だった。
木村九段は2月19日に行われた棋王戦五番勝負の第2局、渡辺明棋王(名人、37)と永瀬拓矢王座(29)を解説。聞き手の小高佐季子女流初段(19)と、軽快かつわかりやすいトークで、視聴者に対局の模様を伝えていた。ふと記録係についての話題になると、木村九段の頭に飯島八段の顔が浮かんできた。
木村九段 飯島栄治って人がいるの知ってる?私が四段の時に彼が奨励会で記録を取ったんですよ。その時に「木村先生、この手はどうですか」って聞くんです。
対局後、記録係が感想戦の最中に質問をしてくることは珍しくない。ここから棋士もヒントを得て次に活かすこともある。ところが、この飯島八段の指摘に木村九段は驚いた。
木村九段 その手がね、すっごい筋が悪いんですよ(笑)。驚くくらい。ところが、よく考えてみると、いい手なの。
考えもつかない筋悪の手も、勝負となれば好手。こんなことを考える若者に、興味を持った。
木村九段 今度将棋を指してみましょうかって(誘った)。それが続いちゃってね。飯島さんの筋がよかったら、こういう縁はなかった。私にとってもプラスになった。何がどうなるか、わかりませんよね。
2人の付き合いはここから始まり、20年を超える月日の研究仲間となった。
木村九段らしいユーモアを交えたエピソードに、視聴者からは「凄くないですか」「すっごい筋が悪いw」「これがVSに繋がるなんて」と、笑いに満ちたコメントが多数寄せられた。
(ABEMA/将棋チャンネルより)