タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す
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 約35年前、日本人から技術を教わったタイ人の男性が、新型コロナウイルス禍に一家で独自の「和ぼうき」を生み出した。日本にも渡り人気が広がり始めている。

【映像】“タイ産和ぼうき”の製造工程

 いわば“逆輸入”を果たした同商品。その背景や製作過程について、現地で取材したANNバンコク支局の西橋拓輝支局長が伝える。

■約70人が手作り、日本への出荷も

 青や赤に黄色と、鮮やかな色。形も長い柄のついたものから手で掴むことができるサイズのものまで様々だ。デザインの中には確かな技術が光っている。

 タイ・チェンライ県で、2つの和ぼうき工場を営むソンブーンさん(72)。もともとは農家だったが、1986年、知人の勧めでほうき作りを始め、そのすぐ後に和ぼうきの世界に飛び込んだ。

タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す

 「私のほうき工場の前を車で通りすがった日本人男性が話を聞きに来たのです。それを機に日本式のほうきの作り方を学びました」(ソンブーンさん)

 男性は日本の和ぼうき販売会社の関係者で、以前からタイでの生産者を探していたという。ただ、この時は仕事ではなくプライベート旅行の最中で、ソンブーンさんとはまさに偶然の出会いだった。

 草を束ね、整え、紐できつく縛り上げる。ソンブーンさんの工場では、創業時から一貫して全ての工程を手作業で行っている。工場で働くのは、タイ人や少数民族のアカ族の人たち合わせて70人ほどで、1日にできるほうきは約700本。和ぼうきを作り続けて30年以上が経つ間に、丁寧で確かな技術が評判を呼び、注文も増えた。ここで作られた和ぼうきは日本の大手ホームセンターにも出荷されている。

 気がつけばソンブーンさんも70歳。そんな新型コロナ禍の2020年に大きな出来事が起こった。大学でデザインを学んだ娘と社会に出てウェブマーケティングを身に着けた息子が、高齢の父を気にかけ家業を手伝うようになったのだ。「子どもたちが手伝ってくれるとは思ってもいなかったです」とソンブーンさん。

タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す

 そこから試行錯誤の上に、パッと目を引くカラーと洗練されたデザインが加わった、インテリアとしても映える独自の製品が生まれた。また、これまでのように受注して納品するスタイルではなく、タイ産の和ぼうきブランド「Baan Boon」としてSNS上で積極的に売り出すようにもなった。

 神奈川県・横須賀市で雑貨店「MERAK」を経営する山岸真理さんも、SNSを通じてBaan Boon製品に魅了され、取引を決めた1人だ。入荷したほうきの売れ行きは上々だそうで、山岸さんは「日本和ぼうきとして買うというよりも、ただほうき自体がかっこいいという印象で手にとってくださる方が多いと思います」と話す。

 山岸さん自身はタイで生まれたほうきをきっかけに、伝統的な和ぼうきの魅力に気づいたという。「日本和ぼうきについて知ってはいたんですけど、正直、手に取って自分で買うっていうところに今まで至っていなかった中で、タイの人から日本のものを教えていただいたような気持ちです」。

タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す

 子どもたちの活躍を受け、ソンブーンさんはタイ産の和ぼうき作りにさらなる意欲を湧かせている。

 「和ぼうき作りに、この先も明るい未来があると思えました。今後もより良いほうきを作っていこうと思います」(ソンブーンさん)

■「すごく誇らしい」 販路拡大でスタッフらのやりがいにも

 Baan Boon製品を扱っているバンコクの雑貨店から、西橋支局長が伝える。

タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す

Q. Baan Boon製品の値段は?
 Baan Boonだけのコーナーが作られていて、様々な種類のほうきやちりとりもある。小さいものは1本800円ぐらいで、長いほうきは1本2500円ほど。屋台でカオマンガイやガパオなど食事を購入すると1食だいたい50~60バーツ、200円程度なので、タイの物価としては結構高めではある。

Q.ソンブーンさんはほうきの原材料をどう手に入れている?
 ソンブーンさんの工場があるのが北部のチェンライで、ここはミャンマーとラオスの国境に接している場所にある。タイ北部は広大で肥沃な土地があることから農業が盛んで、ほうきの原材料の草ももともと育てられていたようだ。

 ただ、ソンブーンさんの場合は既存の農家から草を買い取っていない。ソンブーンさんの工場がある辺りは小さな集落で、周辺の住民とも親戚のように近い関係。ソンブーンさんがほうき作りを始めた時、台湾から来た人に原材料の草の種を分けてもらったという。その種を周辺の住民たちに配って「ほうき作りをするから草を育ててくれ」とお願いした。なので、ソンブーンさんは創業時から、草作りから自分のほうき作りまで本当にゼロの状態から作ってきた。

タイ産の製品が日本に“逆輸入” 35年前に教わった技術、コロナ禍に一家で独自の「和ぼうき」生み出す

Q.今もそれは変わっていない?
 今も変わっていない。草を作ってくれていた人も代替わりして子ども世代になっている人たちもいるらしいが、その方たちもソンブーンさんのために草を作っている。そういう意味で、ソンブーンさんが気にかけているのは、自分が仕事を続けていけなくなった時のこと。もし自分が仕事をやめれば、経営している工場の従業員だけでなく、自分の呼びかけで当時一肌脱いでくれた農家の人たち、それを継いで現役で働いている子どもたち、さらにその家族の生活が立ちいかなくなってしまう。そんな中で、娘と息子がほうき作りの手伝いを初めてくれたことに安堵していた。

Q.販路が広がったということで、働いている職人、スタッフにやりがいも?
 販路という点では、ソンブーンさんが作っていた伝統的な和ぼうきの時代から、日本を含めてスウェーデンなどの国とも取引があったという。今回大きかったのが、Baan Boonというブランドを作って、インターネットで販売したこと。これまでに届いていなかったお客さんにも届いていることについては、皆さん「すごく誇らしい」と思っているということだ。

ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)
 

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