「“死に様”で評価してもらいたい」元ヒューザー小嶋社長が語った政治と行政への不信、被害に遭ったマンション購入者と亡くなった仲間への想い
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 「“生き様”では失敗した分、“死に様”では評価してもらいたいと考えて」。脱炭素社会の実現に向けて再生エネルギーが注目される中、太陽光発電に取り組む男性。17年前、「構造計算書偽造問題」の中心人物の一人として報道された、元ヒューザー社長の小嶋進氏(68)だ。

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 問題が発覚したのは2005年秋のこと。一級建築士の男性が安全性に関する「構造計算書」を偽装、これに基づき建設された、建築基準法の定める耐震強度に達していないマンションが販売されていたことが発覚。小嶋氏も翌年「マンションの強度不足を知りながら4億円超で顧客に引き渡した」として詐欺罪で逮捕される。同年、ヒューザーは破産。小嶋氏自身も、2011年に最高裁で懲役3年・執行猶予5年の刑が確定した。

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 「これがロサンゼルスで飛行機の操縦を習っていた頃の写真」「当時、中古で3000万円程度だったと思う」。飛行機操縦を趣味にし、プライベートジェットで国内外を飛び回っていた小嶋氏だったが、飛行機はもちろん、自宅も、そして家族までも失ったという。

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 「何が一番ショックだったかといえば、連日連夜、全国放送で“悪人”の風を吹かされたので、北海道に行こうが沖縄に行こうが、サウナ風呂に入っていても“あっ”と言われてしまう。顔を隠して生きなきゃいけない、そういう状況だった。本当に自分が悪いことをした、犯罪者なんだという気持ちであれば、とても生きてはいられなかっただろうと思う。私の対応が間違った結果、気持ちの弱くなっているところにマスコミが殺到して追い込まれ、犯罪者でもないのに責任を感じ、入水自殺などで2人の仲間が亡くなっている。だから今日も僕は黒いネクタイを締め、弔意を示して臨んでいる」。

■「はっきり申し上げて、国の制度が働いていなかったということ」

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 そんな小嶋氏には、今も納得のいかないことがあるという。一つは、自身が耐震偽装の事実を知った翌日にマンションの代金を騙し取ったとされたこと。偽装を知った当日のものとされる電話の音声データで小嶋氏は、「ご苦労さん。売れてないやつに関してはさ、(A建築士)構造のやつはとりあえず販売中止。まだ引き渡してないものに関しては、金を返して解約の準備をするように進めて、その一覧表を作ってくれや」と部下に指示をしている。しかし、裁判でこれが証拠として採用されることはなかった。

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 「平成17年10月27日の午前11時から約3時間、確認検査機関との打ち合わせが行われた。その場で、この建築士が扱ったものについてはダメなものがあるらしいから、確認が下りていても、全部もう一回やり直してもらえという話をした。そして、部下に対しても販売中止の指示を出したものの、引き渡し期日は翌28日に迫っていた。営業の責任者の方からすれば、契約をしている以上、引き渡ししなければならない。行政機関からの命令がない限り、法的にも止めることは簡単ではなかった。

 音声データにある私との会話について、営業の責任者は裁判の中で、“丸々覚えていない”という言い方をした。検察官によると、“朝早くから十何時間も雪隠詰めを食らってとても大変なんだ”ということだったので、気の毒だなと思った。逆に“社長、私はちゃんと藤沢の物件の引き渡しをしていいですかと聞きましたよね?”と聞かれたが、私にはその記憶が全くなかった。やはり現場サイドとしては、検済(けんずみ)も下りている、ローンも通っているということであれば、“引き渡ししていいですか”という稟議はないわけで、そのままルーティンで引き渡しをしてしまった、ということだ。ただし、その後は全て解約し、一切販売しなかった」。

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 もう一つが、確認検査制度が全く機能していなかったということだという。実は着工前に行われた、国指定の検査会社や自治体によるチェックの過程で、構造計算書の改ざんが見過ごされていていたというのだ。

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 「そもそも、耐震基準値が1だったとしても、地震の少ないところであれば0.5でもいいのではないか、あるいは500年に1度、1000年に1度の揺れに耐えられるようなものを作るのは経済的に無理だ、といった提言をすることができる。そこでソフトの方は、10必要なのに対して8でも7でも3でも計算ができるようになっていた。つまり、自動計算で合格が出たからといって、基準値に合った形ではないということだ。

 しかし国の、特に大臣認定のプログラムを使った場合、入力した部分と、自動計算が行われた結果、ワーニング(警告)もない、問題はないという“合格”に関する部分だけを申請すればいいという『図書省略制度』が適用されていた。そして確認・検査する側がチェックをしていなかったことで、中身の改ざんや偽装が行われた“まがい物”が通ってしまっていたようだ。はっきり申し上げて、国の制度が働いていなかったということだと思う」。

■「お客様に胸を張ってもらえるよう、生きている間は頑張りたい」

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 また、比較的安価な物件を手掛け、平均専有面積で日本一の記録を6年連続更新した実績から、偽装は建設費のコストダウンを狙ったのではという憶測も流れた。こうしたことへの苛立ちからか、逮捕前の国会での参考人招致では、「国交省もいい加減にしてほしいですね!まったく!」「何言ってんだよ!ふざけんじゃねえよ!馬鹿野郎!」と声を荒げ、その様子が繰り返し報じられた。

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 「確認検査機関の社長が“心の犯罪である”とか“一番儲かるのはディベロッパー”だと言ったり、自分たちの確認検査ミスを棚に上げて、“身の危険を顧みず乗り込んで正しに行った”と、私たちに罪をなすり付けたりしてきた。それを黙って聞いているわけにいかなかったので、国交省から配られた資料で“何を言っているんだ”というふうに、自分の足をひっぱたいたこともあった。自分の感情を抑えきれなかったということに関してはバカだったなと。周りからどのように判断されるのか。その辺を考えて行動すべきだったが、そのような配慮が全くできず、反省している。

 ただ、役人の不作為というか、中途半端に野放しにしたことが全てではないかなとも思う。しかし役人には無謬性があるというか、悪いことをしたからと言って“ごめんなさい”と謝るわけにはいかない。そこは民間人になすり付けてでも自分たち立場を守るというのが役人の正義だ。そんな事件だったのではないか」。

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 こうした小嶋氏の主張について、元経産官僚の宇佐美典也氏は「国交省に限らず、本来は国が行うのではないかという確認検査の仕事を民間に委ねていく流れがある。しかし、そこで間違いがあった場合のリスクを誰が負うのか。国は“民間がやったことだから”と言い、民間は“定められた手順でやっただけ、確認しただけだから”と言う。そして民間であれば効率化して儲けを出すことを目指し、確認を簡略化して、件数をこなそうとするだろう。この事件も、根本的な問題は制度設計のミスなのに、それを有耶無耶にするために小嶋さんを悪者にしようと政治全体が動いたのだろう。小嶋さんに責任がないとは言わないが、犠牲になった面も間違いなくあると思う」と指摘した。

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 それでも最大の被害者は、マンションの購入者たちだ。新居ではなくホテルやアパートでの暮らしを強いられ、心労で倒れる人もいたという。

 その点について尋ねると、小嶋氏は「そこのところが私にとっての忸怩たるところだ。結果として信頼して頂いた方を裏切ってしまった、守り切れなかった。そこに関しては万死に値すると思っている。また、執行猶予付きとはいえ小嶋進が有罪のまま死んでしまえば、引き渡しを受けたお客様は“変な会社から安物を買ってしまったからそういう思いをしたのだ”といった風評被害を受けたままになってしまう。それは払拭していかなければならないし、お客様が“自分は良いものを選んだんだ”と胸を張って言ってもらえるよう、生きている間は頑張っていきたい」と語る。

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 そして取り組むのが、冒頭の太陽光発電だ。「全ての信用を失ったので、できることをやるということだ。分譲マンションなら一つの現場で10億、20億とかかるが、太陽光であれば1500万〜2000万くらいでできる。それから、私は東北生まれなので、福島第一原発事故に対して反原発の草の根運動という意味合いも兼ねている。あともう一つ、お墓を作っても、多分孫たちは拝みにこないだろが、これなら“お前にあげるから”と言えば、雑草を刈りに来てくれるお墓代わりになるかなとも考えている」。(『ABEMA Prime』より)

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