シェアハウスに住む大人たちの中に、子どもが一人。栗山醍慈くん(4)だ。生まれて以降、両親だけでなく14人もの“同居人”と共同生活を送ってきた。
醍慈くんが暮らすのは、隣り合う2棟の住宅からなるシェアハウス。もともと別々のシェアハウスで生活していた父・和基さんと母・奈央美さんが結婚を機に自分たちで立ち上げた場所だ。両親としては、自分たちが手を離せない時に醍慈くんの面倒を見てくれる同居人が大勢いることは心強いという。
「みんながおしめを変えられたり、ミルクを作ってあげられたりする状態なので、何かあっても大丈夫って、セーフティーネットのような安心感がある」と和基さん。奈央美さんも「基本的には私たちが面倒を見ているが、隙間に遊んでくれるのがすごく助かっている。“筋肉発達しましたね”とか“まつ毛伸びましたね”みたいに、ちょっとした変化に気づいてくれる。それって、たまに会うだけのおじいちゃん、おばあちゃんでは難しいことだと思う。そういう話をしながら一緒に喜んでくれるのが嬉しいです」と話した。
一方、醍慈くんにも良い影響があったという。「普通の夫婦は家の中で敬語を使うことは少ないと思う。それがシェアハウスだと、学生は社会人に対して敬語を使うことが多いので、醍慈くんはそれができるようになった」(和基さん)。
■シングルマザーや高齢者には恩恵も
慶應義塾大学SFC研究所の福澤涼子・上席所員はシェアハウスの住人を研究する中で、自身も夫と娘、さらに大学院時代の知人女性、専用のマッチングサービスで知り合った外国人の男性と共同生活を送っている。「自宅が3階建てなので、1階は2人に貸し、3階を自分たちのスペースにし、2階は共有スペースにしている」。
福澤さんも、同居人が子どもの面倒を見てくれる時間がありがたいと話す。「育児に関して特に取り決めがあるわけではないが、一緒に暮らす中で遊びたいとなったら相手をしてもらうという感じの関わりだ。それでも、家事や自分の時間が作れるので、すごく有り難い。娘としても家族以外の方、外国人の方と身近に接することで、価値観が少しずつ変わってきていると感じる」。
一般社団法人HAHAが運営するシングルマザー向けの住宅と老人ホームがウッドデッキで繋がっている「育児シェアハウス」は、国交省の「人生100年環境整備モデル事業」にも選ばれた先進的な取り組みだ。
代表の伊藤敬子さんによると、居住する2組のシングルマザーは、賃貸料のみで食事付きの育児サポートを受けられるという。「本来であればベビーシッターのスタッフなどを雇わなければ成立しないサービスだが、高齢者のためにご飯を作ったり、掃除をしたりするスタッフがカバーしてくれる」。
一方、シングルマザーの側も高齢者たちの暮らしをボランティアでサポートする。「高齢者にとっては、若いシングルマザーや、未来を担う小さな子どもたちを支えているという生きがいにつながる。利用料も、単に自分たちが長生きするためだけに払っているお金ではない、という感覚があると思う」。
■子どもが小学生低学年になるとやめるケースも
一方、こうした取り組みにデメリットはないのだろうか。
前出の福澤氏は「シングルマザーの場合、経済的な課題のほか、DV被害に遭って逃げてきたといった精神的な課題を抱えているケースもあるので、単に箱だけ準備して、“じゃあここに住んでもらって、助け合ってくださいね”、というだけでは厳しい。運営者の側が疲れてしまって廃業してしまうケースもあるので、抱え込まず、様々なサポートを得ながら運営していく必要がある」と話す。
「また、子どもが小学生低学年のうちにやめてしまうケースも多い。逆に言えば、課題があった時に簡単にやめられるのもシェアハウスのメリットだ。逆に言えば、課題があったとき時に簡単にやめられるというところもシェアハウスのメリットだ。もちろん、住人に出て行ってもらわなくてはいけないので、人間関係が悪くなるんじゃないかという心配でやめられない、始められない、ということもあると思う。それでも、これが家族や嫁・姑のような関係であれば、本当に出ていってもらうことは難しい。他人だからこそ、しっかり話し合うこともできる。その意味では、これからが楽しみだ」。
出産や不妊治療といったテーマに特化したウェブサイト「UMU」西部沙緒里代表は「私自身、子どもが生まれるまでは自宅をシェアハウスに改造して人を受け入れていた。夫がだいぶ変態で(笑)、まさかの新婚1年目からの“住み開き”で、外国人のバックパッカーを受け入れていた。あまり詳しくは話さないでおくが、トラブルも全くなかったわけではない。それでも“拡大家族”の社会実験みたいなつもりだった」と話す。
その上で「育児シェアハウスの懸念点は、中長期で見た時の、お子さんへの成長への影響だ。学童でも塾でもなく自宅という“閉鎖空間”に他人が常にいて、なおかつ顔ぶれが入れ替わることもあるので、“心理的安全性”の観点から影響はどうなのかということは、あまり語られていないと思う」と指摘していた。(『ABEMA Prime』より)
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