空の楽しみの1つ、「機内食」。新型コロナウイルスの感染拡大で乗客数が大きく落ち込む中、全日空(ANA)が半年以上かけて新たに開発したメニューの裏側に『ABEMA NEWS』は密着した。
去年12月、羽田空港の一角で、新たなメニュー決定に向けた最後の試食会が行われた。テーブルに並んだ、「焼肉丼」「カツ丼」の2つのどんぶり。使われているのは、どちらもおからとこんにゃくを使った代替肉だ。
健康や環境への意識の高まりから市場を伸ばしている代替肉。全日空でもビジネスクラスの軽食で初めて導入することを決めた。より低カロリー、低糖質なメニュースにするため、使用するご飯にもこんにゃくの粒を半分混ぜることになった。
シェフからの説明が終わると、いよいよ試食の時間。カツ丼の試食時には、「食感がいいです。だいぶ変わりましたよね。1回お邪魔した時、正直いまいちだなと思ったんです。でも、これはぜんぜん違うなと」「味、においもそうなんですが、食感が本当のお肉に近いなと」といった評価が寄せられる。
出来栄えなどから、最終的に採用されたのは「カツ丼」。全日空 商品企画部の龍神早紀氏は「国際線の需要はかなり落ち込んでおりますし、先行きも不透明なところもあります。新しい価値の発信を今のうちからしていって、また国際線にご搭乗いただける日にはぜひ弊社を使っていただければなと考えています」と話した。
■残さを堆肥に→その堆肥でケール栽培→機内食へ
さらに、新しいメニューはもう1つあった。青汁の原料などにも使われる「ケール」。栽培の過程にこだわりがあった。
今月8日に訪れたのは、機内食の工場。和食、洋食などジャンルごとに調理を行うキッチンだが、どうしても出てしまうのが、食材の使いきれなかった部分「残さ」だ。この日も、しいたけの下ごしらえの段階で、軸の部分は生ゴミとして処理される。
食品残さの量は年間約248トン(2019年度)。全日空では2008年から全ての量をリサイクルして堆肥や飼料に変えてきたが、新たな取り組みとして、その堆肥で育てたケールを機内食に取り入れることにした。
ケールを使用したサラダは、エコノミークラスで3月から提供される。
■代替肉への需要の高まりに対応
全日空の新たな機内食を取材したテレビ朝日経済部の中村友美記者に、開発の裏側についてさらに話を聞く。
Q.なぜ今この新メニューを導入する?
ビジネスクラスの軽食は、離陸直後の1食目と到着前の2食目の間に、「ちょっと小腹が空いたな」という時に楽しんでもらうもの。丼ぶりが必ずメニューの中に入っていて、その中に今回代替肉を使ったメニューが投入される。カロリーや糖質が気になる人に選んでもらいたいほか、代替肉については海外のセレブなども取り入れている人が多いようで、そういったトレンドにも応えていきたいということだ。
Q.「代替肉カツ丼」はどの飛行機に乗れば食べられる?
ある程度の距離がある便ということで、カツ丼は日本を出発する北米、ヨーロッパ、インド、オセアニアの路線が対象になる。ケールは国際線の全路線で提供される。
Q.開発で苦労した点は?
代替肉の回りに衣をつけるのが難しいということだった。そのために卵液を多く使っていたそうだが、その点をメーカーと何度も往復して改良を繰り返してきた。あとは食感。限りなくお肉に近づけるよう改良したのがポイントだということだ。
Q.飛行機以外で食べる方法は?
カツ丼の方は春以降、羽田と成田の国際ラウンジでも同じ代替肉を使ったメニューの提供を準備している。また、他のクラスでの軽食ではない料理も含めて、今後展開を検討していきたいとしている。
Q.ケールについては?
リサイクルを請け負っている業者が育てているのがまずケールだったということで、導入を決めたということだった。今回はケールということだが、今後も別の野菜などにも展開していきたいと考えているということだ。
(ABEMA/『アベマ倍速ニュース』より)