「右クロス! 右クロスですよ! 左のジャブに対する右クロス!」。試合時間残り10秒、K-1のレジェンド・魔裟斗が思わず興奮気味に声を上げる衝撃KOに場内が沸いた。
2月27日に東京体育館で開催された「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~第3代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント~」のスーパーファイトで、卜部弘嵩(K-1 GYM SAGAMI-ONO KREST)と島野浩太朗(菅原道場)が対戦。かつてKrushの舞台で死闘を繰り広げた2人の決着戦は、試合時間残り10秒、劇的なKOで島野が勝利を収めた。
じつに7年ぶりの再戦。かつてKrushのタイトルを賭けて死闘を繰り広げてきた卜部と島野は前日会見では互いに「相手を倒すことに集中している」とこの試合への強い思いを語った。近い距離で勝負したい島野と中間距離を好む卜部。さらに一度は前日軽量に失敗した苦い経験のある卜部について、ABEMAでゲスト解説を務めた魔裟斗は「減量がキツかったのでは」と懸念点を挙げる一方で、佐藤嘉洋は3連敗中の卜部に「かつての当て感のいい卜部が戻ってきている」と期待を寄せた。
序盤は一進一退。しかし2ラウンド、徐々に前に出る島野に対して、卜部がローブやコーナを背にする場面が目立ち始める。自らの距離となった島野は、ボディやローでじわじわと卜部の体力を削っていく。
最終第3ラウンド、後がない卜部は近い距離で打ち合い泥臭く勝負に出る。しかし、これを冷静に見極め、引くときは引く島野の落ち着いた試合運びに、佐藤が「卜部が頑張って気合いで出ているんですけど、島野がたまにスッと引いて空転させている。クレバーで冷静ですね」と称賛。
試合は残り30秒、両者“殴られたら殴り返す”渾身の殴り合い。すると、卜部が左ジャブを強振したタイミングに合わせて島野が右クロスを一閃。これをまともに被弾した卜部は真っすぐ後ろに崩れ落ちた。カウント4で立ち上がった卜部だが、体が前後に揺れ、足元はフラフラ。その様子を見たレフェリーが卜部を抱えるように試合終了を告げた。
リプレイ映像を見ると、卜部の左のジャブに対して上から被せるように右を振り抜く島野の“技アリ”の一撃が。これを確認した魔裟斗は「完全にクロスカウンターが入っていた。今のはいいタイミングだったなあ…卜部のジャブに対して右のクロスがガッツリ入りました。島野がこんな器用なパンチを打つのはじめて見ましたよ。不器用な選手で、一生懸命ローを蹴って崩していくイメージだったのが(笑)」と興奮気味に語ると、魔裟斗の言葉に続くように、視聴者からも「こんなきれいなクロスなかなか見れない」「後世に残るKOだった」と称賛の声が寄せられた。
さらに魔裟斗は「真面目にコツコツやる選手ですから。あのパンチもずっと練習してきたんじゃないですか?」と続け、7年越しの雪辱を晴らすべく、着実に武器を磨いてきたであろう島野を称賛していた。