“技アリ”のロングフックからアゴ先を打ち抜く右ストレート。担架投入の“前のめり”失神KO劇にK-1のレジェンド・魔裟斗が思わず驚きの声を上げた。
2月27日に東京体育館で開催された「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN ~第3代スーパー・バンタム級王座決定トーナメント~」トーナメント・一回戦で、金子晃大(K-1ジム三軒茶屋シルバーウルフ)と黒田勇斗(K-1ジム心斎橋チームレパード)が対決。トーナメント大本命として第3代王者に輝いた金子が3ラウンド、黒田をフェイントを織り交ぜた右フック、さらに右ストレートを豪快に打ち抜いて担架投入の衝撃KOを演じて見せた。
まるで実況席に呼応するような試合運びだった。1ラウンド、長身の黒田の距離を縮めながら、徐々に圧力をかける金子。盤石の試合運びも魔裟斗は期待を込めてか、所属ジムの後輩・金子に「力強くていいけれど、入り方がワンパターン。ワンツーが同じパターン」と厳しい意見も。
すると2ラウンド、金子がペースを変えローキックを飛ばす。アウトとインを蹴り分けながら左足を狙ったローが効いたか、黒田がバランスを崩す場面もみられ、徐々に金子の多彩な攻撃が勢いを増していく。
しかし、ここでも魔裟斗はローキックの威力は認めつつも「(金子選手は)パンチの引き出しが少ない」と注文。もう1人のゲストで、K-1スーパー・バンタム級の元王者でプロボクサーの武居由樹に意見を求めると「(ボクシングに比べると)少ないのは感じます。引き出しが増えるともっと楽に戦えると思います」とこちらも金子への要求は高い。
最終3ラウンド、執拗にローを蹴り続ける金子。状況を打開したい黒田が強引に前進してワンツーを放つが、金子がコンパクトなモーションで左フックをカウンターで当て、黒田から最初のダウンを奪う。
試合再開、黒田は左ハイを見せ反撃に出るが、金子は手堅く左足へのローで相手の距離を縮めながら、ボディへのフック、ミドル。じわじわと黒田をコーナーに追い詰めると、キレイな弧を描く右のオーバーハンドフックを一閃した。
この一撃に驚きの声を上げた魔裟斗は興奮気味に「目線をボディに入れて、フェイントしてから打ちましたね」とパンチを放つ際の金子の細かな技術に言及。勢いに乗る金子は、畳み掛けるように左ボディ〜右ストレートでアゴ先を打ち抜くと、黒田は前のめりに崩れ落ち、うつ伏せのまま失神してしまった。
最後の金子のノックアウトシーンについて魔裟斗は「KOの前の右のロングフックが、下を見て打ったんです。それがフェイントになったので、次(2発目)はそのまま行ったことがかえってフェイントになったんじゃないでしょうか」と相手を倒したバリエーションについて言及。すると武居も「(相手にとって)見づらいですね。倒す前に色々なパターンのパンチを出したので、しっかり当たったのだと思います」とコメント。試合前半は先輩ファイターからの注文も多かった金子だが、試合の中で見事に答えを出し、豪快なKO決着を披露した。
一方、ダウンした黒田はしばらく動けず、メディカルスタッフやセコンドが取り囲み一時は担架が投入され騒然に。しかしその後、立ち上がると客席から惜しみない拍手が送られた。圧巻の勝利を見せつけた金子に対してABEMAの視聴者からは「この階級は化け物ばかり」「55キロで担架って…」「55キロのパワーじゃない」など、武尊、武居に続く同階級の新たなスターの飛躍に期待を寄せていた。